君と 7
「ちょっとぉ、源君うるさいよ。先生来ちゃうじゃって・・きゃーーっ!!」
「何なんだよそろってでかい声うおっ!」
次々と上がる悲鳴。
みんなの視線をたどると現実が待っていた。
パンツ一丁の同級生を押し倒して乗っかっている自分・・
捕らえられたままの両腕は和貴の抵抗の後を物語っている。
「違う違う違うっ!! そんなんじゃないって、ちがうから!」
「言い訳はどいてからにしろ」
「あっ、ああごめん」
そう言ってる間にも、騒ぎを聞きつけたギャラリーは着実に増えつつある。
「ねぇなに? どうしたの?」
「藤原が浜崎襲ったって」
「うそっ」
「てゆーか浜崎、いいカラダしすぎじゃない?」
「だから藤原・・・?」
「ちがーーう! これは偶然・・・」
どんな偶然でこんなカッコになるんだと胸中でつっこみながら、和貴はさっさと脱衣所に引き上げた。
何が悲しくてこんな大勢に下着姿をさらさねばならないのか。
「おいっ、浜崎逃げないでくれよ! 一緒に説明・・」
拓也が追いすがろうとすると、また野次馬にどよめきが走る。
「ほんとだ、やっぱり!」
「じゃ藤原植田さんじゃなくて浜崎を?」
「んなわけないだろ、僕はちゃんとっ」
「あの浜崎に力ずくで迫るなんて、どんだけ思いつめてたんだよ」
「藤原カワイソー」
「にしてもすげー度胸だな」
「だから違うって言ってるだろーー!」
拓也の絶叫のすぐ後に、教師のものらしい一喝が浴室の中まで響いてきた。
悪いな。藤原・・
ざわめきが徐々に収拾してゆく様子を耳にして、一人湯船につかりながら和貴はぽつりと拓也にわびた。
このセンセーショナルなニュースの前では、深雪との一件もかすんでしまうことだろう。
濡れた髪の先からぽたりと湯にしずくが落ちる。
彼がこうなることまで計算して拓也を挑発したかどうかは、
「ふー・・・」
定かではない。