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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
138/198

第138話〜ドーナツ屋さんがやって来た〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。


にゃんたこ (神様)

『天空領域・パラディーゾ』にその身を置く神様。『遊び』と称して様々な強者を襲撃する事が多々あり、その中でもルノは『当たり』らしい。

 



 花粉症に苦しめられたあの日から数日。


 サトリさんのお姉さんに貰った薬によって症状が収まっただけでなく耐性まで付いた私は、意気揚々と村の散策に勤しんでいる。


 ちなみに薬の効果は一年間は有効らしいので、今年はもう花粉症に悩まされる心配は無い。



「ふんふんふ〜〜ん♪ 外を自由に歩けるって素晴らしいなぁ」



 鼻歌交じりで花に彩られた道を歩くのは実に最高である。シャレでもなんでもなく文字通り。



「んーー……お花の良い香り。天気も良いし外でコーヒーでも飲んだら最高だろうなぁ。うん、そうしよっと!」



 結局それかい! と突っ込まれそうだが結局それです。これだけの好条件が揃っているのだから致し方ないというもの。そうと決まればさっそくカフェに――と思ったその時。



「へい、らっしゃい!」


「ん……?」



 突如、耳に入ってきたのはどこぞで聞いたような威勢のいい声。ラーメン屋を髣髴させるその声の主は、ここ最近やたらと縁のある――



「あれ? 爆弾シュークリームのおじさんじゃないですか」


「おぉ? なんだ。爆弾シュークリームのお嬢さんじゃないか!」



 初めての人が聞いたら訳が分からないだろうが、つまりはそういう事だった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ヒュンガルに突如として現れたのは、お祭りを髣髴させる小さな屋台。ケーキや果物等、色鮮やかでポップな感じに仕上がった屋台にはおまけで付いてきたかのように浮いた店員さん――懐かしの爆弾シュークリームのおじさんがいた。



「いやいや、本当に奇遇――とも言えないのかな。もう普通にこんにちはですね」


「はっはっはっ! 久しぶりじゃない事だけは確かだな」



 その通り。少し前ににゃんたこ様と共に行ったロッキ旅行で二回。そしてほとんど間も置かずに再び出会った本日で三回目。これはもはや運命か。



「いや、それはないですね」


「なんだなんだ。一人で納得してたらおじさん訳が分かんないぞ?」


「はは、お気になさらず。て言うかそろそろ突っ込んでもいいですか?」


「ドンと来い」


「では遠慮なく。なんでにゃんたこ様がいるんですか?」


「……(モグモグ)」



 屋台のすぐ横に設置されている簡易テーブルとベンチ。そこにはたった今買ったばかりらしいドーナツを頬張るにゃんたこ様の姿があった。



「へぇ。今回はドーナツ屋さんですか」


「美味しいよ。ルノも食べたら?」


「もうこの際ここにいることは良いとして。確かに美味しそうですね、そのドーナツ」


「美味いぞーー? なんたって揚げたてを提供してるからな。お一ついかがかな? 爆弾シュークリームのお嬢さん」


「じゃあせっかくなので一つ頂きますね、爆弾シュークリームのおじさん。いや、ドーナツおじさん」



 乗っておいてアレだが、この呼び方だと長すぎる上に、こちらが呼ばれた場合私なのかにゃんたこ様なのかの区別が付かないな。もうめんどくさいのでシンプルにおじさんでいいや。


 数分後。



「へい、お待ち! ドーナツ一丁あがり!」


「相変わらず元気ですね。そんなに声を張り上げなくても……」


「はっはっ! 白けた店員より良いだろう? ほらよ!」


「ふむ、確かに。ありがとうございます」



 木製の小さなお皿に厚めの紙を敷いて提供される揚げたてドーナツ。ジュワジュワ響く音と共に漂ってくる香ばしい香りがたまらない。



「はぁぁ……いい匂い。本当に美味しそうですね。それじゃ、ゆっくり味あわせてもらいますね」


「へい、ごゆっくりどうぞ!」



 という訳で、にゃんたこ様の向かいのベンチに座っていざ実食。



「こ、これは!?」


「ドーナツだよ」


「もう、今いい所なのに……」


「くす」



 にゃんたこ様のボケは嬉しいが今はポイ。では改めて。



「こ、これは!? サクッとした生地の中から溢れるのはタマゴとミルクのほのかな甘み! 香ばしさとのダブルパンチが最高のハーモニーを奏でている! ……伝わりました?」


「はい、よく出来ました」



 伝わったようで何より。しかし揚げたてのドーナツがここまで美味しいとは予想外だ。



「何個でも食べれるね」


「うんうん、本当に。もう一個買おうかなぁ? ……って、んん!?」


「……(モグモグ)」



 見ればにゃんたこ様は最後の一口に辿り着くや否や、聞こえるか聞こえないかくらいの小声で何やら詠唱をしている。これは……!



「ちょっとにゃんたこ様ぁ? 私の目は誤魔化せませんよ。無限ドーナツはずるいですよ」


「……」


「あ、そっぽむいた! ちょっとおじさん。この人チート使ってますよ!?」


「ん? 実に不思議なもんだが朝からずっとそんなだったぞ。好きなだけ食べさせてやりな。はっはっはっ!」


「朝から食べてたんかーーい。お店はそれでいいんですかぁ?」



 だがおじさん公認ならもはや何も言うまい。羨ましいな。


 そんな事を思っていると。



「おじさん。生クリームちょうだい」


「へい、生クリーム一丁!」


「???」



 にゃんたこ様の追加注文が発生。そんなのあるの?



「説明しよう。生クリームとはドーナツにトッピングすると美味さが跳ね上がる特殊アイテムなのだ。ちなみにチョコレートやハチミツもあるぞ」


「ほう? という事はもしや……生クリームとチョコレートのダブルトッピングなんてのもアリなのでは?」


「お、分かってるじゃないか。さてはプロだな?」


「ふっ。この道一本で生きてますから」



 そんな感じで妙なテンションになってきた私はにゃんたこ様に負けじと様々なトッピングを繰り返し、十個食べた辺りまでは覚えているのだが、それ以上はドーナツが美味しすぎて記憶に無い。後でお財布に聞いてみよう。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ごちそうさまでしたーー」


「まいどありーー!」



 結局、あれからドーナツを食べつつにゃんたこ様やおじさんとくっちゃべったりなどでお店を出たのは夕方頃。


 かなり胃がもたれている気がするがそこは若さで乗り切っていく。なにしろ不老不死だからね。



「でも良かったですね。あのおじさん、しばらくはヒュンガルでドーナツ屋さんを続けるみたいなのでまた気が向いたら食べられますよ」


「うん。また行こうね」


「ぜひぜひ。てかその箱は何です?」


「お土産だよ。スライムの子二人と闇の子に。ルノこそ」


「はは、私もお土産ですよ。当たりだったので」


「うん。当たりだった」


「それよりもにゃんたこ様がものすごく自然に我が家へ向かってる事に驚きです。手ぶらでも良かったのに」


「くす。きっとそれだけじゃ足りないよ」


「あはは、確かに。みんな喜んでくれるかなぁ」



 すっかり我が家にも馴染んだにゃんたこ様と共に帰路を歩く私の頭の中は未だドーナツでいっぱいだ。あの味がいつでも食べられるようになるなんてヒュンガルもなかなか賑わってきて地元民として嬉しい限りである。


 今後も私のスローライフのためにどんどん発展してくれたまえ。ヒュンガルよ。



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