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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第百七話〜魔女とのお戯れ〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。

 



 王都から帰宅した翌日の早朝。



「うぅ……ん……トイレ」



 半ば寝ぼけたまま起き上がる私。



「んーー……」



 そのままよろよろと部屋を出て廊下……そう、長い廊下を歩いて……右手にトイレがあって……ガチャ……っと。



「あれ、ルノちゃん? 何してんの?」


「んーー……サトリさん……? なんでこんな所にいるんですかぁ……?」


「は? 寝ぼけてんの? 寝ぼけてるね」


「それよりトイレ……」


「トイレならそっちだよ」


「どうもぉ……」



 よろよろ。ガチャ。……ガチャ。



「どうもぉ……」


「ちょ、ちょっと! いい加減起きなさい! ほらほら!」



 そんな声と共にぺちぺちと私の頬に衝撃が走る。あの、痛いんですけど……



「って……サトリさん? なんでここに?」


「だからここはわたしの家だよ」


「はぁ?」



 何言ってるんだこの人は。寝ぼけていたとはいえ、私はちゃんとトイレへ向かったはず。そう、まずはフィオちゃんの部屋から出てそれから……



「あ、あれ……王城……?」


「王城?」



 目の前にはサトリさん。周りを見渡してみると……ここはカフェ?



「ひぇ……」



 そうだ。そういえば私は昨日……王都から帰って来たんだ。



「て、てへ……?」


「目、覚めた?」



 なんという事だ。あろうことか、まだ王城にいるつもりでトイレに向かっていたらしい。その結果、我が家を出て、村に到着し、サトリさんのカフェに突入したと。



「ルノちゃんは勇者だね。パジャマのまま出歩くなんて」


「はっ……!?」



 本当だ。恥ずかしすぎる!



「はぁ……仕方ないなぁ。わたしの服貸してあげるから着替えてきなよ」


「はい……ありがとうございます……」



 ここは自宅からすぐの村『ヒュンガル』


 私は地元に帰ってきたのだ。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「お洋服、ありがとうございます」


「お、似合ってるね。さすがわたしの服だ!」


「そこは私のことを褒めて欲しいんですけど……」



 サトリさんが貸してくれた服はロングスカートに、猫がプリントされたTシャツ。可愛いな。



「で、寝ぼけてたのは分かったけど。なんでまた朝からこんな所まで来ちゃったのさ?」


「いやぁ……じつはあれこれペラペラーーってことがありまして」



 あれこれペラペラ。つまり王都で過ごした日々の事だ。



「え、なに……ついにルノちゃんは国王様と知り合いになったの? フィオちゃんの件があるからいずれそうなるとは思ってたけど」


「ふふん。私達はもはや家族と言っても差し支えない程の関係ですからね。王城では豪華な食事や大浴場。街ではレストランや……アイス……とか……」



 あ、やばい……泣く。



「く……うっ……!?」


「なに、またトイレ? すごい顔だよ」


「そんなんじゃありませんよ……ぐすっ」



 王都での日々は本当に楽しかったなぁ。



「まぁ、大体事情は分かったよ。とりあえず朝ご飯食べていきなよ。はい『ルノチャンド』」


「うぅ、ありがとうございます。……あの、ステーキは……」


「朝からそんなもの出るわけないでしょ! このニワカリッチめ!」


「な、なにおう!」



 ニワカじゃないのに! これでも一週間くらい王城で過ごしてたからそれなりにリッチな生活を……ニワカか。



「うん。まぁ、たまにはこういう庶民の味もいいかもですね」


「これ、ニワカリッチルノちゃんが開発したメニューだけどね?」



 何にせよこういう食事を食べると帰ってきたという実感が湧いてくる。こっちはこっちで私の地元。やはり捨てられるものじゃない。



「ごちそうさまでした。やっぱり良いですね」


「良いって……何が?」


「『ルノチャンド』がですよ」



 あともちろん、このカフェとサトリさんもね。



「ところでルノちゃん。この後はどうするのかな? ちなみに今日、カフェはお休みだよ」


「あ、そうだったんですか。うーーん……家に帰ろうかな。何も言わないで出てきちゃいましたし」


「それじゃわたしも連れてってよ。久しぶりにフユナちゃんの顔も見たいし」


「そうですね。どうぞゆっくりしていってください」






 そんなわけで、サトリさんを連れて帰宅した私を出迎えてくれたのは。



「おかえりなさい、先生!」



 やはりここにいたか。王女フィオ・リトゥーラことフィオちゃん。


 

「うげ、なんで王女様がここにいるのさ?」


「あ、出たわね! やさぐれ看板娘サトリ!」


「はあっ!? 何を言ってるんですか! お子ちゃま王女のくせに!」


「なんですって!? 噂も流れない三流魔女のくせに先生の隣を歩くなんて失礼よ!」


「さ、三流だとぉーー!?」


「その通りよ! 貴方は外から私達の様子を眺めてるのがお似合いよ!」


「ぐぎぎぎっ……!?」



 朝からこの二人は騒がしいなぁ。



「はいはい、お二人が仲良しなのは分かりましたからやるなら外でやりましょうね」



 そう言って玄関でぎゃあぎゃあと騒ぐ二人を外にほっぽり出す。すると……



「それなら丁度いいわ! 貴方の実力を見せてもらおうかしら!」


「いいでしょう! この前は有耶無耶になっちゃいましたからね!」



 ふむ。これは放っておけないな。それにちょっと興味もある。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「そりゃーー!」


「ぷっ! 何かしら……そよ風が吹いたみたいだけど?」


「ぐっぎっぎっーー!?」



 草原に来たと思ったらずっとこの調子だ。どうやらサトリさんの方が分が悪いらしい。煽り的な意味で。



「サトリさんも落ち着いてください。そんなにぐぎぐぎやってたら歯が砕けちゃいますよ」


「そうよ、サトリさん。大人しく引き下がらないとその若さで入れ歯になってしまうわよ?」


「むっきーー!?」



 顔を真っ赤にして地面を蹴りつけるその姿は完全にお子ちゃまだった。



「はいはい、フィオちゃんもその辺にしとこうね。大人なところを見せないとだめだよ」


「はーーい、先生!」


「むっかーー!? むっきーー!?」



 いかん。意図せずサトリさんを煽ってしまった。



「そ、そ、そんなに言うなら王女様の魔法を見せてもらおうじゃありませんか! ルノちゃんに教わってるくらいなんだから使えるんですよね!?」


「ふふん、もちろんよ。じゃあサトリさんはそこに立っていてくださいね?」


「はい!」



 あ、これ展開が読めたぞ。



「えいっ!」



 ボッ!



「ぷっ! なんですかその小さな炎は。もっとド派手なやつ……を……?」



 にょろにょろ……



「え? え……?」



 フィオちゃんお得意の炎の蛇だ。蛇と言うだけあって、その動きは自由自在。もちろん狙いはサトリさん。



「わっ、わっわっ……ちょ、ちょっと!?」


「どうしたんですか? ただの小さな炎ですよーー?」



 フィオちゃんが生み出した炎の蛇は、まるで意思が通じているかのようにサトリさんの足下を這いずり回っていおちょくっている。



「熱い! ちょっとストップ! 熱い熱い!?」


「あはははっ!」



 どうやら口でも魔法でもフィオちゃんが一つ上をいっているようだ。この後、サトリさんが悔しがる姿が目に浮かぶな。



「ふふっ……じゃあさらに炎の犬、炎の猫、炎の鳥!」



 ボッ! ボッ! ボッ!


 そんな音と共に現れた可愛らしい炎の動物達。器用なもんだな。



「ぎゃあああ!? 降参! 降参ーー!」



 魔法対決。勝者、フィオちゃん。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「うぅ……ぐすっ!」



 あの後、お茶も兼ねて外のテーブルにやって来たのだが、サトリさんはずっとこんな調子だ。自信を無くしてしまったのだろうか。



「元気出してくださいサトリさん。私は分かってますよ。フィオちゃんが相手だから手加減してくれてたんでしょ?」


「あ、やっぱり分かった?」



 ケロッと立ち直るサトリさん。あからさますぎるでしょ……



「な、なんですってーー!?」



 ほら、聞こえちゃった。



「ふふん、当たり前でしょう? 王女様にお怪我をさせてはいけませんからね。ほんの10分の1……いや、100分の1くらいの力ですよ! (ニヤニヤ)」


「ふ、ふん……そんな意地を張らないでも……」


「王女様王女様。アレを見てください」


「???」



 サトリさんが『アレ』といって指差したのは、先程の草原の一番向こう側にある大きめの岩。



「行きますよ? とうっ!」



 ブオッン!



「え?」



 ズドーーン!



「え……えぇ!?」


「ふふん!」



 百メートル以上も離れた大岩が軽々と吹き飛び地面に落下。しかもそれだけを狙うという神技のおかげで地面は綺麗だ。助かります。



「せ、先生!? 手を貸すなんて人が悪いんですからぁ! あはは……!」


「ごめんね、フィオちゃん。今のは間違いなくサトリさんの魔法だよ」


「ほ、本当に……?」


「うん」


「そんなぁ……」



 残念そうなフィオちゃんだが、こればかりは仕方ない。才能があっても、まだ魔法を覚えたばかりで勝てる程『魔女』は甘くはないのだから。







 まぁ、でも。









「大丈夫だよ。フィオちゃんにだって才能はあるんだからしっかり私と魔法の特訓を続けていけばサトリさんなんて追い越せるから」


「は、はい……そうですよね! 確かにすごかったですけど先生の方がもっとすごいですもんね!」


「そうそう! 明日にはちょちょいのちょいだよ!」


「はい! 燃えてきました!」



 フィオちゃんも頑張っているので期待の意味も込めてしっかり励ましておく。精進あるのみです。








 一方サトリさんは。



「ぐぎぎっ……!? 好き放題言ってくれちゃってーー!?」



 ぐぎぐぎ言っていたのは言うまでもないでしょう。



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