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with  作者: 絹ヶ谷明頼
修学旅行 編
40/48

君と

 「もうとっとと風呂にでも入って寝ろ!」

「はい。・・・すみませんでした」

失礼します。と付け加えて深雪は部屋を出た。

袖をまくって時計を見ると、短針はすでに10時を回っている。


 門限をとっくに過ぎて宿へ帰ると、カンカンに怒った担任教師2名が出迎えてくれた。

B組里田とD組の春日だ。

和貴が一度友香を通して連絡をしていたから実際の心配はそれほどでもなさそうだったが、大幅に門限を破ってしまったのだ。怒られて当然だろう。

里田は普段の深雪を知っているから厳重注意位で済んだが、部屋から出てこられないところを見ると和貴はまだ怒られているらしい。

引率する教師の部屋は二つしかないため、同じ部屋で説教をされていたのだ。


 出てくるまで待とうかとしばし迷ったが、友香にも事情を説明しなければならないし心配もしているだろう。

後ろ髪をひかれる思いで部屋へ戻ろうとすると、入れ替わりに拓也が現れた。

自分が行き先もつげずいなくなったため、ずっと探してくれていたらしい。

友香に伝言を頼んだ時はすでに遅かったのだ。

こんなに他人を巻き込んで・・深雪はいたたまれない気持ちでいっぱいになった。それに・・

「藤原君・・」

彼にはもう一つ、謝らなければいけないことがある。


「ごめんなさい。私・・」

「・・言わないで!」

拓也は声をさえぎった。何を言われるかはわかっている。

「僕こそ・・泣かせたりしてごめん。そんなつもりじゃなかったんだけど・・」

あの時・・深雪が走り去っていって、手がかりは何もなかった。

どうにもならなくて、原田を頼りに友香の携帯番号を調べて連絡するくらいしか思いつかなかった。

その後もさんざん探して歩いたが・・・

同じ条件だったのに、僕には見つけられなかった。

自分なら泣かせないと思っていたのに、泣き止ませることさえできなかった。

「浜崎は・・」

「えっ?」

君のことがわかるなんてうらやましい。

「・・ううん、なんでもない。」

言いかけて、言葉を飲み込んだ。

「ほんとにごめん、ひっかきまわして。明日・・お茶でもおごるよ。植田さんと・・浜崎にも」

じゃあ、と短く声を残して拓也はドアをノックしそのまま部屋へ入る。


「・・ありがとう。」

見えなくなった背中に向かい、深雪はそっとつぶやいた。



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