ふたり 2
「そんな・・」
「・・?」
「そんな、私・・」
「植田さん?」
深雪は静かに視界を閉ざした。考えるようにうつむいて、
そして――
「えっ、植田さん?」
音もなく身をひるがえす。
「待っ・・」
「お願い、一人にさせて!」
制止する腕をすり抜け、深雪は駈け出した。
これ以上何も聞きたくなかった。聞いたところで今はもう何も考えられない。
和貴が連れて行った“あの場所”のこと。泣いた自分、彼を置いて逃げ出した自分。
そしてこんな自分を好きだと言ったクラスメイト――
一度に色んなことが押し寄せてきて、何一つまともに処理できなかった。
一体どうしてこんなことになっちゃったの?どうしたら良かったんだろう?
今度は自分が涙をこらえているのだと分かった。
何をどうしたら良いのか。
本当は答えではなく、泣く場所を探しているのだ。
「・・!」
うつむく表情のすべてを読み取ることはできなかったが、かたく引き結ばれた口元に、拓也は一瞬たじろいだ。
(そんな、僕はそんなつもりじゃ・・)
自分なら泣かさないと誓ったばかりなのに・・
そのわずかなためらいの隙に深雪は雑踏へ飛び込む。
「うえださん!!」
背中はすぐに見えなくなった。
「そんな・・」
闇雲に走り追いかけてみたが、彼女の姿は影も形もない。
右も左もわからぬ街で、どこへ向かうのか見当もつかなかった。
けれどそれは彼女も同じだろう。
(・・どうしよう。どうしたら。こんな・・)
拓也は肩で息をしながら、次に取るべき行動を考えていた。