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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
123/198

第123話〜支配された異世界④ 世界の頂点・にゃんたこ〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。

 



「私はにゃんたこ。世界の頂点」


「……」



 私を突然襲撃してきた女の子。その子はにゃんたこと名乗り、同時に世界の頂点だと言った。私の認識が正しければ、それはつまり……



「無視?」


「あ、ごめんね? えっと、つまり『神様』ってことなのかな? にゃんたこ……にゃんたこちゃんは」


「そう」


「……ふ」



 少々、吹き出しそうになるのを堪えつつ状況整理。ふむ、なるほど。名前はまだいいとして……神を自称する厨二病という訳か。



「無礼にも程がある」


「え? いや……」


「お仕置きね」


「むぐ!? (また!?)」



 お仕置きと称して口を氷漬け。微妙に既視感のあるこの行為はひとまず置いておいて。ひょっとして心を読まれた?



「反省した?」


「っ! (コクコク!)」


「よろしい」


「ぷはっ!?」



 半信半疑だが、神様だというのは本当らしい。心を読むなんて反則技をやってのけるくらいだからね。先の戦いでも分かる通り、確かに『力』の部分は神様級で間違いない。



「信じられるまでやる?」


「けっこう! けっこうです! 心の底から信じました! あなたは神様!」


「うん」


「ほっ……」



 それにしても……改めて見ると、意外も意外。にゃんたこ様(?)の見た目は私よりも僅かに若く、背丈は少々小さい。そして自らの身長よりも長く伸びるのは煌めく宝石のように綺麗な髪の毛。光の当たり方によって色を変化させるその様はまさにダイヤモンドのそれだ。その辺はコロリンに似てるな。



「あの、そろそろ聞いてもいいかな?」


「……(サクサク)」


「あのーー……」


「なに?」



 未だに食べ続けるのはやはりクッキー。そんなに気に入ったのか。というか、先程から減っていないように見えるのは気のせいだよね。無限に増やすなんて神業……それこそ本物の神様でもない限り無理だ。



「……」


「あ! か、神様ですよね〜〜!?」


「うん」



 細められる瞳にギクリとしつつ弁明を図る。なんだかここに来てから常に消し飛ばられる恐怖と戦ってる気がするが……とにかく敵意の有無だけは早急に確認しておきたい。



「えっと……なんで私を攻撃してきたの?」


「遊び」


「???」


「言ったでしょ? 『遊びましょう』って。退屈だったから遊んでたの」


「えぇ……」



 という事はあれか。敵意は無いにしても、私は暇潰しの玩具を演じながら殺されかけたと。



「されたいの?」


「いや、でも……」


「そのつもりならとっくにそうなってる」


「あぁ……確かに」



 それは言えてる。目覚める前も私に回復の魔法かけてくれてたもんね。数々の規格外の魔法にしてもやはり神様というのは本当なのか。



「まだ言う?」


「い、いえっ!? たった今完全に信じました! はい、神様!」


「うん」



 余程、自分が神様だということに誇りを持っているみたいだ。無いよりは良いのかもしれないけど、今は要らないかな……



「でも遊びって言っても、にゃんたこ様程の人が私なんかで遊んでも楽しめなかったのでは? ほら、私ってただの人間ですし」


「ううん。あなたはやっぱり『当たり』だった」


「当たり?」



 そう言えば、この氷の大地に立つ時にも『当たりね』って言ってたな。あれは一体?



「私とあそこまで『会話』できたのはあなたが初めて。だから当たり」


「な、なるほど。でもそういう事なら他にも当たりがいるかも。私の友達に――」


「知ってる。過去に試したもの」


「え?」


「風……炎……光……どれもハズレ。闇の変わり種もいたけどあれは興味無い」


「サトリさんにカラットさん……フィオールさんまで? レヴィナはまぁ置いておくとして。そんな話一度も聞かなかったけど……」


「当たり前」


「???」


「記憶を消したの。ハズレだったから」


「そ、そうなんだ。あの、聞いてもいい……ですか?」


「今更だね」


「う、確かに。えーーっと、私は何が違ったんです? 確かに魔女ではありますけど、言っちゃえばただの氷の魔法しか」


「ただの?」


「え、違った……かな? ゆ、有料かなぁ? あはは……」


「何も分かってないのね」


「???」



 うーーむ。自分の事なのでそれなりには理解してるはずなのだが。魔法に関しては特に。



「それはただの魔法じゃない。神の力。その一部と言ってもいい」


「え……?」


「氷の頂点。氷結の魔法。その名は『グラスファーレ』」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 遥か上空。氷の大地。そこで告げられたのは私が永年使ってきた魔法の正体。



「ぐ、ぐらす……?」


「私の領域に入った時に見たでしょ? あなたを狙った『輝氷の射手』あれもその一つ。あなたも使えるはず」


「あぁ、あの煌めく氷の。でも私はあんなの……」


「『ずどん』」


「え? ……あ!」



 思い出した! 確かスライム討伐の時やその他もろもろ、使ってた場面がある。空中で最初に攻撃された時も確かに見覚えはあったのだ。



「でも私のはあんな煌めく氷でもなければ、速度だって……」


「それは『練度』の差。私は何?」


「神様。そういうことか……」


「あの氷槍もそう。『グラスファーレ』は完成された魔法。それだけで全てを補える。唯一違うのは」



 視線を落としたと思った瞬間、私の右手をにゃんたこ様が両手で包み込むようにしてそっと持ち上げた。



「え、えぇ!? なに!?」


「この魔法だけは別物。あなた唯一のオリジナル。『グラスサークル』」


「グラスサークル?」


「今名付けたの。かっこいいでしょ?」


「は、はぁ。私だけの……」



 私の右手。そしてグラスサークル。魔法陣の事を言ってるのだろう。



「私だけの魔法……へぇ?」


「もはや『唯一』ではないけどね」


「どういう――あれ?」



 それは突然だった。たった今まで目の前にいたはずのにゃんたこ様がの姿が幻だったかのように消失したのだ。



「え、えぇ!? なんで!?」


「こっち」


「むぐ!?」



 どこからともなく行使されたのは、またしても口の凍結封印。

 つまりこれは私のオリジナルと言われた魔法陣。グラスサークルによる透明化だ。なるほど、神様の前では如何なる『唯一』も意味を成さないという事か。てか、口塞ぐの好きね。



「怪狼の力とグラスサークル。その二つはとても楽しかったわ」


「ぷはっ!? そ、その『怪狼の力』っていうのは?」


「本当に無頓着。一輪とは言え、私の『華』を相殺したのを忘れたの? それと最後の衝突。あれもそう」



 怪狼の力。すなわち、グロッタに教わったフェンリルに伝わる氷の牙による殲滅魔法の事だ。



「あの怪狼も物好きね」


「グロッタのこと? でも教えてくれたのは私がお願いしたからだよ」


「そういう意味じゃない。あなたもしかして、グラスサークル(忘却)を自分に施したの?」


「し、失礼な……」


「過去にあなたと怪狼は邂逅を果たし、その時『怪狼の加護』を授かってるの。人間でありながら怪狼の力を行使できる理由はそれ。しかも人外の力を授かった事と持ち前の才能も合わせてただの氷魔法は『グラスファーレ』へと昇華した。詳しくは119話を読んで」



「なんかいきなり神様感が無くなりましたね。特に最後一言がなんともまぁ」


「……」


「ご、ごめんなさい」



 つまりは、私が過去にグロッタに甘噛みされたアレが『怪狼の加護』とやらを授かった瞬間だと。



「でもグロッタはそんな事全然覚えてないみたいだけどなぁ。私もあんまり……」


「当然。何十年も昔の幼い頃だもの」


「でも私は昔からこうだよ? 不老不死だもん」


「あなたの場合は頭の問題」


「ひどいっ!?」



 まぁ、とりあえず色々と謎は解けたと言っていいだろう。『怪狼の力』に『持ち前の才能』そして神の力『グラスファーレ』

 にゃんたこ様も規格外のお戯れだっただけで悪気があった訳ではないらしいので問題無し。何も知らなきゃただの脅威だけど。



「ふぅ……最初はどうなるかと思ったけど、とりあえずは安心したかな。教えてくれてありがとうございます。にゃんたこ様」


「終わり?」


「はい。もう少し遊んでいきたい気もしますけど、そろそろ帰らないとみんな心配してると思うので」


「それなら無用な心配。……ほら」



 にゃんたこ様の杖が向く方向。氷の大地に投影されたのはなんとフユナ達の姿だった。それもご親切に音声のおまけ付き。そこには――



『ルノ遅いねーー』


『きっとどこかに隠れて身を震わせてるんですよ。ぷっ』


『ルノはいじけんぼだもんねーー』


『二人ともダメですよ、そんな事言ったら。確かにそうかもしれませんけど……』



 とか何とか。要するにあまり心配はされていない。



「ぐす」


「まだ遊べるね」


「いや、その。お話くらいが丁度いいかなぁ……なんて」


「もう沢山したでしょ?」



 その言葉を最後に、クッキーを懐にしまって杖を握り直すにゃんたこ様。まさかまたあの超絶魔法合戦でもする気なんですかね。



「いくよ」


「ま、待って。どこへ? 山にピクニックかなぁ……なんちゃって」


「面白くない」


「ひぇ!?」



 ようやくお近づきになれた――そんな感慨も虚しく、次の瞬間。



「咲き誇れ、零の導き。【大輪・氷華】」


「せ、迫る終焉! 氷の牙ぁーー!?」



 夕焼けに染まった空。沈む太陽と昇るお月様。そんな静寂な光景の中――



「ひゃあああ!?」


「くす」



 この日、二度目となる『氷の華』が空を彩ったのでした。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「お疲れ様」


「ゼェゼェ……」



 終わりの合図は日付けの更新だった。すっかり魔力を使い果たした私は、大の字で満天の星空を眺めながら呼吸を整えるのに苦戦中である。



「はぁはぁ……魔力が底を突くなんて初めてかも」


「楽しかったでしょ?」


「そ、そうですね……」



 ご満悦の表情で、煌めく氷塊に座っていたにゃんたこ様が私の元に『すとん』と着地した。今度こそ満足したらしいその表情からは僅かに笑顔と言えるものが見て取れる。



「よっこらせっ……と。それじゃあ」


「帰るの?」


「はい、今度こそは」


「そう……」



 表情の変化に乏しいにゃんたこ様だが、私もそこまで鈍感じゃない。正直、私も楽しんでいる自分というものを自覚してはいるのだ。『もっと遊びたい』と思える程度には。



「でも帰るんでしょ?」


「はは……まぁ」


「そう……」



 うーーむ、何だか帰りにくいな。



「んーー……にゃんたこ様さえ良ければまた遊びに来てもいいですか?」


「……!」


「あ、でもどうやって……さすがにこの広大な空の中から探すのもなかなか大変というか」


「それなら心配いらない。……楽しみにしてる」


「そ、そうですか? まぁ、にゃんたこ様がそう言うなら」



 また神のお導きでもあるのだろうか。何にしても今日はこれでお別れだ。



「それじゃあさようなら、にゃんたこ様。その無限クッキーでも食べながら気長に待っててくださいね?」


「そうする」


「ではでは」



 神と魔女の邂逅。


 本当の意味での『お戯れ』を成し得た後に芽生えるのはいくつかの情。友情であったり、愛情であったり、はたまた別の感情かもしれない。



「またね。……ルノ」




 微かに響く声――


 この日。私とにゃんたこ様の間で何か大切な物が結ばれた事だけは確かなのではないでしょうか。



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