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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第百十八話〜弟子の企みと黒幕コロリン〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。

 



 ある日の朝。



「先生ーー! おっはようございまーーす!」



 そんな元気な声とともに尋ねてきたのは我が弟子(?)のフィオちゃん。正直、最初の頃は早朝から尋ねてこられると鬱陶しかったものだが、今となってはもはや日常。可愛いものだ。……というか昨日も来たばかり。



「はいはい、今行きますよーーと」



 そういえば昨日、フィオちゃんが持ってきてくれたケーキはとても美味しかった。この辺りでは見た事もないような果物がふんだんに使われたタルトだったのだが、もしかしたら今日も!? ……なんて。



「あ、先生。おはようございます!」


「うん、おはようフィオちゃん」



 フィオちゃんの上から下まで視線を走らせたものの、特に何も無し……本日は手ぶらでした。ちょっと期待してた自分が恥ずかしい。



「まぁ、上がって上がって。今お茶をーー」


「いえ、先生。今日はこれから魔法の特訓をしましょう!」



 と、目を輝かせるフィオちゃん。



「え、今から?」


「はい! さっそくそこの草原に行きましょう!」



 うーーん……正直、寒いから家の中でのんびりしたかったのだが時すでに遅し。私は手を引かれるがままに外へ。



「うーー寒い……フィオちゃんは元気だねぇ。で、魔法の特訓だっけ?」


「はい!」



『教えてください』じゃなくて『特訓しましょう』なのが気になったがその辺はスルー。フィオちゃんは炎の魔法を使えるのでその辺の強化という事でいいだろう。



「おっけー。それじゃまず今のフィオちゃんの実力をーー」


「あのーー先生?」


「うん?」


「今日は久しぶりに先生の魔法を見せて欲しいです! 氷のやつ!」



 少々、わざとらしく提案してくる我が弟子は何故かニヤニヤしている。具体的にはなにか企んでるようなそんな顔だ。



「まぁ、いいけど……」



 クールを気取っている私だが、先生という立場と、お手本をせがまれるというシチュエーションにテンションが上がっている。いっちょかましてやるか!



「よーーっし。んじゃいくよ」


「ドキドキ……(にやにや)」


「んーー……!」



 イメージしたのは二階建ての家に相当する大きさの氷の槍。それも一本や二本ではなく、見渡す限りの広範囲に。


 ところが……



「あ、あれ……?」



 広範囲どころか、一本の槍すら出てこない。いや、よく見ると足元に小さな氷の槍が出現していた。



「お、おかしいな……? それっ! それっ!」



 パキン。パキン。と、掻き消えそうな音と共に現れるのは小さな氷の槍ばかり。虚しく響く掛け声が空の彼方へ消え去っていったところで……



「それじゃ、先生! 魔法の特訓をしましょうか!(にやにや)」


「……」



 もしかして特訓しましょうって私がってこと? この子、絶対何かやらかしたな……



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



数分後。



「きゃーー!? いたいいたい!」


「んーー? (ニコニコ)」



 ひとまず、私が魔法をまともに使えなくなった理由を話すと、昨日フィオちゃんが持ってきてくれた例のケーキ。それに使われていた果物が魔法を使えなくする効果のあるものだったらしい。しかも、効果は三日ほど続くとか。昨日は魔法を使わなかったから全然気が付かなかったな。



「ちょっとしたおふざけじゃないですかぁーー!?」


「んーー? (にこにこ)」



 そして今の状況。私は悪事を働いた弟子の頭をグーでサンドイッチにしてぐりぐりとお仕置き中。魔法が使えない事は些細な問題でしかない!



「聞こえないなーー? あははは」


「こ、こんなことしていいと思ってるんですかぁ!? 私は王女様ですよ!?」


「いまさら何言ってんのさ! 反省するまでお仕置きだよ!」


「ぎゃあああ!? ごめんなさいごめんなさいーー!」



 メキッ! っと音がした所でついにギブアップ。そして……



「ぐすっ……」


「あ」



 ついに泣いてしまった王女様。ちょっとやりすぎたかな?



「あ、ルノがフィオをいじめてる」


「!?」



 どこからともなく湧いてきたコロリンが、冷めた目で私を見つめながらフィオちゃんの方へてくてくと歩いていく。ひどい……



「大丈夫ですか、フィオ? あぁ、かわいそうに……」


「うぅ……コロリンさぁん……」



 いやいや……なんで私が悪者みたいになってるの。



「ほらほら、変なお芝居してないで。家に入ってお茶でも」


「ルノ……あなたはいじめてきた相手と仲良くお茶しろというのですか!? 心まで氷なんですね」


「そうですよ! 先生のばかぁーー!」


「えーー……」



 なにこれ。もう私は悪役でいけってこと?



「はいはい。それじゃお詫びに何でも一つだけ言うことを聞いてあげますよ。……できる範囲で」


「にや」



 おい。今、にやってしたよね? さっきまでの泣いてたよね?



「まぁいっか……それで?」


「いえ、特にお願いはありません! けど、先生もそのままじゃいけませんから魔法の特訓をしましょう!」


「いや、べつに効果が切れるまで待ってればそれで」


「先生!」


「ん?」


「魔法の特訓をしましょう!」


「はい……」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 その後。



「ダメダメです、先せ……ルノさん! そんなちっぽけな魔法じゃ虫以下ですよ!」



 先生に毒を盛り、虫以下と評する我が弟子は実に楽しそうである。こんなイタズラ……一体誰に教わったのか。



「ぷぷっ! そうですよ、ルノ」


「……」



 黒幕発見。すぐ隣にいました。



「ほらほら、もう一度!」


「うーーん、こうですか?」


「一緒じゃないですかぁ! いいですか? こうです!」



 そう言って、お得意の炎の魔法で犬やら猫やらの動物を器用に作り出していくその姿を見てると涙が出てくる。うんうん……師匠として弟子の成長は喜ばしいよ。



「はい、その動物達はプレゼントしてあげます」



 そう言って、ご機嫌の先生(フィオちゃん)は指揮者のごとく華麗な動きで炎の動物達を投げ渡してきた。



「はいはい、ありがとうございま……あつ!?」


「ぷぷっ! って、あつい!? ちょっと! こっちに投げないでくださいよ!」


「何言ってんの! コロリンも道連れだよ!」


「あ、悪魔ーー!」


「あはははっ!」



 結局、この日は師匠と弟子の立場がすっかり逆転。そして私は黒幕のコロリンを巻き込み、その光景を見たフィオちゃんは実に楽しそうに笑っていた。



「うぅ……こんな事なら痺れるキノコでも食べさせてから」


「なにブツブツ言ってるのコロリン? ほら、炎の蛇だよ(ぽいっ)」


「あつーーい! 本当に悪魔ですね!?」


「だって持ってたら熱いもん」


「私だって熱いですから!?」



 そんなこんなで、騒ぎが収まった頃には辺り一面はすっかり焼け野原になっていた。こりゃ、後で魔法を使って復活させておかないといけないな。



「先生! 今日も楽しかったです。お邪魔しましたーー!」



 夕方。迎えに来たバカさんとオリーヴァさんと共に帰っていくフィオちゃんの背中を見つめながらほっと一息。久しぶりにあんなにはっちゃけた気がするな。



「ふぅ。まぁ、フィオちゃんが来てから新しい刺激ができて私も嬉しいよ」


「何か言いましたか、ルノ?」


「ん、なんでもないよ」



 少々、刺激が強すぎた気もするけど、とても楽しい一日でした。




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