これって私が悪者なの?
え~と。
これって私が悪者なの?
なんで?
私は少しも悪くないと思うんだよね。
目の前には
「離婚して欲しい。」
と土下座している旦那。
その後頭部をはげろって呪いながら見つめていたら、突然、思い出した。
『ずっと、君を愛していたよ。』
それは、昼帯のドラマだ。
え?
うそ。マジ?
あれ?これ、ドラマの世界なの?
なんで?私、前世とか電波な感じ?
会社でひとつ先輩の彼に、交際を申し込まれて、3年付き合って、結婚した。
結婚を機に退職。これは彼が奥さんには家のことをやってほしいからって言われたから。
結婚して2年で長男誕生。
係長になった旦那にいわれるまま、たまに自宅に会社の部下を突然つれてこられても文句ひとつ言わずに歓待して、旦那の株を上げる。
そんなこんなで3年。
子供は幼稚園に入る年齢になって、ママ友ともうまく付き合っていた。
ホラ。私は何も悪くない。
30歳独身のヒロイン。
彼女には大学時代に交際していた忘れられない恋人がいた。
ささいなことですれ違って別れてしまったけれど、今でも忘れられない。
だから30歳になるまで他のどの男性にも本気になれなかった。
年下のイケメン俳優に告白されて、この人なら・・・と思いかけたら、偶然、その昔の彼と再会する。
年下のイケメン俳優と、昔の彼=エリートサラリーマン、二人の間で揺れ動くヒロイン。
そう、この偶然再会しちゃった、忘れられなかった彼がうちの旦那だ。
ヒロインと昔の彼との障害は、彼の妻。
子供をたてに絶対に別れてなんかあげないんだからね。
って・・・
え?
そりゃあ、そうでしょう?
んん。でも、旦那にあのドラマのままに、
「ずっと愛していたのは彼女なんだ。どちらかといえば浮気だったのはお前なんだ。」
なんてセリフを吐かれたら、切れるよ。
なにぬかしとんじゃあ!って。
「家でのうのうとしているお前には分からないかな・・・仕事も一生懸命な彼女支えてやりたいんだ。」
オ・マ・エが、結婚するときに、奥さんには家に入って欲しいっていたんだよ!
私だって、仕事続けたい気持ちあったよ。
総合職だったんだぞ?あのまま、勤めてたら私だって、今ごろ、係長だったわ。
ドラマでの妻、彼への愛を全面にだして執着する怖いオンナだったけど。
あ~イヤだ。くだらない。
そんな馬鹿なセリフを吐かれる位なら、今、悪者になる前に離婚してやる。
「分かりました。」
「は?」
「だから、離婚しましょう。いくら、あなたにとって浮気が私の方でも法律上は彼女の方が浮気です。つまり、離婚の原因はあなたの浮気。離婚もあなたから言い出したことです。子供の親権は当然私に。慰謝料と養育費は頂きます。」
後日、ヒロインが私に会いたいとやってきた。
なんで?放っておいて欲しいわというのが本音だ。
「ごめんなさい、どうしても彼が忘れられなくて・・・」
「それで?」
「え?」
「何の用ですか?私、もう、離婚届にサインしましたよ?弁護士を通じて、離婚の条件も彼と整えました。ああ、そうだ。丁度よかった。貴女への慰謝料の請求については弁護士からいずれ連絡が行きます。」
「え?慰謝料って・・・」
「当たり前でしょ?貴女と彼にとっては純愛でも、世間的には貴女は不倫のあげく、相手の家庭を壊したんです。私が貴女に慰謝料を請求するのは間違っていません。ああ、私、それなりに奥さんやってたんで、彼の両親との仲も良好でした。貴女が彼の両親に良く思われないのは仕方ないわよね。孫も離れることになるんだし。それから、彼の会社でも出来た奥さんって評判で。今回の件でも同情してもらえて、復職できることになったわ。そうそう、彼、不倫のあげく、離婚なんて、出世に響くでしょうね。多分、近い内に降格の上、左遷だと思うわ。」
慰謝料にはこの家と貯金のほとんど。養育費もいま、貯蓄以外に使っていた金額をすべてもらうことで合意した。私が、再婚しようがしまいが、子供が成人するまでの養育費と、子供の結婚費用は払ってもらう。そうそう、結婚したときに彼の両親がこれで一人前だからと生前贈与された土地ももらった。
「いいわね、純愛。何もかも失ってでも手に入れたい愛。うらやましいわ。お幸せにね。」
昔、「ずっとあなたが好きだった」というドラマがあって、むかついたのを思い出しました。