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with  作者: 絹ヶ谷明頼
修学旅行 編
30/48

ふたり 3

 和貴が初めて深雪を見たのは、高校の入学式の日だった。


式に遅刻したため放課後居残りで説教を受けた、その帰り。

B組の前を通りかかると、教室にひとりの少女がいた。

少女は腕をいっぱいに上へと伸ばし、黒板を拭いている。


入学式に日直当番を命じられることはそうない。

それなのに掃除をしているということは、彼女が自主的にそれを行っているのだろうことが想像できた。

肩で切りそろえられた、健康的な黒髪。

フレームのやや大きな眼鏡、ひざ丈のスカートにシンプルな白い靴下。

生真面目そのもの、一見平凡なその容姿から和貴はしばらく目をそらせなかった。


自分にない純粋さに惹きつけられていた事を彼が知るのはそれからもうしばらく先だった。

集会や、B組が体育で屋外授業をしている時。教室の窓際から、気付くと彼女の姿を探していた。

もっと見ていたかった。

近くに行きたかった。

そしてあの日――――


複数名に囲まれて怯える彼女を目にしたとき、彼はやっと悟ったのだ。

俺はこの子が好きだったんだと。

掃除をする姿さえ、美しいと見とれていたと――


考えるより先に体が動いていた。




けれどそれから、深雪を何度泣かせただろう。






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