ずっと
楽しみにしていた二泊三日の修学旅行はあっという間に幕を閉じた。
「あーあ、結局“進展しない”かぁ」
京都駅で新幹線を待ちながら愛子がぼやいた。
それが自分と和貴をさしていることに気づかないわけがない。
(もう、みんな言いたい放題なんだから)
一昨日の晩『その後どうなったか』を話してから今日まで、暇さえあればああしろ、こうやって誘えだの余計なお世話を焼かれっぱなしだったのだ。
物事には流れというものがある。ことが済めばいいというものでもなかろう。
キスにすら至らなかった結末がそんなに気に入らないのだろうか。
「がっかりだよねぇ。二泊もしたのに」
「だって・・・」
しかたがないじゃないかと、深雪はうなだれた。
あの時は自然な流れで、キスをするのだと自分でもわかって目を閉じた。
あのままなら間違いなくそうなっていただろう。
・・・あの子さえいなければ。
「カップルのラブシーン邪魔するなんてどんなガキよねー。躾がなってないってゆーか」
「てゆーかあの時間に外に出しとくなんて親が間違ってるよねー」
「・・・」
そうなのだ。
「あーっ、お兄ちゃんたちちゅーしてるぅ!」
まだ未遂なのに、大きな声に邪魔されて二人ははじかれたように距離をとった。
声のした足元を見ると、3,4歳くらいの女の子がこちらを指差していた。
観光ルートから少し外れたこんな場所にどうしてこんな子が一人いるのかわからなかったが、ともかく一人残して逃げるわけにもいかず保護者探しを余儀なくされたのだった。
和貴からしてみればほんとにトホホな話である。
またしても邪魔が入るとは・・
「まあまあ、ともかく私の勝ちだね。ごちそうさま」
「ちぇー」
「友香ちゃん?」
回想に耽っていたのに意外なセリフに現実に引き戻される。
振り向くと友香が三人からお菓子をせしめていた。
和貴との関係が進むかどうか、四人で賭けをしていたらしい。
「友香ちゃんまで何やってるの?」
「アハハ、いいでしょ。ちゃんと分けてあげるから。けどこうも予想通りだとちょっと怖いわ」
ひょっとして、三人があんなに和貴とのことを炊きつけてきたのはこのせいだったのだろうか。
「それもあるけどね。けど浜崎の気持ち考えたら可哀そうでさあ」
深雪があきれていると、極細ポッキーを手にした美波が顔をのぞかせる。