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with  作者: 絹ヶ谷明頼
修学旅行 編
41/48

君と 2

「ええーーーーっっ!?」

部屋中にいた全員一斉の大合唱が起こる。

「ラブホテルに連れて行かれると思ったぁ!!?」

「ち、ちょっ、声大きすぎだって・・!」

深雪は制止を促したが、誰一人聞き入れてくれない。

「それにそれは誤解で・・!」

格好のゴシップネタに浮かれるクラスメイトを前に必死に弁解を試みる。

高台寺を出てホテルの前で泣いてしまったこと、拓也が出てきて一緒に逃げてしまったこと。

けれど結局それは間違いだとわかって・・

 本当はこっそり友香だけに真相を打ち明けて謝りたかったのだが、例の三人娘がこんな面白そうな話、見逃すわけがない。

浜崎と二人、帰宅時間に遅れた上にさらに男子が一人絡んだ三角関係。

一体何が起きているのかと思うと楽しみでならず、深雪が戻ってくるのを今か今かと待っていたのだ。

しかし・・


「ま~・・、そりゃナイわよね」

「そうねぇ」

和貴が迎えに来てすべては自分の勘違いだったことがわかったくだりまで話すと、友香があきれたようなため息をもらす。

散々心配させておいて、彼氏からもらったアクセサリーをつけて帰ってきた子に何と言ってやろうかと考えていたのに。こんなことを言い出されては怒る気も失せてしまう。

同室の三人も一様にうなずいた。

なんだ、こんなつまらないオチだったとは・・。

「え、なんで?」

「なんでって・・・」

ホテル連れ込み事件をあっけなく否定した後で、友香は発言をやや後悔した。

「だって・・ねえ」

そうか。それがわかっていれば深雪だってこんな誤解はしなかったろう。

なんと説明したらよいか困っていると

「だって、お寺出た後だったんでしょ?」

「うん」

「時間、覚えてる?」

「確か・・七時半頃かなぁ」

変わりに美波が前に出てくれた。

言いにくいのなら私が言ってあげよう。

「いくらなんでも最初のエッチをそんな短時間で済ませようとする奴いないでしょ」

「へぇっ?」

深雪は唐突に飛び出した単語に目を丸くした。

エッチって・・、勿論ホテルに入るということはそういうことだったんだけれど・・・

「植田さん初めてだよね? 純情そうだし。」

「あ・・いや・・・」

改めて言われるとカーッと体温が上昇する。深雪は顔色で返事をしていた。


「・・ともかくそういうことよ。納得したらお風呂入っといで。文句は後でたっぷり言うから」

友香に追い立てられ、落ち着くまもなく部屋を出る。

三人はやや残念ではあったが友香が助け船をだしていることはわかったので、ひとまず目をつぶってやる。正直ことの顛末には物足りないが、まだ聞きたいことはたくさんある。風呂から戻ったらたっぷり質問してやろう。


 深雪と和貴が高台寺を出たのは19時39分。

それからの移動時間を考えれば実際自由に使えるのは30分程度だっただろう。

つまりあの場所であんな誤解ができるのは、それを知らない二人だけだったということだ。

無知は罪、とはよく言ったものである。

――――合掌。

 

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