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with  作者: 絹ヶ谷明頼
修学旅行 編
29/48

ふたり 2

「そんな・・」

「・・?」

「そんな、私・・」

「植田さん?」

深雪は静かに視界を閉ざした。考えるようにうつむいて、

そして――

「えっ、植田さん?」

音もなく身をひるがえす。


「待っ・・」

「お願い、一人にさせて!」

制止する腕をすり抜け、深雪は駈け出した。

これ以上何も聞きたくなかった。聞いたところで今はもう何も考えられない。

 和貴が連れて行った“あの場所”のこと。泣いた自分、彼を置いて逃げ出した自分。

そしてこんな自分を好きだと言ったクラスメイト――

一度に色んなことが押し寄せてきて、何一つまともに処理できなかった。


一体どうしてこんなことになっちゃったの?どうしたら良かったんだろう?


今度は自分が涙をこらえているのだと分かった。

何をどうしたら良いのか。

本当は答えではなく、泣く場所を探しているのだ。

「・・!」

うつむく表情のすべてを読み取ることはできなかったが、かたく引き結ばれた口元に、拓也は一瞬たじろいだ。

(そんな、僕はそんなつもりじゃ・・)

自分なら泣かさないと誓ったばかりなのに・・

そのわずかなためらいの隙に深雪は雑踏へ飛び込む。

「うえださん!!」

背中はすぐに見えなくなった。


 「そんな・・」

闇雲に走り追いかけてみたが、彼女の姿は影も形もない。

右も左もわからぬ街で、どこへ向かうのか見当もつかなかった。

けれどそれは彼女も同じだろう。

(・・どうしよう。どうしたら。こんな・・)

拓也は肩で息をしながら、次に取るべき行動を考えていた。


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