君と 4
「いやだから違くて、僕はその」
「・・・・・」
「ただ僕はお前にもあやまらなきゃと思って・・・!」
無理やりなつなぎだったが、どうにか当初の目的を遂げる。
「僕が余計なことしたせいでせっかくの旅行が・・」
説教部屋から解放され、部屋に戻るとさすがはネット社会。
メールや電話ですでに騒動の内容は報道されており、深雪の口から発せられたほとんどを聞くことができた。
ラブホテルに連れ込まれると見えたのは勘違いで、しかもそれは彼女にプレゼントをするためだったというではないか。
話に自分の名前は挙がっておらず、深雪はうまく伏せておいてくれたようだったが、この横恋慕が現役高校生達にわからないわけがない。みんなの目が妙に同情的だったのが印象に残っている。
・・そう、横恋慕だ。ばかばかしい。
深雪が無理矢理つき合わされているなんて都合の良すぎる解釈だった。
僕さえ邪魔しなければどれだけ素敵な思い出になったことか。
「・・だから悪かった!本当にごめん。僕のせいでこんなことに・・!」
拓也は脇をしめ、起立の姿勢から頭を下げた。
もはや彼の中で和貴は、噂通りの血も涙もない暴力男ではなくなっていた。
ちゃんと付き合ってみればいい奴なのかもしれない。
今回のことだって、僕を悪者にすれば済むだけの話なのに誰にも口外せず、今も僕を一言も責めずに話を聞いてくれて・・
「バカかお前」
フッと和貴の口から失笑がもれる。
「?」
拓也は意味がわからず首を持ち上げた。
「俺のこと本気でいい奴とか思ってんの?」
今さっき部屋を出るときコンタクトを置いてきてしまったが、今度ははっきりわかった。
彼はこちらを見下ろし、勝ち誇った笑みを浮かべている。口元に赤い舌をのぞかせて。
なんだ、どうしてこの流れでその顔をするのだ?
実はいい奴なんだろ?
僕が引っかき回したのにもかかわらず怒らない、心の広い・・・
「そんなのお前のおかげでヤれたからに決まってんだろ」
――はっ?
一瞬で頭が真っ白になった。