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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第百十五話〜連鎖する辱め〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。

 



「んあ……?」



 ある日の深夜。私は不意に目が覚めた。


 ここ最近はだいぶ気温も下がってきてよく眠れる日も続いていたのだが、まさかこんな夜中に起きてしまうとは。だが理由はすぐに分かった。



「ん……またか」



 答えは簡単。隣で寝ているコロリンの腕が私の顔面に上陸していた。



「はぁ……まったくこの子は。ほら、乗せるなら自分の顔の上に乗せなさい」


「むぐ……」



 私は身体を起こすのと同時に、熟睡中のコロリンのお顔を揉みくちゃにして腕は返却しておいた。



「……水でも飲んでこよう」



 一度目覚めてしまったものだから、またすぐに眠れそうもなかった。



「そうだ、いい機会だし久しぶりに……」



 思い立ったが吉日ということで、コップ一杯の水を持って外へ。向かう先は庭にあるロッキの樹。その上だ。



「ふっふーーん、思った通りだ。今夜は雲一つない天気だから星がよく見えるね」



 夜中に抜け出してやって来たのは、スフレベルグの住居。そして、お昼寝スポットでお馴染みのツリーハウスのテラス席だ。



「よっこらせと」



 さっそくベンチに仰向けになって空を見上げてみた。うん、綺麗だ。どれがどれだとかは分からないけど。



「……」



 そのまま星を眺めること三十分。持ってきた水も飲み干してしまい、いつかの夜みたいに話し相手が欲しいなーーなんて思っていると……



「………………ん?」


「じろーー」


「……」



 うん。これは間違いなくスフレベルグがこちらを見つめている。起こさないように静かにしていたつもりだったのだが。



「起こしちゃった?」


「いえ、お気になさらず。なんだか『ゴクッゴクッ』と水を飲む音が聞こえたものですから」


「ご、ごめんね?」



 こうして静まり返った深夜に何かをしていると意外と音が響くらしい。しかもそれが自分が水を飲む音だとかちょっと恥ずかしいな……



「それじゃあ今更だけど、邪魔しちゃ悪いし私もそろそろ戻るね」


「待ってください」


「うん?」


「ワタシ起こしておいてこのままポイする気ですか」


「えぇ?」


「せっかくなのでなにか面白い話をしてください」


「またそんな無茶振りを……」



『うん、分かった!』なんて言う人はいないだろう。だって、それでつまらなかったら白けるもん。私だけかな?



「じろーー……」


「分かったよ。ならあの話をしてあげよう」


「ドキドキ」



 あの話。そう……星空の下でするとしたら『あの話』しかない。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「あれと、あれと、あれ。あの三つの星を繋げたやつが『チーズケーキ座』だよ」


「ルノ。あなたは寝ぼけているんですか?」


「なんで!?」


「だって『チーズケーキ座』なんてあるわけないでしょう?」


「いやいや、本当だってば! フィオちゃんが言ってたんだって!」


「可哀想に。弟子に騙されていることにも気付かないとは……」


「そういうこと!?」



 つまり、あの思い出深い深夜の星空観賞会はただ私がからかわれているだけだったのか!



「くぅ……フィオちゃんはあとでお仕置きするとして。もう一つ面白い話があるよ」


「ほう?」



 我ながらアホな前置きをしてしまったものだがここまできたら仕方ない。こういうのはある程度、勢いが大切なのだ。



「あれ見て。あそこに三つ、三角形に並んでる星があるでしょ? あれはね……『ピ座』っていうんだよ」


「……」


「ほらほら。切り分けたピザにそっくりでしょ? だからあれは『ピ座』なの」


「……」



 あれ。やっぱり白けたか?



「ルノ」


「はい」


「ギャグは説明すると白けてしまう上に、そのネタはさっきの『チーズケーキ座』の再利用ですよね?」


「はい……」


「しらーー……」



 やっぱり白けた!



「だ、だってしょうがないでしょ! 私は芸人でもなんでもないんだから面白い話を狙ってすることなんてできないよ!?」


「しららーー……」


「やめてーー! 私だって恥ずかしいんだからそんな目で見ないでーー!?」



 そう言いながら、その辺を転げ回る私。スベった恥ずかしさから、その場でじっとしていられなくなったからだ。



「ぷ!」


「え、なに?」


「いえ。今のルノの姿の方が先程の話よりよっぽど面白いなと思って」


「ドS! スフレベルグはドSだ! 私を辱めて楽しんでるなんて!?」


「ふふ、そうかもしれませんね。ところでルノ。他に面白い話はないのですか? チーズケーキ座? ピ座? あとは? ん? ん?」


「うわぁぁぁん! もう帰る!」



 この日、私は人生で最大級の辱めを受けたのだった。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ぐすっ……」



 現在、私がいるのはツリーハウスのテラス席。つまり帰るとか言いながら帰ってない。



「ルノ。あなたもなんだかんだでグロッタと同じドMだったのですね」


「ち、違うからね!? 別に弄られ待ちとかじゃないからね!?」


「それ、なんだか振りみたいですね」



 私も思った。



「はぁ……んじゃ今度こそ帰ろうかな」


「今からじゃあまり寝られませんよ?」



 スフレベルグの言葉につられて山の向こうに視線を向けるとうっすらと明るくなっているのが分かった。どうやら私は思った以上にこの時間を楽しんでいたらしい。やはりドMなのか?



「だね。でも朝起きて私がいなかったらみんな驚いちゃうからとりあえず戻るよ。スフレベルグとの夜の密会がバレたらそれはそれでまたからかられちゃいそうだしね」


「ふふ、ルノにとってはご褒美ですね?」


「だから私はドMじゃないから!?」


「冗談ですよ」


「本当かなぁ……」



 冗談でもスフレベルグにとって『ルノはドM』という考えが生まれてしまった。それが今後、悪い方向に向かいませんように。



「ま、いいや。また適当に遊びに来るからね。バイバイ」


「はい、お気をつけて」



 そして数日後。












「おや、ルノ様おはようございます! 今日もいい天気ですな!」


「うん、おはようグロッタ」



 早朝に起床した私に、心なしかいつもより高いテンションでグロッタが挨拶をしてきた。元気でなにより。



「よかったらご一緒に散歩でもどうです? それとも何かゲームでも!」


「別にいいけど……今日はずいぶんとご機嫌だね。なんかいいことでもあった?」


「ふっふっふっ! スフレベルグに、ルノ様もわたくしと同じだと聞いたのでなんだか親近感が湧いてしまいましてな!」


「同じ? 何か共通点とかあったっけ?」



 私はフェンリルでもないし、ましてやドMでもない……い……



「あぁ!?」


「ルノ様。ドM仲間ですな!」


「やめて!? そんな変な仲間になった覚えないから! てか、自分はドMなの否定しないのかよ!」


「その必要は無くなりました。なにせ『仲間』が見つかりましたから!」



 ちょっとカッコいいセリフを言いながらキリリっとキメるグロッタさん。内容が内容なだけにまったくかっこ良くない。



「仲間じゃない! 私は普通だーー!」



 それからしばらくの間。私を見るグロッタの視線がいつもよりおかしなことになっていたことは言うまでもない。


 誤解を解くのに大変苦労しました。



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