ほんとう
上着のポケットに手を入れ、取り出したものを差し出される。
受け取ると中からシャラリと乾いた音が聞こえた。
手渡されたのはよく文房具屋などで見るボールペンサイズの小さな紙袋だった。白地に金の格子柄がプリントされている。
「前に世話になった人の工房がこっちにあって、時間があったら寄れって言われてて」
和貴がどこに行きたかったのか、いまいちよくわからない。
文房具屋さんに?そのときたまたまホテルを通りかかったというのだろうか?
シャリッ
袋を傾けると中から勢いよく何かがすべり出た。あわてて掌で受け止める。
「深雪には沢山迷惑かけたし、何かしたいと思ってた。だから一緒に行きたかったんだ」
あの場所に、ラブホテルがあることもその人から聞いて知っていた。
ホテルを目印に来いとまで言っていたのだ。
その横の、敷地をわずかに延長した部分が入口になっているからと。
「えっ?」
深雪は手の上を漫然と見つめた。
あたりは暗いので確かではないが、それはネックレスのように見えた。
銀色の鎖の先にペンダントトップが通っている。
・・しかしなんでネックレスが?
答えを求めて、和貴を見上げた。
「俺、工房に行くつもりしか頭になくて・・。言い訳に聞こえるかもしれないけど」
じっと、何かに耐えるようにこちらを見つめている。
「ホテルに入ると勘違いさせるなんて、思いもしなかったんだ」
「え?」
じゃあ・・
あれは?
「本当にごめん。普通に考えればわかるのに、俺勝手に浮かれてて・・」