好き
一体どこへ行ったのだろう。藤原と何かあったにせよ、ことの発端は自分だ。
ただ当てもなく探すよりはと、和貴はしばし思案した。
深雪はようやく、ひとつひとつ思い出し始めていた。
そして黙々と歩いた。
向かえる場所は一つしかない。
泣ける場所を、彼女はこの付近で“そこ”しか知らなかった。
そこで二人で、この世のものと思えない美しさを目にした。
その美しさも彼といたからひときわだったに違いない。
そしてその後・・
(私・・・)
ビックリした。あんな看板を見せられて、一体何が起きてるのかと思った。
そんなこと考えたことも、考える時間もなかったが・・
手を差し出されて、つなぎたいと思った。
キスだって・・未遂だったが求められて何のためらいもなかった。でも、
(付き合うのって・・)
そういうことなの?
付き合ったらそういうことになっちゃうの?
そこまで考えなきゃ付き合ってはいけないのだろうか。
(でも・・私は)
好きなのだ。和貴が。
それだけじゃ、一緒にいてはいけないのだろうか?
和貴はそれでは満足してくれないのだろうか。
言葉を交わさずとも、いるだけで気持ちが通じるとさえ思っていたのに。
それは自分だけだったのか・・
『修学旅行だろうが!?お前みたいな不良には当たり前の事かもしれないけど、あり得ないだろ!?この流れでラブホテルなんて!!』
ふいに拓也の言葉が思い出されて、こらえていたはずの涙がこぼれてくる。
頬をこすりながら深雪は足を速めた。
つまり二つ目の問題の答えは初めから決まっていたのだ。
本当に申し訳ないが、今は和貴の事しか考えられない。