表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
with  作者: 絹ヶ谷明頼
修学旅行 編
35/48

好き 4

固くて、平らで、なのにあたたかくて・・

(・・いいにおい。)

鼻をかすめる香りには覚えがある。

あんなことをしたのに。行き先なんか知らないのに、なんでここにいるのだ。

毎回毎回、私が危ない時にはいつも――


 「大丈夫?何かされてない?」

声の主の注意がそれたのがこれ幸い。二人はひぃっと逃げ出した。

暗がりで向けられた眼光の鋭さは只者ではない。自分らのようなヤン僧とはわけが違う。

 「ごめん、遅くて。俺・・」

抱きしめてくれるかと思ったのに、手は肩に置かれただけだった。

やっぱり、あんな風に他の男の子と置き去りにしたことを怒っているのだろうか。それとも彼を拒否したことで嫌われてしまったのだろうか。

でもそれならどうして助けになんか・・


「俺、いつも泣かせてばっかだな。」

「!泣いてない!泣いてないよ、私!」

とっさに顔を上げると・・、いつもの角度だ。見慣れた位置に瞳があった。

切れ長で、愁いのある澄んだ瞳。今は少しだけ寂しそうに揺れている。

「和貴くん・・。」

ごめんなさい、にありがとう。言わなければならないことも、聞きたいことも沢山あるのに言葉がすぐに出てこない。ただ、肩にある和貴の掌の暖かさが、たまらなく恋しかった。

「ごめん。俺・・、少し話してもいい?嫌になったらやめるから。」

深雪が肩を気にしたのに気づき、和貴は乗せていた手を下ろす。

(和貴君・・)

「うん・・」

――悲しい。


触れていて欲しかった。出来ることなら抱きしめて欲しかった。

嫌われたかもと不安になればなるほど、優しく抱きしめて欲しかった。

『そんなことないよ』といつものように笑って――

深雪は、今度こそ泣いてはならないと歯を食いしばった。だって、悪いのは自分だ。きちんと話をしなければいけなかったのに。

今だってまずは気持ちを伝えなければ。

そしてもし、それでも和貴とわかりあえなければそれは・・

「俺、ここに行きたかったんだ。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ