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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
124/198

第124話〜神様とのぶらり旅? 雷光との邂逅〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。


にゃんたこ (神様)

『天空領域・パラディーゾ』にその身を置く神様。『遊び』と称して様々な強者を襲撃する事が多々あり、その中でもルノは『当たり』らしい。

 



「おはよう」


「おはよう、ルノ」



 久しぶりの我が家。そんな気がしてしまうのは恐らく昨日の神様との邂逅が原因だろう。朝起きてフユナがいるというだけでものすごく安心感がある。



「やっぱり私の神様はフユナだよ。ちゅちゅちゅ」


「わわっ、朝からどうしたの?」


「ううん、なんでもないよ。フユナは可愛いなって思っただけ」


「もぉ」



 そして今更気付いたが、何だかいい匂いがする。キッチンでレヴィナが料理している所から察するに『レヴィナサンド』か。



「そうだ、ルノ。今日はサトリちゃんとのお稽古があるから出掛けてくるね」


「そして私はその穴を埋める為に今日一日カフェでアルバイトです……」



 丁度完成した、アツアツの『レヴィナサンド』を持ってレヴィナがキッチンから出てきた。若干、気乗りしない様子なのは恐らく――



「お姉さんと二人きりな訳ね。ご愁傷様」


「や、やめてくださいよ……私も緊張しまくりなんですから……」


「あはは。まぁ、お姉さんもああ見えて中身も鬼だから大丈夫じゃないかな。応援してるよ」


「大丈夫な要素が一つもないんですけど……頑張ります……」



 みんな色々と予定があるみたいだが、まずは腹ごしらえをしない事には始まらない。この瞬間が一日の出来を左右すると言っても過言ではない。



「とりあえずみんな座って朝ごはんを――」



 ゴリッ。



「うぎゃ!?」



 バターーン!



 朝食の席に着こうと一歩踏み出したその時。何か硬いもの(コロリン)を踏んずけたと思えば次の瞬間には一回転した後に頭を強打。懐かしいと言えば懐かしいそのイタズラに私は。



「またこの子は! 待ちなさいコロリン!」


「コロコロ〜〜♪」



 ピュ〜〜っと去っていくコロリンとそれを追う私。そんないつも通りの平和な光景の中、朝食を開始したのはお仕置きを終えた数十分後の事だった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 その後。



「よし。レヴィナの様子でも見に行ってみようかな」



 全員が何かしらの予定を抱えていたので本日の私は自由気ままな野良猫気分。現在は未だに雪が残る村までの道をのんびりと歩いている最中だ。



「やっぱりスローライフはこうでなくちゃね。昨日もまぁ悪くはなかったけどしばらくは遠慮し」



 ズドン!



「ズドン?」



 背後。音のした方向に振り向いてみると、そこには電信柱を引っこ抜いたかのような穴が空いていた。



「え、えぇ……なにこれ? こわ……」



 とは言ったものの、私も村に行く途中なのであまり気にはしていられない。別に直撃した訳でもなし。



「昨日の魔法合戦のせいで感覚が麻痺してきちゃってるのかなぁ?」



 ズドン!



「……」



 昨日の魔法合戦。事の始まりは空中での超遠距離狙撃から始まった。たしかあの時は……



 シュルルル……



「そうそう。こんな音がして――」



 ズドン!



「……」



 違いがあるとすれば、それは『地上』か『空中』かのみ。着弾すれば大岩でも木端微塵だなんて思ってたのかまるで昨日の事のようで。



「気長に待っててっていったのに〜〜!?」



 再び耳に届く驚愕の音。躱してばかりだと辺り一帯が穴ぼこだらけになってしまうの私は仕方なく迎え撃つ事にした。



「くぅ!? どこ? どこにいるのにゃんたこ様ぁ!?」



 前述の通り、私は地上にいるので上空を飛んでいた時でさえ米粒より小さかった『アレ』を見つけ出すことは不可能に近かった。我慢というものを知らないのかあのなんちゃって神様は。



「まだ言う?」


「へ?」


「お仕置き」


「〜〜っ!?」



 背後に湧いて出たのは言うまでもなく件の神様――にゃんたこ様。予想もしなかった神の降臨。驚きの声を上げる間もなく、私の罪深いお口は凍結封印されたのだった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 自宅から村への何の変哲もない雪道でのまさかの神との邂逅。予想外ではあったものの、一応は顔見知りであるのが唯一の救いだ。



「てか、にゃんたこ様……ここまで来れるんですね」


「神様だもの」



 いや、神様って普通は天高くの……よく分からない所にいるのでは? 昨日みたいに。



「また上で遊ぶ?」


「い、いや……今日は遠慮したい、かなぁ……?」


「そう」



 おや。あまり残念そうではないぞ。お誘いに来た訳ではないのかな?



「遊びは遊び。だけど今日は出向いてあげたの」


「という事は地上でアレをやるつもりですか? さすがに無理が」


「違う。これ」


「それって」



 にゃんたこ様の手にあるのは私が昨日あげたクッキーだ。貰い物をあげただけなのでなんか申し訳ないけど。



「無くなっちゃった……訳じゃないですね。その無限クッキーがどうかしました?」


「飽きた」


「えぇ……」



 もしかして私とお別れしてからずっと食べてたのか。太っちゃうぞ。



「う〜〜ん。それなら村まで行きますか? 私も行く予定だったので」


「うん」


「ではでは、私がご案内を。ってにゃんたこ様?」


「なに?」


「その……髪の毛が」



 見ればにゃんたこ様の長い髪の毛は、自身の背丈よりも長い事もあって、毛先を箒のように引きずっているような状態だ。



「あ、あぁ! 待って待って! 綺麗な髪が勿体ないですよ!」


「切る」


「えぇ!? 勿体ないので縛りましょ? ね?」


「やって」


「わ、私がですか? できるかなぁ……」



 私自身、髪の毛はピンこそ使ってはいるが、それ以外は下ろしているだけだ。サトリさんなんかはこういうの得意そうなんだけどな。



「まだ?」


「はぁ……では」



 待たせるのもアレだし、引きずるよりはマシだ。とりあえずクルクル〜〜っとしてキュキュっとやってと。



「ほい、できましたよ。というか今更ですけど神様が地上に来てもいいんですか? ほら、正体とか」


「バレないように尽くして」



 それはまた随分な賭けにでましたね。バレたらどうするのやら。まぁ、神様だなんてそうそう信じる人もいないし大丈夫だろう。私だって未だに――



「……」


「いや、そのっ! 神様! い、行きましょ、神様!?」


「うん」



 それに最悪、バレても記憶消せるしね。という訳で、本日の私の予定はにゃんたこ様とのお出かけに決定。少々の不安はあるものの、今や友達と言っていいくらいの関係にはなれた自信はあるので、心做しかテンションの上がった私は鼻歌交じりに歩みを再開させた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「んーー……どこ行きましょうかね? にゃんたこ様」


「……」



 なんやかんやで村に来たはいいものの……いざ誰かを案内するとなると悩んでしまう。まずは無難にカフェでお茶でもするか?



「あれは?」


「ん?」



 にゃんたこ様の視線の先には少々の人集りと、その間から見えるのは双剣を持った金髪の男性――ランペッジさんだ。



「あぁ、またやってるのね。あれは、あそこにいる金髪の人と戦って、一発入れることができたら景品がもらえるんですよ。ほら、あの綺麗な結晶」


「いいね」


「でしょ? 私の家にも沢山あって――」


「もらってくる」


「あ、ちょっと?」



『挑戦してくる』ではなく『もらってくる』

 にゃんたこ様の力は私も分かっているので心配は無いが……ランペッジさんが不憫に思えてくる。



 そんな私の気持ちをよそに――



「お、次は君がやるのかい? 可愛い挑戦者じゃないか(ごくっ!)」


「はい」



 今あの人『ごくっ!』って言ったぞ。手当たり次第に手を出そうとするんだから……まったく。



「よーーし。どこからでもかかって来な!」


「……『輝氷の射手』」



 出た。にゃんたこ様の十八番。昨日といい今日といい、あの魔法がお気に入りなんだろうか。



「どん」


「うおっ!?」


「おぉ、躱した!」


 これは驚いた。私の時よりは手加減してるみたいだが、それを踏まえても常人ではひとたまりもない速度のはずだ。しかし、にゃんたこ様は驚く様子も無く――



「どん。どん」


「う……おっ!?」


「どん。どん。どん」


「ま、待て!?」


「どん。どん。どん。どん」


「ひぃ!?」



 徐々に増す手数を前にランペッジさんは防戦一方だ。てか今『ひぃ!?』って言ったぞ。



「ちぃ! 本気で行くぜ!」


「くす。『グラスサークル』」


「なっ!?」



 突然消えたにゃんたこ様に驚愕するランペッジさんはそのまま辺りに視線を巡らせるばかりだが、それではダメだ。私の予想では――



「どん」



 上空から迫るのは加速も加えられていない落下を待つだけの氷。数秒後、それは狙い違わず――



「あ?」



 コンッ……と。



「終わり」


「!?」



 あっけない幕切れ。ここにいる誰もがそう思ったに違いない。ランペッジさん以外は。



「ただいま」


「ん、おかえりなさい。にゃんたこ様」



 大事そうにロッキの結晶を抱えて戻ってきたにゃんたこ様。どれだけ手を抜いてもやはり神様は神様――そういうことだ。



「楽しかったですか?」


「ハズレ。でも」



 両手を天に掲げて陽光を反射させるとその結晶はとても――



「綺麗」


「良かったですね」



 村で出会った雷光を名乗る青年との『お戯れ』は、案外深い思い出としてしっかり刻まれたのではないでしょうか。




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