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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
135/198

第135話〜神様の訪問〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。


にゃんたこ (神様)

『天空領域・パラディーゾ』にその身を置く神様。『遊び』と称して様々な強者を襲撃する事が多々あり、その中でもルノは『当たり』らしい。

 



 ある日の早朝。


 太陽が登って間もない時間帯に私は目を覚ました。習慣という訳ではないが、このように目覚めが無駄に早い日というのがたまにやってくるのだ。


 そういう日は無理に二度寝しようとせずにとりあえずは起きるのが私のスタイル。散歩に出掛ける時もあれば、グロッタやスフレベルグとおしゃべりしたりなど、平和を突き詰めたような事をするのがメインとなっている。


 本日は――



「えーーと、コーヒー……っと」



 リビングにてコーヒー片手に優雅に読書と洒落こもうではないか。いや、読書はちょっと盛りすぎたかな。やっぱりお菓子にしよう。



「ってことであとはお菓子。どうしようかなぁ」


「これは?」


「ん? クッキーか……んじゃそれで決まり!」



 割と早く決まったコーヒーのお供、クッキー。のお供ににゃんたこ様。なんでやねん。



「……いつの間に来てたんですか。不法侵入ですよ」


「私達は友達でしょ」


「くっ、出ましたねその聞こえのいい言葉。騙されない……騙されないぞ……!」



 とか何とか言いながらもテーブルに用意されたコーヒーとお菓子はしっかり二人分。我ながら甘々な対応である。



「今更ですけどにゃんたこ様はいつも突然やって来ますよね。あの偽物はお留守番ですか?」


「うん」


「左様ですか。まぁせっかくなのでゆっくりしていってくださいな。ちなみに本日はどのようなご用件で?」


「遊びに来たの。この前、約束したでしょ?」


「約束……?」



 なんとなく天井を見つめてきっかり十秒。そう言えばロッキ旅行へ行く直前にそんな事を言っていたような気がするな。



「本気だったんですね」


「うん。神様は嘘はつかないよ」


「でもいいんですか? その神様がこんな簡単に遊びに来て。正体の事は?」


「バレないように尽くして」


「ですよね〜〜」



 その一点は譲れないみたい。ぶっちゃけ神様だなんて言っても信じてもらえないだろうから意味無いと思うんだけどなぁ。



「……」


「ぎくっ!? いや、私はもちろん信じてますよ。ね、神様?」


「なら良し」



 この話は終わりとばかりにズズーーっとコーヒーを飲むにゃんたこ様。私自身、正直あまり心配はしていない。旅行から帰ってきた時に顔合わせは済んでるしね。


 なんて思っていると。



「おはよう、ルノ」



 起床してリビングへとやってきたのはフユナ。



「おはようございます」


「おはようございます……」



 区別が付きにくいが、その後ろに続くのはコロリンとレヴィナ。



「おはようみんな。コーヒー飲む?」



 何気ないやり取り。いつもの挨拶。別段変わったことのない日常風景の中、しかし三人の視線は私の方へは向いていない。


 何故なら――



「あれーー? にゃんたこちゃんがいる!」


「いらっしゃい、にゃんたこ」


「あぁ!? あの時の……!?」



 私のすぐ横の席には優雅にコーヒーを飲むにゃんたこ様。一応はみんなの事を覚えてくれているみたいだが、微妙に馴れ馴れしいその挨拶には目を細めて――



「ちゃん……。呼び捨て……。だれ?」



 約一名、記憶に残っていないみたいだが、それは改めて紹介するとして。ひとまず私の大切な家族ということで大目に見てもらうとしよう。



「にゃんたこちゃん。今日は一日ここにいるの?」


「ルノと同じでにゃんたこも暇なんですね」


「もう氷漬けにするのはやめてくださいね。えっと、にゃんたこ……さん?」



 なんたってみんなにとっては『神様』ではなく、立派な『友達』なのだから。出会い頭に口を凍結封印されたレヴィナは分からないけど。



「ちょっとルノ。この子達……」


「あはは、まぁそういう事です。みんな『友達』ですよ。仲良くしてくださいね?」


「うん、別にいいけど」



 どうやら心配するだけ無駄だったみたい。家族のみんなは言うまでもなく、にゃんたこ様だって優しい心の持ち主なのだ。『神様』としての立場を忘れて楽しむにはうってつけの環境をぜひ堪能していってもらおうじゃないか。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そんな訳で朝食を食べ終えた私達がやって来たのは自宅からすぐの村『ヒュンガル』


 一度、私とにゃんたこ様で遊びに来たが今日はまた別。フユナにコロリン、そしてレヴィナも一緒なので前回とは桁違いに賑やかである。



「にゃんたこちゃんの服ってフユナのと似てるね。それってどこで買ったのーー?」


「創造した」


「え?」


「創造。魔法で『無』から創り出したの」


「えぇ!? すごい!」



 似た服――着物のようなそれの誕生秘話を聞かされて驚愕するフユナ。私も初めての聞いだぞ。



「フユナ。そんなのネタに決まってるでしょう? それよりにゃんたこの髪はコンゴウセキのように美しいですね。でも引き摺るのはいただけないので私が結わってあげましょう」


「あ、ちょっと……」


「一瞬ですよ。クルクルっとやってキュッっとして。はい完成」


「……」



 微妙にディスってから褒めちぎり、さり気ない気遣いを見せるコロリン。そんなツンデレ気味の押しに逆らえずにされるがままのにゃんたこ様は少し照れている様子だ。私ですらあそこまでグイグイ行けなかったのでちょっぴり羨ましい。



「あはは、もうすっかり友達だなぁ」



 目の前の光景には感動を覚えるほどの温かさを感じる事ができた。神も人も関係無い、仲睦まじい友達同士のやり取り。



「……」



 そして最後に……無言で私の隣を歩くレヴィナさん。



「あら、どうしたの? お腹でも壊した?」


「ち、違いますよ……。また理不尽に氷漬けにされるんじゃないかと……」


「もう、レヴィナってば。今のにゃんたこ様がそんな事しないよ。たぶん」



 ダメージ自体はそれ程でもないが、凍結封印には私も散々苦しめられたものだ。レヴィナもカフェでの一件がトラウマになっていると。



「そう言えばあの時は私が助けてあげたんだよね。パリーーンって」


「そ、そうですよ……! 私、あれでも怒ってたんですからね……?」


「???」



 助けられたのに怒るとはどういう事だろうか。あのままが良かったとかそういう事かな? いつの間にドMになってしまったのか……



「まぁまぁ、そんないらない心配してないでレヴィナもにゃんたこ様と戯れておいで。そりゃ」


「わわっ……! あ、危な……!?」



 私に背中を押されて今にもずっこけそうな足取りでにゃんたこ様の背中へと迫るレヴィナ。そのまま勢いを殺すこと無く熱いハグをかます。



「うぎゃ……!?」



 とまぁ、それは何事も無く事が進めばの話。現実は虚しいもので、気配を察知したにゃんたこ様は一歩前に出て華麗に回避。レヴィナは地面と熱いキスをするに留まったのであった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 あれから約一時間。特に何する訳でもなく、ひたすらにくっちゃべりながら歩き回った私達は休憩にうってつけの場所――今回はカフェではなくアイス屋へとやって来た。


 チョコにイチゴ、レモンにミルクなど、思い思いのアイスに舌鼓を打ちながら、尽きることの無い会話に今も花を咲かせている。



「にゃんたこちゃんの好きな人は?」


「ルノ」



 即答。なんだこれ、ドキドキしてきたぞ。



「にゃんたこも物好きですね。でも残念ながらルノは私とフユナにゾッコンですよ」


「そうなの?」


「ええ。毎晩同じベッドで寝てるくらいですからね」


「うんうん。いつも寝言で『フユナもコロリンも私のモノ〜〜♪』なんて言ってるもんね」


「許せない」



 そんな感じに少々物騒な空気になってきたので間に割って入る。しかしここまで好き好きオーラ全開にされると照れるなぁ。



「ほらほら、そんなこと言ってるとたらしな人がやって来て怖い事されちゃうんだからね。その話はこの辺で」


「とーーう!」


「うわ」



 シュタッ! っと私達の目の前へと華麗に着地したのはたらしのランペッジさん。すっかり元気になったようで何より。



「てことでみんな。たらしこまれる前に行くよ。さよならランペッジさん!」


「ちょっと待てーーい!」


「速っ!?」



 シュタッ! っと今度は高速で回り込んで道を阻まれた。よく分からないが特訓の成果だろうか。



「俺をハメたのかルノさん!」


「え?」



 突然何を言い出すのやらこの人は。ハメたどころかこの前はむしろ助けてあげたと言ってもいいのではないか?



「騙されんぞ。まさかその子とグルだったとはっ……!」


「グル?」


「この状況で言い逃れはできんぞ! また会ったな謎の女の子!」


「???」



 次に視線を飛ばすのは私にではなくにゃんたこ様。ははーーん、分かったぞ。



「だれ?」


「にゃんたこ様。これはナンパの手口ですよ。『これは運命だ』みたいな事を言って女の子とお近づきになるんです」


「最低だね」


「そうなんです。だから関わった瞬間にアウトですから気を付けてくださいね」


「うん」



 これで良し。あとはこの場から退散すれば万事解決だ。



「待て待て! 忘れたのか!? 124話124話124話124話124話!!!」


「うわっ!? はいはいはいっ!? 分かりましたよっ!?」


「よし」



 何一つ良くはないがこれは多分付き合ってあげないと終わらないパターンだな。



「でも別にグルじゃありませんよ? 確かに私達は友達ですけどあの時の私は遠くから見てただけですし」


「え、なになに? なんの話?」


「またランペッジが何かやらかしたのですね」


「たらし……」


「だからちっがーーう!?」



 今日のこの人は本当に元気だな。悩みも解決してさらにこの場にいるのは美女美少女ばかり。テンションが上がるのも無理ないか。



「まぁ、簡単に説明するとね。ランペッジさんとにゃんたこ様が勝負したんだけど……その時の怒涛の攻撃に思わず『ひいっ!?』なんて言ってけっこう面白かったんだよ。もちろんランペッジさんがね?」


「あはは、ランペッジさんかわいーー!」


「たらしに専念し過ぎた結果ですね。自業自得です」


「もう私には興味ないんですか……」


「くっそーー!? この借りは必ず返すからなーー!?」



 そんな脇役に成り下がったセリフを残してこの場を去るたらしのランペッジ。いきなり現れてすぐに去る。実に充実した生活を送っておられるようだ。



「とまぁ、色々と騒がしかったですけどあの人も私の友達です。ランペッジって名前なので覚えておいてください」


「くす。結晶をくれた人ね」


「それですそれです。なんだ、覚えてたんですね」


「面白そうだからちょっとからかってあげたの」


「あはは、にゃんたこ様もやりますねぇ」



 すっかり私達の生活に溶け込んでいるにゃんたこ様を見て思わず笑みがこぼれた。



「なにニヤニヤしてるの?」


「ニヤニヤって……。和んでるんですよ。平和だなーーって」


「うん、そうだね」



 何気なく交わされる会話。同時に、私のスローライフににゃんたこ様の存在は欠かせない存在になりつつあるのだと実感してさらに心が温かくなる。



「私もだよ。ルノ」


「え、あ……そうですか? はは、なんだか照れるなぁ」


「くす」



 現在は太陽が中点に登ったちょうどお昼頃。そのままの流れで向かうのは村の温泉。私達の中に自然と溶け込むにゃんたこ様はすっかり家族の一員となっていましたとさ。




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