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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
102/198

第百二話〜王都『リトゥーラ』⑤ 深夜の星空鑑賞会〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。

 



 王都にやって来てから二日目。……の前に少々の物語があった。それは一日目の夜、就寝後の出来事。



「う……うぅん……」


「ふへへぇ……せんせぇ……」


「く、苦しい……」



 私は突然の息苦しさに目を覚ました。まとわりつく物体に目をやると、息がかかるほどの距離にいたのはやはりフィオちゃんだった。

 引き剥がしても引き剥がしても、ごろんと寝返りを打って戻ってくるものだからどうしようもない。



「せんせぇ……ちゅちゅちゅ……」


「はい、ちゅちゅちゅーー」



 とりあえず手にちゅっちゅさせて安全を確保する。



「これじゃ寝れないな。まったく……フィオちゃんのばか……」


「……(パチッ)」


「げ」


「……」



 私の呟きを聞き取ったのか、目を覚まして見つめてくるフィオちゃん。怒ったかな?



「……」


「せんせぇ」


「はい……」


「……トイレ」


「トイレ? うん、行ってらっしゃい」


「トーーイーーレぇーー!」


「ちょっ!? こ、こら! 夜中に騒いだらみんな起きちゃうでしょ! それと、女の子がそんなはしたない事を大声で言っちゃいけません!」


「むぐぅーー!?」



 いけないお口を塞いでなんとかその場を凌ぐことができた。危うくみんなに迷惑をかける所だったぞ。この子は寝ぼけてるのか?



「ほら、フィオちゃん。おトイレに行くなら行って。寝ぼけてるなら静かにして(ペチペチ)」


「うーーん……起きてますよぉ……トイレぇ……」


「おトイレなら部屋を出て左だよ。……知らないけど」


「一人じゃ怖いぃ……付いてきてくださいぃーー……」


「えぇ……?」



 一瞬迷ったが、私もちょっと行きたくなってきたのである意味グッドタイミング。



「しょうがないなぁ。なら行くよ。みんなを起こさないように静かにね」


「はぁーーい……♪」



 なんだこの子は……急に楽しそうな顔になったぞ。具体的には『やった! 先生と夜のお散歩だ♪』みたいなそんな顔。


「ねぇ、フィオちゃん? 本当にトイレに行きたいんだよね……? 私とのデート目的じゃないよね?」


「もちろんですよぉ……ブルブル……」


「……」



 まぁいいか。行くだけ行こう。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 部屋を抜け出した私とフィオちゃんはトイレを済ませて、現在はひたすら続く廊下を歩いている真っ最中。ちなみに、王城の内部は深夜でもポツポツと灯りがついているので、お化け屋敷のような雰囲気はない。ほっ……



「えっと……こっちだっけ? あんな扉あったかな……」


「迷っちゃいましたね」


「いやいや、ここフィオちゃんのお家でしょ」


「私だってこんなに広いと迷っちゃいますよぉ」



 にわかには信じられないが、王城の広さを考えれば嘘だと断言できないのもまた事実。まぁ、迷宮じゃないんだしそのうち戻れるよね。



「あっ、先生! 手を離さないでくださいーー!」


「あぁ、はいはい……」




 じつは部屋を出てから今に至るまで、私とフィオちゃんは手を繋ぎっぱなしだ。本人曰く『手を繋いでないとはぐれちゃいますぅ……!』とのこと。



「見てください先生、食料庫がありますよ。何かおやつでも持って行きますか?」


「おやつって……だめだよ。夜中に食べたら太っちゃうんだからね。管理の人にも怒られちゃうよ」



 なんて説教をしている間に……



「持ってきちゃいました♪」


「……」



 にっこりと笑いながら、その手にはクッキーやらゼリーやらのお菓子の盛り合わせが抱かれていた。本当にこの子は……



「いけません。没収」


「あぁ! 私のおやつーー!」



 身長差的に私が取り上げるとどうすることもできないので、ぴょんぴょんと飛び跳ねることしかできないフィオちゃん。可愛いな……



「ん、ここは……?」



 すると、妙な場所に辿り着いた。昔から何度もお世話になっているような……



「テラスですね。先生がお好きなカフェと似ているので気に入ると思いますよ?」


「ほ、ほぅ……?」



 どうやらいつの間にか王城の端っこまで来ていたらしい。ちなみにここは二階で、昼間ならこのテラスからは良い景色が見えそうだ。



「へぇ……いいねここ。ゆっくりコーヒーでも飲みながら寛ぎたいものだよ」


「そう言うと思って用意してきました!」


「あっ、またこの子は!」



 もう完全に抜け出してきた意味を忘れてるだろ。いや、元からこれが目的か?



「はいどうぞ、先生。せっかくのコーヒーが冷めちゃいますよ? 勿体無いですよぉ? (ニコニコ)」


「うぐっ……ちょっとだけだからね……」



 コーヒーが冷めちゃうのも事実。勿体無いのも事実。さらに言えば私の手には先程没収したお菓子があるのも事実。これらの事実を踏まえた結果、導き出される答えは……



「一つだけ……」


「あ、先生だけずるいっ!」


「ん、何のことかな? (ポリポリ)」


「私の目は誤魔化せませんよ! それ、私が一番好きな味なのにぃ!」


「じゃ、じゃあほら。フィオちゃんには私のお気に入りの味をあげるから。はい、あーーん」


「あーーん」



 ポイッと適当に選んだクッキーを放り込む。『私のお気に入り』とは言ったが、そもそもこれを食べるのは初めてなので味など分からない。



「美味しい! 先生の愛情を感じます!」


「そう? それなら良かったよ。もう一個だけ食べよ。やぱもう一個(×2)」


「あぁ、そんなに!先生、私にもください!」


「はいはい、これで最後ね(ポポポイ)」


「んぐんぐ」



『一個だけ』なんて最初の言葉はどこへやら。次々と消えていくクッキー達。




「じゃあ次はこれのゼリーを食べましょう!」


「え……さすがにもうだめだよ……」


「でもでも! これ、チーズケーキ味のゼリーですよーー♪」


「な、なにぃ……」



 それ、もはやレアチーズやん! という突っ込みは置いておいて……食べたい。是非とも食べたい!



「それで最後……だからね……?」


「はいっ、これで最後です!」



 そのゼリーを食べ終わった後に気付いたのだが、持ってきたおやつはきれいさっぱり空になっていた。文字通り『これで最後』でした。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「綺麗ですね、先生」


「ん、そうだね」



 その後、私とフィオちゃんはコーヒーを飲みながらの星空鑑賞会をしていた。あ、コーヒーはおやつじゃないからノーカンだよ、うん。



「あ、見てください。あれは『チーズケーキ座』ですよ」


「いやいや、さすがに嘘でしょ?」


「本当ですって! ほら、あそこ。何となく三角形に切り分けたチーズケーキに見えるでしょ?」


「それ、チーズケーキである必要なくない? いや、そういう突っ込みは良くないね」



 そんなことを言ったらキリがないし、どこぞの大三角形なども『大チーズケーキ』だの『ピ座』だの、なんでも言えてしまう。



「そうですよ。こういうのは感動できればそれでおっけーです!」


「あはは、そうだね。ちなみにほら、あれは『ホールケーキ座』だよ。あれとあれを繋いでいくと円になってーー」


「先生……それはあんまり捻りがなくてちょっと……」


「ひ、ひどいっ!? 感動するでしょ!? 夜空に輝くホールケーキだよ!?」


「そ、そうですね……感動シマス……」


「でしょーー?」



 よし、なんとか勢いで乗り切ったぞ。


 こんな調子で『アップルパイ座』だの『モンブラン座』などと、しょうもないことを言っていると……











「ふぁぁぁ……また眠くなってきちゃいましたぁ……」


「あ、ちょっと……」



 そのままフィオちゃんは私の肩に身体を預けて眠ってしまった。



「すぅ……すぅ……」


「仕方ないなぁ」



 それからしばらくの間、私はフィオちゃんの頭を抱きながら撫でてあげた。初めて一緒の場所で寝泊まりできるんだし、多少のご褒美はあげてもいいだろう。



「ふへ……せんせぇ……」


「また言ってるや……よしよし」



 そんな感じで、一時間程ゆっくりした後に、ちゃんと歯磨きをさせて部屋で眠りにつきました。


 皆さんも寝る前はしっかりと歯磨きをしましょうね。



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