年越し即興小説
俺の親友は面白い奴だ。
気さくで飄々として、空気が読めている……とは言い難いけれど、
性差を問わず好かれるヤツで、誰もに好かれるような奴で。
例えば、ほら。
もちろん俺だって、あいつのことが好きだ。
親友として、友達として、好きだと思う。
あいつも、うん。
うぬぼれでさえなければ、俺のことを好いてくれているのだと思う。
友達としてのコミュニケーション。
友達としての日常。
性差を問わず好かれる奴だとしても俺とアイツの仲は、
特別親しい方だと思う。
――友達として。
親友として。
……うん、それは幸せなことだ。
けれど。
気さくで飄々として、空気が読めない奴で。
同性・異性問わずに好かれる奴だから。
俺の想いは、きっといつまでも気付いてくれない。
俺がその手に触れる度に、心臓が跳ねあがる事だとか。
意外と細くて、長い指に、つい見惚れてしまったり。
ふと近づいた顔を見ることが出来ず逸らしてしまうことだとか。
多分、多分。そういう、普通の友達としては、異常なことを。
ずっと、ずっと、かくしてきたから。多分、気付かれてはいない。
君はいつまでも俺の想いを知らないままに、
素敵な女性と結婚して、幸福な人生を送るのだろう。
十年後に、君はそうして。
俺に見せてはくれない笑顔を、俺の知らない誰かに向けるのだろう。
そして、俺はそれをきっと祝福するのだと思う。
せめてこの身がふくよかで、彼を包める異性の身体ならと思うけど。
今の俺は苦々しい、筋張った彼の友達にしかなれない身体で。
だから、友達でいい。
友達として、当然のように。笑顔で、君の幸せを祈るだろう。
永遠、この想いは隠したままで。
その時に胸をえぐるような感傷を、君は知らないだろうけど。