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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第百一話〜王都『リトゥーラ』④ ご自慢の大浴場〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。

 



 王城の地下に到着した私達。


 先程の夕食の際、ブレッザさんが『食事が終わったら行ってみるといい』なんてことをドヤ顔で言っていたがあれはこういうことだったのか。



「ようこそ、我が大浴場へ」



 突然、柱の影からぬっと現れたのは件の国王様。



「これは偶然……じゃないですね。もしかしてずっと待っていたんですか?」



 だとしたら酔っ払って連行されたのもこのためか。よほど自慢したかったらしい。



「いやいや、全くの偶然だ。私もちょうど風呂に入ろうとしていたところだよ」


「そうですか。ブレッザさんがやたらと自慢したがっていた理由が分かりましたよ。これは本当にすごいですね」


「はっはっはっ! そうだろうそうだろう!」



 長年の夢が叶ったかのように喜ぶブレッザさん。ここまではしゃがれるとむしろ微笑ましく思えてくる。



「じゃあ私達は国王様ご自慢の大浴場を堪能させて頂きますね」


「あぁ、是非ともそうしてくれ!」


「ありがとうございます。じゃ、みんな行こっか」



 スタスタ……


 スタスタ……



「……あの」


「ん?」


「……なにしてるんです?」


「何って……浴場で筋トレをするように見えるか?」



 若干、質問の答えとは違っていたが、とりあえずブレッザさんの上から下まで視線を走らせる。ずいぶんと立派な筋肉だこと。



「申し訳ないですけど、ブレッザさんに至ってはそう見えてしまうのも仕方の無いことかと。いや、そもそもそういうことではなくてですね……」



 私の質問はもっと単純。なぜ私達家族(女)の入浴にブレッザさん(ムキムキマッチョ)がご一緒しようとしているのか……そういう事だ。



「その答えも単純だ。ほら、あれを見てみなさい」


「ふむ……?」



 ブレッザさんが指差す方には何やら即席の案内板があった。そこには『混浴』と書かれている。


 もう一度言おう。








『即席の案内板』に『混浴』と書かれている!







「こ、このド変態国王はーー!」


「はっはっはっ! (ドヤァ!ドヤヤァ!)」



 開き直った……完全に狙ってやがったな!



「どうやら今回ばかりはオリーヴァさんの言葉を信じた私が馬鹿だった! 人ができてるならこんな小細工はしないよ……」



 とは言えどうするか。もうお風呂の気分になっちゃってるし、ブレッザさんの入浴が終わるまで待ってるのも嫌だなぁ……



「先生先生」


「ん? どうしたのフィオちゃん。あのド変態筋肉マッチョをしばいてくれるの?」


「いえ、じつはこんな時のための秘策があるのです。じゃじゃーーん!」


「そ、それは……!?」


「そう、これは『ミズギ』です!」


「……」



 やられた……この親子、まさか共謀してるんじゃないだろうな?


 こうして、流されるがままに着替えることになった私達。


 数分後……



「きゃーー!? 先生、可愛いですっ!」


「ハァハァ! い、良い!良いぞ!」


「……」



 決定。私達はこの親子に嵌められたのだ。



「ルノ! どうかなーー?」


「う、うん。フユナは最高に可愛いよ。それは間違いない」



 複雑な気分ではあったが、同時に心が踊っている自分もいた。まさか……フユナのこんなに可愛い姿が見られるとはっ! それだけではない。コロリンもレヴィナももれなくビューティフル! グロッタとスフレベルグは……うん。



「これならあの親子の悪行を差し引いてもお釣りがくるかも……」



 この際だから楽しんだ方がお得かもしれない。なんにしても私だってもう着替えてしまったし、プールに来たと思えば些細な事に過ぎない。



「よし、せっかく王城のお風呂に入れるんだ! レッツゴー!」


「おーー!」


「カシャカシャ!」



 確かに楽しむと決めた。嵌められたこともこの際忘れる。だが!



「あの、撮影は私を通してもらっていいてますかね? 無論、許可することはありませんけどね? (メキッ)」


「ぎゃあああ!?」



 こうして、私は家族を魔の手(国王)から守ったのだった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 王城の大浴場。私達が見ていたものはほんの一部だということはすぐに分かった。



「ねぇ、ルノ『ワイン風呂』って何かな?」


「あっちには、『泥風呂』なんてものが……」


「こっちには『極楽風呂』がありますね」



 私達を出迎えた巨大なお風呂に加えて、さらにそこから海を渡るが如く移動すると今言ったようなお風呂がある。さらにその先には……(以下省略)



「これ、王城の地下越えてない? 下手したら帰ってこられなくなりそうだね」


「でもルノ。帰る時にはあれがあるみたいだよ」


「!?」



 これまたびっくり。いつかの旅行先でみたウォータースライダーがまるでロープウェイのように張り巡らされていた。



「なにあれすごい! お風呂云々よりむしろあっちを楽しみたい……!」


「それでは私がお先にーー!」


「あっ、ずるい! 抜け駆けは許さないよ!」


「ルノーーコロリンーー待ってよーー!」



 もはや、私達のノリは完全にテーマパークだった。



「おぉーー! 最高だこれ! 長い! 速い!」


「がぼぼぼ!!?」


「あはははっ!」



 私達三人は一緒にウォータースライダーを滑っていた。ちなみに、先頭はコロリン……モロにお湯を飲む。


 バシャーーン!


 こうして、お風呂だというのに一時間が経過。何度目かも分からなくなった水飛沫を巻き上げたところで一旦休憩する事にした。



「ふぅ。お風呂なのに沢山遊んだから疲れちゃったよ」


「この後はちゃんとゆっくりしようね」


「えぇ、ワイン風呂でゆっくりして、泥風呂でゆっくりして極楽風呂でゆっくりしましょうか」



 それ、さらに疲れがたまるコースじゃないかなぁ。それだけ移動するってことだもん。



「まぁ、とりあえずはここでゆっくりしよう」



 やって来たのは最初に私達を出迎えた巨大なお風呂。ちなみに、レヴィナやグロッタ、スフレベルグはここでのんびりしていたらしい。



「じろーー」


「カシャカシャ!」


「うわ、なんか増えてるし……」



 プールサイドならぬお風呂サイドには、いやらしい視線を送ってくるブレッザさんに加えて、命令されたのか、写真を撮るバカさんまでもが加わっていた。後で没収だな。



「申し訳ありません、ルノ様。国王様も久しぶりのご友人とあってかなりはしゃいでいるものかと。どうか暖かい目で見守ってやってください……」


「まぁ、先生くらい可愛い人がいたら夢中になってしまうのも分かりますけどね!」



 そんな言葉と共にやって来たのはオリーヴァさんとフィオちゃん。



「あはは、気にしないでください。私もすごく楽しいですから」


「そう言っていただけると気持ちが楽になります」


「じゃあ先生! 今からは私と楽しみましょう!」


「あっ、ダメだよフィオちゃん! ルノはこれからフユナ達と色んなお風呂を回るんだからーー!」


「そ、そんなぁ!? 先生! 私と遊んでくださいよぉ!」


「諦めてください。もうフィオの出番はおわったのですから」


「むきーー! 私、コロリンに手を押しつぶされたの忘れてませんからね!」



 そんなこんなでぎゃあぎゃあとお湯のかけあいっこが始まってしまった。てか、私を中心にしてやられると被害に遭うの私だけになるんですけど。



「それそれーー!」


「おりゃーー!」


「どしゅ……!」



 なるほど。これ、完全に私狙いだな。てか、コロリン……そのハンド水鉄砲かなり痛いです。



「もう怒ったよーー! とりゃーー!」



 お返しにと私は三人に向けてお湯の攻撃を返す。攻撃方法はその場で回転してがむしゃらに周りへお湯を飛ばすばかり。客観的にみたら完全にお子様だが、効果はてきめんだった。



「うわっ!?」


「ゲホゲホッ!」


「わぶっ!!」


「ふっふーーん!」



 大人気なく勝ち誇る私。それからさらにヒートアップした戦いは一時間程も続いたのでした。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「あぁ……疲れた……」



 大浴場から帰還した私達は再びフィオちゃんの部屋にやって来ていた。お風呂なのに疲れるという謎システムによって、今夜はぐっすりと眠れそうだ。



「うとうと……」



 と言うか、フィオちゃんに関してはもう寝ているようなものだった。だいぶはしゃいでいたから疲れたんだろうな。



「ふぁぁぁ……それは私も同じか。みんな、もう寝ようか」



 フィオちゃんは既にベッドの真ん中で寝ているので、私達はそれをサンドイッチする形で両サイドをうめていく。



「ルノ。明日はどうする? もう帰っちゃうの?」


「うーーん、そうだねぇ……」



 隣に寝ていたフユナが、少々名残惜しそうな表情で聞いてきた。私も同じ気持ちだ。なので……前向きな気持ちを込めて、こう言った。













「まぁ……明日の事は明日に決めればいいよ。幸い急ぎの予定も無いし、まだまだ観光もし足りない。もしかしたら明日もここにお世話になるかもね?」


「うん、そうだね!」



 こうして、太陽のように明るくなったフユナと共に、私は眠りについた。明日からどれだけ居るか分からないがそれも今は分からない。


 なにはともあれ、王都観光の一日目は最高の思い出となって幕を下ろしたのでした。



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