君と 3
和貴が脱衣所に入ると先客は一人しかいなかった。
「浜崎・・・」
ぼさぼさの黒髪が何束か空に向かって浮いている。
藤原拓也だ。
先ほど自分と同じく呼び出され説教を食らっていた。
普段の素行が悪いせいで、和貴の方がさんざんしぼられたため、後から来た拓也のほうが早く解放されていたのだ。
名前を呼ばれたものの、和貴はそ知らぬ顔で横を素通りし、衣服を脱ぎ始める。
私情に巻き込んで悪かったと思わないでもないが、もともと彼が勝手に入り込んできた部分もある。
別に怒っているわけでもないがわざわざ謝る気にもなれなかった。
(なんだよ、無視するなよ)
「は、浜崎・・!」
ややムッとしながらもう一度呼びかけると、今度は目だけでこちらを振り返ってきた。
表情には振り向く前と何の変化もなく、胸中がまったく読み取れない。
いったい何を考えているのか。
怒っているなら文句の一つでも言ってくれた方が断然楽なのに・・・
こちらのことなど一切気にしてないらしく、和貴はそのまま無言でシャツをまくり上げ脱ぎ去った。
ズボンもひざ下に落ち、すらりと伸びた肢体があらわになる。
程よく厚く、引き締められた胸と腰。
男の自分さえ見とれてしまうような見事な裸体に目が釘付けになる。
自分となんと違うことか。
「・・・男の裸がそんなにめずらしいか? でなきゃソッチの趣味でも?」
ここまでガン見されては下着までとる気になれず、和貴は声をかけた。
男同士で気色悪い。
「ばっ、馬鹿言うな! 僕が好きなのはふつーに植田さんで・・あっ!」
馬鹿正直な答えに和貴は方眉をはね上げた。
だろうと思ってはいたが、それを直接俺に言うとは。素直すぎるにも程がある。