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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第百三話〜王都『リトゥーラ』⑥ リトゥーラ王立図書館〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。

 



「先生。昨夜の事は私達だけの秘密ですよ?」



 目が覚めると、そのままの姿勢でこっそりとそんなこと言ってきたフィオちゃん。別に大したことはしてないと思うのだが、本人にとっては大切な思い出となったらしい。




 なにはともあれ、王都での二日目の朝を迎えた私達は、簡単に身支度を整えてから、朝食を食べるために食堂へとやって来ていた。



「あら、ルノ様おはようございます」


「おはようございます、オリーヴァさん。すごいですね、朝なのにこんなに色んな種類の料理が……」



 朝食はビュッフェ形式となっていて、設置されているテーブルにはこれでもかと言わんばかりの料理が並べられている。



「ふふ、王城の料理はシェフ達の誇りですもの。それにルノ様達お客様がいらっしゃるともなればさらに腕によりをかけたくもなりますわ。まぁ、それなら普段から国王様に出す料理ももっとできるだろ……とは思いますけどね……!」


「お、落ち着いてください。どうどう……」



 どちらの気持ちも分かる身としてはどうしようもない。国王様があんなだしね……



「「おはようございます、国王様」」



 件の国王様。ブレッザさんがバカさんを従えて現れた。しょうもないギャグをかましてきたり、浴場で待ち構えていたりといった一面があり、正直に言うとあまり国王様らしくない。


 ところが……



「おはようございます、国王様」


「うむ」


「おはようございます、国王様」


「うむむ」


「おはようございます、国王様」


「うむむむ」


「おぉ」



 カツカツ……と、国王にふさわしい足音を奏でながらやって来るブレッザさんは、今ばかりはしっかりとした威厳のある国王様だった。



「とか言うと思いましたか? なんですか、その『うむむむ』って……」


「ぶっ!」



 朝一番の水で喉を潤していたブレッザさんへ、ツッコミと同時に、人差し指で脇腹へ突っ込みを入れて差し上げた。やってくれって目が言ってたものだから。



「ゲホゲホ! 朝から君は裏切らないな……いや、流石だ」


「私はあまりやりたくないんですけどね。周りの視線が……」


「ふふ、安心したまえ。国王であるこの私が許す」


「全然説得力がありませんよ。とりあえず口拭いてください……」


「お、すまんな」



 近くにあったおしぼりを手渡す私と、それを受け取るブレッザさん。なんでこんなに友達みたいになってるんだろ。



「あ、そうだ……ブレッザさん。お聞きしたいことがあるんですけど、近場に何か観光スポットなんてありませんか?」



 と言うのも、本日は残念ながら朝から雨。できないこともないが、出かけるならなるべく近場にしたいのだ。



「ふむ、観光スポットか……君は本は好きかな?」


「私はあんまりですけど……フユナは本が好きですね」


「フユナちゃんか。あの『シースー』の子だね」


「あの……『シースー』をフユナ発祥のギャグみたいに言わないでくださいよ。せめて『シースー好きの子』と言ってください」



 ちなみに『シースー』はこの世界では寿司の事だ。つまり『フユナは寿司好きの子』という意味。



「だが、それなら良かった。王城の中に大きな図書館がある。本好きなら一日中いても飽きないぞ?」


「ほう……?」



 それならフユナもきっと喜ぶぞ。レヴィナもよく一緒に本を読んでるのを見かけるし、一緒に誘ってみるか。



「興味があるならこの後行ってみるといい。バッカ、案内を頼んでもいいかな?」


「はっ、お任せ下さい」


「ありがとうございます。ではお言葉に甘えさせていただきますね」



 図書館。本にこだわりがあるわけじゃないが『王城の』というだけで心が踊る。これはなかなか楽しみだ。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「すごーーい! 村の本屋さんより沢山ある!」


「おぉ……さすが、王城の図書館なだけはありますね……」



 朝食の後。私とフユナそしてレヴィナの三人はブレッザさんの好意で、バカさんの案内の元、王城内部にある『リトゥーラ王立図書館』へとやって来ていた。



「ちなみにここは一般人でも入ることができます。知識は広めてなんぼですからね」


「へぇ、ブレッザさんにしては心が広い。いや、あの人は国王様という立場からしたら広すぎるかもしれませんね」


「ははっ、間違いありません」



 とは言え、それがあの人が慕われる理由でもあるのかもしれない。国王様らしくはないかもしれないが、ここを紹介してくれたことと言い、親切な人なのだと思う。



「んじゃ、ルノ嬢達はどうぞお好きなように。自分はここにいますんで帰る時はまた声掛けてくださいね」



 そう言うと設置されているテーブルの一つに腰を下ろすバカさん。



「分かりました。では、行ってきますね」



 こうして始まったフユナ&レヴィナとの図書館デート。それは思った以上に地味で静かなものになった。



「んーー……」



 膨大な量の本を物色中のフユナ。



「ふむ……」



 こちらも同じく物色中のレヴィナ。



「うとうと……」



 こちらは早くも暇を持て余し寝落ちしそうになる私。


 そして……


 ゴツン!



「うぎゃ!?」


「何してるの、ルノ?」


「ご、ごめん、何でもないよ……」



 見事に寝落ちした私は本棚に頭をぶつけてしまった。



「いたたた……」



 もう少しこう……『ルノ、飲み物取りに行こーー!』とか『見てくださいルノさん。ソフトクリームタワーです……!』みたいな華やかなものを期待していたのだが。



「まぁ、ここは図書館だもんね。これが普通か……」


「ねぇねぇ、ルノ」


「ん、どうかした?」


「今ね。これとこれ、どっちを読もうか悩んでるんだけど……どっちがいいと思う?」


「どれどれ……」



 なるほど、冒険物と日常生活物か。



「ふむふむ、どっちも捨て難いけど……こっちの日常生活物にしてみたらどうかな? ほら、冒険物はサトりんのやつを読んだからここは新しいジャンルを開拓するということでさ」


「じゃあそうするーー!」



 そのままピューーと片方の本を戻しに行くフユナ。なにあれ、可愛いんですけど。

 


「ルノさん……」


「あぁ、レヴィナも決まった?」


「はい。見てくださいこれ。『死霊術を極めた者の末路』ですって……ふふふ」


「なんか怖いねそれ。お願いだから変な方向に行かないでね?」



 みんな忘れてるかもしれないが、レヴィナはネクロマンサーであり、死霊術を扱うことができるのだ。つまりあの本にはレヴィナの末路が……!



「ルノ!さっそく読もーー!」


「ドキドキ……」



 多少、思うところはあったが、二人とも夢中になれる本を見つけたみたいだ。



「よし。それなら一旦、バカさんの所へ戻ろうか。そこでゆっくり読もう」



 ちなみに、せっかく図書館に来たので、私も一冊の本を手に持っていた。その名も『料理のレパートリーが増える本』



「ルノ……フユナ、ルノサンドが好きだよ?」


「ルノさん……ぐすっ……」


「……」



 なんで私は二人に可哀想な子を見る目で見られてるんだ?



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「あれ、早かったですね」


「いえ、まだ帰りませんよ。読む本が決まったのでこれから読もうと思って」



 そう言って私はバカさんの隣に腰を下ろした。ここは四人がけのテーブルで、フユナとレヴィナは私達の向かいの席だ。



「ルノ嬢はどんなの借りてきたんです?」


「え、これ……ですけど……」


「………………ぷっ」


「……」



 おい、今笑っただろ。



「いやいや、すいません。料理の勉強なんてお嬢みたいだなぁと思って。やっぱり似た者同士、惹かれ合うんですかね」


「うぐっ……」


「そんな照れることありませんって。料理を勉強するのって『自分のためだ!』って人はいないでしょう?大体の場合、誰かに食べさせたいからとかそんな感じです。料理を勉強する人は誰かを思いやる心を持った優しい人間なんですよ」


「そ、そうですか……?」



 確かに、私はルノサンド以外の料理もみんなに食べさせてあげようと思っていたが、そう言葉にされるとなんだか恥ずかしいな。



「はい。そうでなくてもルノ嬢は優しいと思いますよ。お人好しと言ってもいいくらいです。じゃなきゃお嬢のあんなワガママに付き合ってくれたりしませんよ」



 お嬢のワガママ……突然私の家に訪ねてきて『魔法を教えてください!』って言ってきた件か。



「ま、まぁ……最初は驚きましたけど、今となっては引き受けて良かったと思ってますよ。フィオちゃんは私にべったりし過ぎる所もありますけどいい子ですし、こうして王都に来る機会もできました。こっちが感謝したいくらいですよ」


「それ、お嬢に言ってあげたら泣いて喜びますよ」


「ですね。簡単に想像できます」



 そんなこんなで、私は本を読むことよりもバカさんとの会話の方が弾んでしまい、結局本は読まずに返すことになってしまった。



「大丈夫です。ルノ嬢にはルノサンドがあるじゃないですか!」


「わ、私だって他にも色々と作れるんですからね! えっと……アイスとかっ!?」


「ルノ嬢……」




 その日、私はバカさんにまで可哀想な子を見る目で見られてしまった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 図書館から帰ったその日の夜。



「先生先生先生ぇーー♡」



 ドカン!


 フィオちゃんがやけに愛のこもったアタックで私に抱き着いてきた。



「ゲホッ……ど、どうしたのフィオちゃん?」


「ふふふーー♪」


「???」



 うーーん……分からん。今日は一緒に行動してた訳じゃないから何かをしてあげたとかではないはずだが?



「先生、今日の図書館は楽しかったですか?」


「そ、そうだね。私は何か読んだわけじゃないけど、フユナとレヴィナは満足してたよ」


「ふふふーー♪ じゃあ先生は何してたんです?」


「私? 私はバカさんとーー」



 料理、そしてフィオちゃんの話を……



「あっ!?」


「ふふふ♪ ふふふーー♪」



 バカさんめっ! フィオちゃんにバラしたな!?



「先生ぇ?」


「な、なにかな?」










「私も先生に出会えて良かったですよ♡」


「うぅーー!?」



 その後、私はフィオちゃんの顔を見ることもできなくなり、布団に隠れるようにして早々に眠りについたのでした。



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