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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
136/198

第136話〜神様の訪問② 物理派の二人〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。


にゃんたこ (神様)

『天空領域・パラディーゾ』にその身を置く神様。『遊び』と称して様々な強者を襲撃する事が多々あり、その中でもルノは『当たり』らしい。

 



「んーー! なんだかここに来るのも久しぶりだなぁ」



 目の前に広がるのはヒュンガルの観光スポットの一つでもある温泉。木の壁に木の湯船など、ヒノキっぽい良い香りはするがその辺の事はよく分からない。とは言え、全体的に木で統一されたその造りは日本のお風呂を髣髴させるものがあり実に風流である。



「でもルノはにゃんたこちゃんとお忍び温泉旅行に行ってたでしょーー?」


「そうですよまったく。それなのにお土産も無しなんて。ブツブツ」


「ルノさんの浮気者……」



 やはりまだ根に持っていたか。お詫びの意味も込めての温泉だったが、弁明の余地も無いだけに言い返すこともできない。



「はは……ごめんね? ほら、温泉が冷めちゃうから早く入ろ!」



 我ながらアホな事を言ったなぁと思ったが、こういう時は勢いが大事。ヒュンガル、ロッキ、どちらの温泉もそれぞれ違った良さがあって素晴らしいものだ。細かい事は気にせず楽しもうじゃないか。



「だけど羽目は外さず礼儀正しく……と」



 勢いに任せて温泉へダイブ! なんてことはもちろんしない。私はチャプンと音一つ立てて、静かに身体を沈めた。


 と、その時。



「「ん?」」



 偶然の巡り合わせ。そこにいたのは温泉に浸かりながら仲良く肩を並べる二人の魔女、サトリさんとカラットさんの師弟コンビだった。



「私達が入ってきた時点で気付かんのかーーい。というツッコミは置いておいて……何気に珍しい組み合わせですね。こんにちは」


「やっほーールノちゃん。わたしだってたまには師匠と積もる話ぐらいするときもあるよ」


「ま、たまたま居合わせただけなんだけどな。久しぶりだなルノちん。それにみんなも」



 そんな二人の声に反応して次々と集まってくるフユナ、コロリン、レヴィナ。そして最後に――



「「げっ!?」」


「???」



 にゃんたこ様が静かにその身をお湯に沈めた。



「「……」」



 予想外の鉢合わせによって人口密度がそれなりに増した温泉。普段なら私達家族にこの二人が加わった時点でだいぶ賑やかになるはずなのだが……何故かサトリさんもカラットさんも無言。



「ねぇ、ルノ。もしかして邪魔しちゃったかな?」


「そうかなぁ。確かに水入らずの時間を過ごしたかったのかもしれないけど……」


「あの二人に限ってそれはないでしょう。でもそうなると無言の理由が分かりませんね。あれじゃまるでレヴィナですよ」


「ひどいですよコロリンさん……えい」


「わぶっ!?」



 やはりみんなも訝しんでいる様子。あの二人を知っている身としてはそうなるよね。約二名は遊び始めてしまったが。



「そう言えばにゃんたこちゃんを見た時に驚いてなかった?」


「あ、やっぱり? 『げっ!?』とか言ってたもんね。会うのは初めてのはずなんだけどな」



 そうなのだ。様子がおかしくなったのはにゃんたこ様が登場した辺りから。一応は紹介もしたのだが、前述の通りサトリさんもカラットさんも無言を貫いているものだから伝わったのかどうかも怪しい。



「んーー……もしかしたらにゃんたこ様の神々しさに圧倒されてるのかも。ちょっと元気づけてくるね」


「うん。じゃあにゃんたこちゃんはフユナとゆっくりしようねーー!」


「ちゃん……」



 こうして一旦家族の元を離れた私は件の二人の隣へ移動。湯船の隅っこで私、サトリさん、カラットさんという並びとなった。



「「……」」


「あのーー……どうしたんですか二人共。らしくないですよ。おーーい」


「「……」」


「とりゃ!」



 バシャっとお湯をかけてみるが瞬きすら無し。ある意味すごいな。


 と、そこでやっと。



「ねぇ、ルノちゃん」


「何ですか? やっと喋ってくれましたね」


「あの子は?」


「え、だからにゃんたこ様です。私の友達ですよ」



 聞いていなかったと言うよりは再確認といった意味合いが強い反応だ。



「もしかしてお二人もにゃんたこ様と顔見知りでした?」


「いや、そんなはずはないんだけどね。ねぇ、師匠?」


「あぁ、その通りだ」



 何やら二人の間では会話が成立しているらしい。流石の師弟関係と言うべきか。



「ちょっとちょっと。私もいるのに二人だけの世界に入らないでくださいよ」


「あぁ、ごめんごめん。いやね、上手く言えないんだけど……ね、師匠」


「あぁ。上手くは言えない。だが……」



 上手く言えないなりに何とか伝えようとしてくれている二人を待つこと数分。帰ってきた言葉は――



「「物理派になったのはあの子のせいな気がする」」


「はい?」



 結局のところ、謎は深まるばかりだった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 物理派になった理由。


 魔女でありながら卓越した武器の扱いを見せる二人。サトリさんは双剣。カラットさんは槍。もちろん魔女として、魔法も文句なしにすごいのだが、私の中では武器を持った二人の方が手強い気がする。


 つまりそれに至った理由があると。



「それがにゃんたこ様? 全然意味が分かりませんけど……」


「いやぁ、わたしもよく分からないんだけね。なんて言うかこう……過去に魔法合戦でボコボコにされた……みたいな?」


「そうそう。極めつけは『あなたはハズレ。さようなら』なんて決めゼリフで自信を粉砕された気がするな」


「それそれ! それですよ師匠! だからわたしは双剣にしたんです。かっこいいし。……って気がするだけなんだけど」


「な。槍の方がかっこいいけどな」


「いや、双剣でしょ」


「いやいや、槍だろ?」



 ここで私の記憶が一つ蘇る。あれは確か初めてにゃんたこ様と出会った日。規格外の魔法合戦の後に友情が芽生え、色々と語り合った時――


『風……炎……光……どれもハズレ。闇の変わり種もいたけどあれは興味無い』


 そんな事を言っていた。『ハズレだから記憶を消した』とも。ちなみに闇は向こうでコロリンと戯れているレヴィナさん。



「ぷっ!」


「ん? なんで笑ってるのルノちゃん」


「そんなにサトリの顔が面白いか?」


「ひどいなぁ師匠」


「ははっ!」



 なんだかんだで調子を取り戻してきた二人を前に、私の中では全てが繋がったことでからかいたい気持ちが溢れて止まないのでこう言った。



「風――サトリさん」


「ん?」


「炎――カラットさん」


「どした?」


「二人ともハズレです!」


「「!?」」



 私は記憶を消されなかった! 私は当たりだ! なんて心の中でドヤ顔をしつつそんな事を口走ってしまったのが運の尽き。コケにされた事だけは理解した二人の魔女――風と炎によって私は見事に蹂躙されてしまうのだった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「へぇ。じゃあにゃんたこちゃんはこれからはうちの常連さんになる訳か。うんうん、わたしも嬉しいよ」


「また、ちゃん……」


「たこちんは武器には興味あるか? 私の店に来れば色々と紹介してやるぞ!」


「たこちん……」



 先程までの空気はどこへやら。一通り吐き出したサトリさんとカラットはすっかりにゃんたこ様とお友達。微笑ましい限りである。



「それで、ルノはなんでそんな事になってるの?」


「ぐすっ……」



 にゃんたこ様の視線の先には、ブチ切れた風と炎のコンビによる魔法の超強力ドライヤーによってボンバーヘッドにされた哀れな魔女(私)の姿があった。こっちはまったく微笑ましくない。



「くす。いいと思うよ、その髪型」


「だよねーー?」


「分かってるじゃないか、たこちん!」


「ぐすっ!」



 にゃんたこ様を挟んで楽しそうに笑うサトリさんとカラットさん。そして涙を流す私。当のにゃんたこ様はグイグイと距離を縮めてくる元気な二人に困惑しっぱなしだが――



「馴れ馴れしいよ。ハズレのくせに……」


「あ、言ったなぁーー!?」


「お仕置きだぞ、たこちん!」


「わ。うわっ!?」



 すっかり『友達』となった二人はお構い無しに戯れにかかったのだった。











 ちなみに。



「温泉ではしゃぐと周りの人に迷惑になってしまうので自重してくださいね」


「なに他人のフリしてるのさ、ルノちゃん!」


「ルノちんのお仕置きも終わってないからな!」


「なんでーー!?」


「くす」



 めでたしめでたし。





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