君と 5
「お帰りぃ。待ってたよー!」
こちらB組6班の女子部屋。
深雪が大浴場から戻ると高杉、峰岸、高倉の三人が待ち受けていた。
何がどうでもそっとしておいてはくれないらしい。
友香も阻止は不可能と判断したのか、助けてくれそうな気配はない。
「あっねえもらったのってそれ?見せて見せて」
「うん。・・どうぞ」
「うわあカワイイ。この赤い石ってルビー? じゃないよね?」
「うん。ガーネットだって・・」
「あ、誕生石だ! 植田さん一月生まれだっけ?」
「うん。一月・・」
「やるじゃん浜崎! それじゃあつい盛り上がって?」
「う・・んぇ?」
流れに沿わない質問にのどが詰まる。今までみんな肯定するばかりだったのに。
「隠しても無駄だって! 連絡あった時間の割りに帰ってくるの遅かったよネ~」
「そうそう。誤解が解けてプレゼントまでもらって、結局どこまでいったの?」
こんなセリフどこかのドラマや漫画でよく聞いたことあるなぁ。とか深雪は部外者のような感想を抱いていた。
まんまガールズトークな話題は逆に新鮮だ。
「どこまでって・・・」
「私達だって心配してたんだから!それくらい聞かせてよ!」
「ね、ここから先は誰にも言わないし。」
伝家の宝刀『心配してたんだから』を持ち出され、深雪の心は一瞬にしてぐらついた。
友香をはじめ所在がわかるまで心配をかけていたことに変わりはない。
・・まあ、隠すこともないのだろう。
口に出すのは恥ずかしいけれど、恥ずべきことはしていないのだし・・
ただ当事者の和貴にだけは申し訳ない気もするが。
「結局・・勘違いだってわかって、そのあとはね・・・」
第一この三人が、口を割らずに見逃してくれるとも思えない。
そのあとを思い出しながら、深雪はゆっくりと唇を動かした。