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俺を追放したパーティが解散していたので様子を見に行ったら解散理由が想像していたのと違っていた

作者: 央美音
掲載日:2026/02/16

「え、あいつらって解散してたの!?」


 俺は驚きのあまり、大声で冒険者ギルドの受付嬢のサラちゃんに詰め寄った。カウンター越しだったので、そこまで近づけなかったけどサラちゃんいい匂いしてたな。


「ちょ、こっちに近寄らないでください。ルーズさんが五年前に所属していたパーティは、四年前に解散しています。隣国のアルフにある冒険者ギルド所属のパーティでしたが、パーティ記録は世界共通ですので確かですよ」

「何で解散してんだ!? 俺を理不尽に追放しておいて、たった一年で解散してるって何でだ!?」


 剣士としてパーティに所属していた俺を、あいつらは大した理由もなく追放したんだ。

 五年経って、ベーチィアでの冒険者生活に慣れて、ようやく俺に心の余裕が出来た。

 前のパーティはどうしているのか気になったので、ギルドに問い合わせてみた。

 俺を追放した後、今も楽しくやってるんだろうなと思ってたら、既にパーティが解散されているって何だよ!

 俺の悲しみを、サラちゃんは分からないらしく冷めた目でこっちを見てきた。


「……理不尽な理由ですか。パーティ記録にはルーズさんの迷惑行為が続いて、パーティリーダーからの勧告を無視した結果の追放となっています。解散理由は書かれていませんので分かりませんね。既に解散しているパーティの記録が見れただけ良かったじゃないですか」


 既に解散してるパーティ記録で、俺の納得出来ない追放理由が分かるのなら、解散理由も分かる様にしてくれよ。


「いやいや、あんなの迷惑行為じゃないし! こっちで前のパーティを愚痴ってたらみんながひどいって同情してくれたし!」

「あー、ルーズさん。貴方からの以前いたパーティの状況が知りたいと言う問い合わせは既にすみましたので、いい加減どいてくれます? 解散理由が知りたければ、直接、アルフにある冒険者ギルドに問い合わせてください」


 サラちゃんの事務的笑顔を見て、俺はすごすごとカウンターから離れる。下手に粘ると、ギルド常駐の警備員に拘束されて罰則を受けるからだ。


「んー、解散理由を知るためにわざわざアルフに行くのもな」

「ルーズじゃん! なに悩んでるの? あんたらしくないね」

「おう、ミミアか」


 俺はアルフで所属していたパーティを追放された後、思い切って国を出た。

 その後、このベーチィアに流れ着いて新たなパーティに所属している。

 そのパーティメンバーの一人で、斥候のミミアだ。

 

「で、アルフがなんだって? 追放されたパーティの解散理由ってそんなに気になるもんなの?」


 ぷっくりと頬を膨らませて、俺の腕にしがみついてくるミミア。俺がさっき言ってたの、しっかり聞こえてたんじゃないか。

 俺が追放されたパーティの事を気にしているのが気に食わないのか?

 さっきまでの苛立ちが少しおさまる。

 斥候をしているだけに身軽な装備のミミア。十九才の小柄でスレンダーな体つきは彼女を年齢より幼く見せている。


「未練なのかね。なんかさ、俺を追放しといてたった一年でパーティ解散して冒険者辞めてるって分かるとさ、こう、モヤモヤするって言うかさ」

「あー、なるほど。でもさ、パーティが解散しただけで、別に冒険者は辞めてないかもじゃん」

「そうかもな。けど、アイツらがパーティを解散する理由がさっぱり分からん」

「じゃあ、モヤモヤ解消の為にアルフへ行ってみる?」

「え、ミミアもついてくる気か?」

「いいじゃん! どうせ、今は閑散期だし。リーダーはお嫁さんに付きっきりで暇じゃん」

「確かにそうだな」


 閑散期の今はモンスターや盗賊討伐の依頼が少ない。

 ダンジョンに潜る手もあるが、今のパーティリーダーであるゴズエルさんが、臨月の嫁さんと子供の世話をしているので深くは潜れない。  

 浅い場所は、俺達のレベルではあまり稼ぎにはならないので、潜る方が赤字になる。

 俺達パーティは、それなりに稼いでいるので、多少休んでも散財しなけりゃ金の心配は無い。


「なら、ゴズエルさんに許可もらって行ってみるかな」

「行こ行こ! リリーも誘って行こう!」


 リリーは、パーティメンバーの一人で魔術師をしている。

 年齢不詳で野暮ったいローブを着ているのに、妙に色っぽい体つきが隠れていない、ミミアとはタイプの違う美人だ。


「リリーか。誘ったところで来るだろうか?」

「絶対行くって言うと思うよ? なんか、アルフはいい男がたくさんいるって噂があるから、いつか行ってみたいって言ってた」

「いい男ねえ。それならここにいるだろうに」

「あはははは! ルーズはリリーの好みに当てはまって無いからダメだと思う」


 ミミアにマジなダメ出しをされて、俺は少しへこむ。

 俺は何故かモテない。二十四才で人並み以上の剣士としての腕や顔だってそれなりに整っているのにモテない。

 ミミアだって人懐っこいが、俺は男として見られていない。せいぜい甘えさせてくれる年の離れた兄貴って感じだ。

 盾役をやっている戦士のゴズエルさんは、三十五才の男盛りでコワモテモリモリ筋肉なのに可愛い嫁さんがいる。子供だって今度三人目が生まれる。何でだ。


「じゃあ、リリーの男漁りも兼ねて行ってみるか。ミミアにはアルフで美味いもん食べさせてやるからな」

「やった! ……流石に他のみんなは誘えないよね」


 残りのメンバーは四人いるのだが、まとまった休みが出来ると四人とも自室に引きこもって色々やっている。

 多分、誘っても来ないだろうな。


「一応、声は掛けておくか。よし、まず最初はリリーを誘いに行くか!」

「おー! 」




 結局、ミミアとリリーの二人だけを連れてやって来た隣国アルフ。

 俺がいたパーティは、王都にある冒険者ギルドを中心に活動していたのでベーチィアの国境から王都に数日かけてやって来た。

 俺は今、ミミアとリリーとは別行動中だ。

 流石に、ギルドまでついてきてもらう気はなかった。

 早速ギルドの受付に問い合わせをしようと近づくと、懐かしい声が俺に話しかけてきた。


「ルーズじゃないか。久しぶりだな、ベーチィアで随分と活躍していると耳にしているぞ」

「アークか」


 声の方に顔を向けると、少し老けた元パーティリーダーで斥候のアークがいた。

 俺が追放された時、アークは三十手前くらいだったよな。五年でここまで老けるか?


「五年ぶり、アーク、少し老けたな?」

「そりゃ、俺も三十過ぎたしな。外でルーズの姿を見かけたって聞いて、ギルドに来てみたが正解だったな。それで、どうしたんだ? お前さん一人か? 今のパーティメンバーは一緒じゃ無いのか?」

「二人だけ一緒に来てるが、ギルドに来たのは俺だけだ。ここのギルドに用があったんだがちょうどいい。なあ、何で俺を追放してからたった一年で解散したんだ? 解散した後も冒険者やってるのか? メンバーの誰かが死んだとか無いよな? 怪我して引退したとかか? みんなは無事なのか? あんないい子達がひどい目にあったとか無いよな?」


 俺は、あいつらが好きだった。

 アークの事は気に食わなかったが、他のメンバーはみんなが可愛い子達だった。

 よく集まっている姿は俺の荒んだ心を和ませてくれたし、俺の手助けは不要とばかりに自分の力で解決する姿勢が好ましかった。


「あー、いや、みんな元気にしているぞ。冒険者は俺だけになったが、カールとリサは結婚してるし、アイルとフィーはそれぞれ別の場所で活躍している。サリアも、まあ元気だ」

「そ、そうか。元気なら、うん、それで」


 アルフに来た理由の大半が、ものの数分で呆気なく終わった。

 何だ、事情は分からないがアーク以外は冒険者を辞めたのか。サリアなんて生涯冒険者で食べていくって息巻いてたのにな。

 あいつらみんながいい冒険者になれてたと思うのに、残念でならない。


「ちょっと話そうか。きちんとこっちの状況言っとかないとやばいからな」


 アークがギルドに併設されている食堂に足を向ける。

 アークのやばいという言葉に、俺は少し冷静になる。アークのやばいは、失敗すれば死に繋がるという時くらいしか聞いた事が無いからだ。


「それで、アークがやばいって言う程の話って何だ?」


 食堂で席を確保して、二人分の軽食と酒を頼んだ。

 昔と違って少し人が少ない気がする。

 こちらの国も今は閑散期だろうが、それにしても少ない。


「こっちの国ではな。ルーズ、お前さんを追放してしばらくした後、王都を中心に流行り病のせいで多数の死者が出た」

「はっ!? ……そんな事、今までベーチィアでは聞かなかったぞ?」


 俺は少し声をひそめながらアークに聞いた。


「そりゃこの国の弱みになるし、周辺諸国のお偉いさんくらいは把握していると思うが、混乱を避ける為に……五年経った今も公表してないんだろ。八ヶ月と少しかかって治療法が確立して流行り病は収まった。被害は、国の中で収まったのが奇跡ってくらい出ている」


 だから、ギルドに人が少ないのか?

 そういえば、王都内も閑散としていたような?


「流行り病って弱みになるのか?」

「この国が発生原因だと賠償とかされる場合もあるぞ。払うかどうかは知らんがね。あと、王侯貴族が最も被害に遭ったんだ、そこをつけ込まれるのはまずいだろ」

「あー、偉い奴が軒並みいなくなったって事か。これ、俺が知ってていいのか?」

「これ、前置きだからな。パーティの解散理由の一つが、カールの家の当主と跡取りと次男が死亡したからだ」

「はあ!? カール貴族だったのかよ!」

「でかい声出すな」

「あ、すまん」


 俺の叫びに、アークがしかめ面をしている。

 だが、叫んでも仕方ないと思う。だってあの俺と同じ剣士のカールが貴族だったなんて、しかも話の内容的にカールが当主してるって事だろ? 

 ならカールと結婚した精霊使いのリサも貴族だったのか?

 二人は俺が会った時から付き合ってたし、お似合いだった。

 貴族は貴族としか結婚出来ないって聞いたことがあるし。 


「カールも驚いてたぞ。貴族籍に名前は残していたが、跡取りの長男が当主になれば、貴族籍から除籍されるはずだったからな」

「それが、継げるやつ含めて全滅か。なあ、本当に流行り病だったのか?」


 カール、面倒事に巻き込まれたとかないのか?


「確かだ。カールの家は流行り始めの頃、病に罹っていたから残念な事に、治療法が見つかる前にな。伯爵家で、全員王都で働いてたから感染も早かった」

「そうか、リサも貴族だったのか?」

「ああ、カールとリサは元々幼馴染でな。リサは貴族に嫁げる可能性があったが、カールを選んだ。二人とも、将来は平民になるからって冒険者になったんだ。コネの無い貴族が稼げるって言ったら冒険者くらいだしな」


 やっぱり二人は貴族だったのか。

 けど、コネが無い貴族?


「貴族なのにコネが無い?」

「たいていのお堅い職業は世襲制だからな。出来のいい貴族でも、新参者が働くとなると不利なんだ」

「詳しいんだな」

「俺もその世襲制ってやつで食ってるからな」

「え、冒険者じゃないのか?」

「俺は兼任。本業はギルド職員だし」

「はあ!?」

「声でかいって」

「いや、だってさ、普通驚くだろ」


 アークがギルド職員なんて初耳だぞ!?

 だって俺達と結構命張ってたよな。むしろパーティの中で断トツ活躍していたよな。てかギルド職員って世襲制だったのか。

 

「まあ、世襲制でギルドにいるのはほんの一部だけだ。全ての職員では無いからな」

「てか、何で俺達のパーティリーダーやってたんだ?」

「分かるだろ? 世間知らずの貴族だけが冒険者やる危険性ってやつ。それに、将来は平民でも今は貴族だから慣らさないと生活が難しいだろ」


 まあ、平民だけのパーティに比べたら、日々の暮らしなんて細かい事は分からないだろうし、下手したら死ぬ可能性は高いのか?


「いや、待て。あんたと俺以外貴族だったのか?」

「いや、俺も一応形だけは貴族。平民なのはお前さんだけだな」

「形だけ貴族ってなんだ?」

「細かい事気にするな。とりあえず純粋な貴族のみでパーティ組むのは危ないって事で、冒険者と兼任しているギルド職員の俺とパーティを探していた剣士のルーズが選ばれた訳だ」

「まじかよ。ギルドから紹介された時、もう既にみんな集まってたよな。じゃあ、俺以外はアークが兼任だって知ってたのか?」

「お前さん以外も俺が兼任だって事は知らない。教えていないし、多分、今も知らないだろ。みんなには、面倒事に巻き込まれたくなければ貴族なのは隠せとは言ったがな。貴族の冒険者には、俺みたいなのがリーダーやって、冒険者として生活できる様に補助する仕組みがギルドにはあるって訳だ」

「アークみたいな兼任って他にもいるのか」

「さっきの話で検討はつくだろ」


 まあ、分かる。俺達のパーティ結成時、似た様な雰囲気のパーティがそこそこいたな。


「貴族だと隠させていたのは、お前さんにあいつらを貴族と意識させない為だ」

「マジか。けど、確かに冒険者になりたてだった俺なら、年下相手でもビクビクし通しで、下手したら死んでたかもな」

「そういうのを避けるのが俺の仕事だよ」


 アーク、苦労してたんだな。てか、流行り病が収まった今も大変なんだろうな。妙に老けて見えた理由が分かった。


「じゃあ、回復士のアイルと薬師のフィー、守護騎士のサリアも冒険者を辞めて今は貴族をしているのか?」


 カールみたいに、当主になっているのか。リサみたいに、貴族の当主に嫁いでいるのか。

 他の二人はともかく、サリアが冒険者辞めるってよっぽどの事だけどな。


「カール以外の家は、当主と跡取りが無事だった。領地が王都から離れていたし、王都にいなかったからな。サリアの家は、王都だが無事なのは確かだな」


 カール以外の家族は無事だったのか。 

 じゃあ、カールだけが当主になったのか。

 カールは今、相当な苦労をしてるのか?

 いや、リサが嫁になったんだ、苦しい時があってもきっと幸せに決まっている。


「二人は家へ戻らずにアイルは教会、フィーは薬師会にいる。貴族籍にはまだ名前を残してるけどな」

「そうか、何でアイルとフィーは冒険者を辞めて教会と薬師会にいるんだ?」

「元々アイルは将来、司祭として教会に入る為の修行だったし、フィーは薬師会に所属している師匠の言いつけで冒険者になったんだ。薬師会で働く前に薬の材料の生態も知っておくべきだってな」

「じゃあ、アイルとフィーは元々冒険者で食っていく訳じゃなかったのか!?」

「そうだ。……お前さんの追放と流行り病が無けりゃ、円満にパーティを解散出来てたんだがな」

「え!? いや、そうか、アイルとフィーか」

「そうだ。五年経ったら、教会と薬師会に戻る為に二人は冒険者を辞める。残りは別のパーティと合流させて、頃合いを見て俺も脱退するはずだった」

「そっか、なら、ずっとあのパーティでやっていけた訳じゃなかったのか」

「そうなる。俺みたいなのがいる理由も分かるだろ? 別の道を行く為の修行で来ている奴らの保護も仕事なんだ。本当に、流行り病が想定外すぎた」


 俺が追放されず、流行り病が無ければ、冒険者を辞めるアイルとフィーの門出を祝えてたのか。

 本当に、何で追放されなきゃいけなかったんだ。


「あのさ、サリアはどうしてるんだ? 家族が無事なら、リサみたいにどこぞの貴族の嫁になったとかか?」

「ああ、サリアは元気だぞ」


 サリアは元気。そればっかだな。


「何でサリアの事になると言い淀んでるんだ?」

「まあ、いずれ分かる事だしな。サリアな、一番凄い事になっていてな。……今、サリアは王女やってる」

「ぶっ!!!」

「きったな!」


 俺が酒を飲んでる時に言ったアークが悪い。吹き出すのも無理はないだろ。

 だってあのサリアが王女ってどういう事だよ!?


「何でそうなった!?」

「サリアはな、国王が侍女に手をつけた時の子供で、隠し子ってやつだ」

「隠し子? 何でサリアを隠さないといけないんだ!?」

「サリアの母親は、侯爵家から王城へ勤めに来ていた女性だったが、この国じゃ側室は認められていない。サリアを身ごもったと知った国王が侯爵家当主と相談した上で、事情を知っていて跡継ぎが既にいる貴族の後妻にしたんだ」

「うっそだろ。サリアにそんな出生の秘密があったなんて。俺以外はサリアが隠し子って知ってたのか?」

「いいや、サリアが隠し子ってのは本当に誰も知らなかった。ギルド長も知らなかったみたいでな、知った時は驚いて腰抜かしてたぞ」

「え、あの、何があっても絶対に動じないって顔してるギルド長が腰抜かしたのか」

「ただ、国王には隠し子がいるって噂はあったんだよ。流行り病が無けりゃ、今もサリアがそうだって知らないままだったな」

「じゃあ、サリア本人しか知らなかったんだ?」

「そういう事だな」

「一応、国王の娘だろ。よく冒険者になるのを許されたな」

「冒険者になるのは、サリアの強い希望だったみたいでな。母親と養父は渋ったらしいが、政治的価値は隠し子には無いって説得したそうだ。嫁入りも下手に選べんとな。国王側からは何の反応も無かったそうだ」


 声に出すのは危険だから言えない。だが国王、女性に手を出しておいて他の男に丸投げして娘を放置とか酷すぎないか? 


「流行り病が王族にも被害を出してな。ぶっちゃけ数合わせの為に、サリアが王女になった訳だ」

「数合わせ?」

「今回の件で王家に被害はなかったが、この国に継承権を持つ人物が王太子しかいない状態になった」

「それはまずい事なのか? ほら、国王の座を争って戦が起きるとか無いし」

「少ないのもまた別の問題が起きるんだよ」


 よく分からんな。何でわざわざ放置してたサリアを王女にするんだ?


「要は、サリアに子供を産ませて王族の数を増やしたいって事だ」

「引くわ」

「仕方がない。王家は国王と王妃、王太子と王太子妃、あと王女が一人。王妃と王太子妃に継承権は無い。継承権を持つ王族だって、王弟二人とその息子が一人ずつだった。王女は、他国へ嫁いで子供がいるのに対して、王太子にはまだ子供がいない。今の状況で王太子に何かあってみろ、他国に嫁いだ王女の子供を国王にと担ぎ上げる奴らの出現を避けたいってのが国の考えだ」

「数が少ないのに何で王女は他国に嫁いだんだ?」

「詳しくは俺も知らん。他国の王子が王女を手に入れる為に色々やったとか信憑性の低い噂ならいくらでもある」

「いくら王女の子供だからって、他国で生まれた子供をアルフの国王に出来るのか?」

「歴史的にありえるんだよ。よその国での話だが、そのせいで内乱が起きたって話がな」

「何それ怖いな。そんな状況で王女になったサリアは大丈夫なのか?」


 敵は全て殲滅のサリアが大人しく王女をしている想像がつかない。


「元気に盾と槍を振り回しているんじゃないか? 別れの挨拶の時に、王女になろうが守護騎士として生きるのは変わらないとか言ってたからな。王女としての教育が終われば、婚約者もその内発表されるだろう」

「そっか」

「色々ごたついたが、サリアが最初に、次にカールとリサが冒険者を辞めた。期間は残っていたが、どこも人手不足だ。アイルは教会に、フィーは薬師会にいる師匠に許可を貰って冒険者を辞めた。俺の役目も終わって、そのままパーティは解散。俺は今、新たなパーティで斥候をしている」


 もう俺の頭はいっぱいいっぱいだった。

 なんか、俺が思っていた解散理由じゃ無くてよかったけどさ。流行り病で、みんなが犠牲にならずに元気だったのは本当によかったよ。

 でも、なんか、こう、怒涛の展開すぎて頭が破裂しそうな感じがする。


「で、ここからがルーズに警告する話な」

「な、何だ」


 俺に警告って何だ?   

 ……まじで何?


「当主と跡継ぎ、近親で当主になれる人間がいない家に連れ戻された、貴族籍に名前のある冒険者はカールだけじゃないんだ」

「他にもいたのかよ」

「そもそもここは貴族が冒険者になる時に一番使われている場所だからな。それなりにいたんだ」

「ここじゃ、俺の方が世間知らずだったんだな」

「そう言うな。平民の冒険者で、この事を知っているのは中堅くらいからだし」

「そう聞かされてもな」

「で、そういった貴族の家は、当主とその身内が冒険者時代のメンバーに会うのを酷く嫌っているし、阻止している」

「野蛮な連中とはつるむなって事か?」

「それもあるが、当主になった元仲間を襲った冒険者がいてな」

「え、何でだ? 金目当てか?」

「そいつも貴族だった。ただしそいつの家は、当主は死んだが跡継ぎの長男は無事だったので、そのまま長男が当主になった。長男には子供もいたし、補佐役の次男がいるから三男だったそいつはこの間除籍されたんだ」

「あー、つまりは嫉妬か? 仲間は貴族、それも当主になって安定した生活を手に入れたのに、自分は平民になって冒険者として安定しない生活をしなけりゃいけないからって」 

「大体あってるな。あと既に除籍されていて貴族に戻れなかった奴とか」

「除籍されたら貴族に戻れないのか」

「証明出来ないからな。親兄弟が証人ならまだ戻れたかもしれんが、どちらもいない場合は無理だな。直系なのに跡を継げず、傍流が跡を継いだ話もある」

「えぐい話ばかりだが、何でそれが俺への警告なんだ? 俺は生まれから平民だし、もうこの国で冒険者やる気はないぞ」

「ルーズ、何でパーティから追放されたか忘れたのか?」

「いや、俺は追放されたの、いまだに納得出来てないんだが」

「納得出来ないとかマジかよ。あのな、みんなにやっていた事思い出してみろ。あいつらが貴族だって事も意識してな?」

「そういわれると、確かに貴族に対して気軽過ぎたか? けど知らなかったんだし」

「パーティを組んだ時、お前さんは十六で、他のみんなは十四だったよな」

「そうそう、俺も初々しい冒険者だったが、あいつらはもっと初々しくて愛らしかったよな」

「最初の頃は上手く行ってたよな。お前さんは、俺含めてみんなに優しく、真面目な態度だった」

「まあ、田舎育ちだったのが俺だけで、剣士としても未熟だったしな。よくアークには助けてもらってたし、あいつらとは助け合うのは当然だろ?」

「でもな、お前さんが十九の時に、追放する半年前からあった、過剰な接触や言動、過激な下ネタは、流石に見過ごせないんだわ」

「いやいやいやいやいや、過剰な接触って、酒に酔った時アーク以外に抱きついた事はあっても胸や尻を触った訳じゃないし! 言動だって変な事は言ってない! 下ネタだって、男なら普通に言うだろ? 流石に女子の前ではエグいのは避けてたし」


 俺の言葉に盛大なため息を吐くアーク。  

 え、何だよ?


「結構俺に苦情が来てたんだよ。特にフィーから」

「え、何でフィー?」

「ルーズ、お前さん、あいつの事、女だと勘違いしてただろう」

「は? フィーは女子だろ?」

「男だ」

「ん?」

「フィーは、お、と、こ」

「んんん?」


 アークがおかしな事を言ってるな。あの天使である美少女フィーが男とか言ってる。


「もう、凄かったんだぞ。お前さんに女扱いされるのが嫌だ。髪だって、短いのより長くした方が可愛いとか事あるごとに言ってくる。自分は男だって言ってるのに本気にしてないし、頭ぽんぽんされながらにやつかれるのが気持ち悪い。地声なのに、声はもうちょっと高い方がもっと可愛いのにとか言ってくる。移動中はすぐ隣に来るし、少しこけそうになったからって肩を抱くし、目が合うと下手くそなウインクをされる。戦闘後に、怪我は無いかと言いながら全身を舐める様ないやらしい目で見てくる。食事の時、好物が出た時は必ずと言っていいほど横取りされる。注意しても俺は分かっているからって態度で全くこちらの話を聞いていないってさ」


 あー、確かに何度か僕は男ですとか言ってたな。僕っ子も可愛いなとしか思ってなかった。

 男装してるから髪を短くしたり、わざと声を低くしていると思っていた。

 こけそうになった時、支えてやるのは悪い事か?

 俺、下手なウインクなんてしてたのか?

 怪我をしてないか確認するのは、フィーだけにしてた訳じゃない。

 好物の横取りはまじで分からん。そんな事してたか?

 思わず無言になった俺を、アークは真面目な顔して見つめてくる。

 え、てか、まじでフィーは男なのか!?


「まじか、え、ほんとに? おとこ?」

「ちゃんと男。てか裸見た事なかったのかよ」

「いや、見張りとか買って出てたし、裸を見たいなんて思った事ないし、フィーの自室とか行った事ないし、宿屋や野宿でも寝る時は男女関係なく雑魚寝だったじゃん」


 そういえば、追放前くらいから雑魚寝の時は、アーク以外にいつも距離を取られて寝てたな、俺。

 え、俺はあいつらに避けられてた?


「え、俺、全員に気持ち悪がられてた?」

「ああ、全員から多数の苦情が来てたな。苦情なんて、パーティ組んでりゃよくある事だが。男女関係なく気持ち悪いって苦情が来るのは初めてだったぞ」

「え、アークも? 俺の事が気持ち悪いって思ってたのか?」

「まあ、少し。あいつらから色々聞いてたし、俺からお前さんに何度も注意していたけど、全然言うこと聞かなかったよな。注意から勧告になっても無視だし。もう、何度拳で解決しようかって思っていた」

「うえー、え、何で拳で分からせなかったんだ?」

「意味がない。確執が生まれる。結局追放。前に理由は違うがやってみたら、すっげー揉めに揉めたからこりたんだよ」


 俺の時にやられてたら、そうはなってないとは言い切れないな。

 アーク、苦労してるな、俺のせいだけど。


「だから、分かるだろ? あいつらみんな差はあるが、お前さんより遥かに高い地位を得ている。特に、サリアはこの国で重要人物になっている。今、お前さんはあいつらに近づくなんて考えないだろうが、向こうはお前さんがここにいるって知ったら報復の一つや二つやりそうなんだ」

「そこまでの事してた?」

「してた。やられた方は忘れないぞ」

「殺されるかも?」

「本人達はそこまでやらないだろうが、周りがな、やるかもしれん。ここで会ったのが俺で、良かったと思えよ」

「もうベーチィアに帰る」

「そうしろ、余程の事がない限りこっちには来ない方がいいぞ。ちなみに、お前さんの家族は流行り病で死んだのはいないし、今も元気に暮らしてるから心配するな」


 俺、家族の事すっかり忘れてたわ。

 そっか、元気に暮らしてるのならいいか。


「じゃあ、今から二人と合流してベーチィアに帰るよ」

「早めに王都から離れろよ」

「そうする」


 もしかして、アークは俺へ警告する為にわざわざ会いに来てくれたのか?

 追放した俺の家族の事も知ってたし、薄情な俺に近況まで教えてくれた。

 ありがとう、アーク。元気でな。

 俺は、二人分の軽食と酒の代金を置いて席を立ち、アークに深々と礼をしてからギルドを立ち去った。




 ミミアとリリーに合流して、さっさと王都から出てきてベーチィアとの国境へ向かっている。

 二人は盛大にごねたが拝み倒して泊まるはずだった宿屋を引き払った。

 ミミアが、ベーチィアにいるみんなへ土産を大量購入してたので全額オレが負担した。 

 リリーが、私好みのいい男はいなかったと落胆していた。リリーの好みってどんな男なんだ。


「で、ルーズのモヤモヤは消えたの?」


 野宿の最中にミミアが聞いてきたので、ついアークとの会話を話してしまった。それだけ動揺してたんだ。


「あー、やっぱり酷かったんだね」

「順当に恨まれてて酒が美味い」


 ミミアは呆れてた顔をしているし、リリーは酒瓶片手に笑っている。


「え、二人は、俺の方がひどいって分かってた訳?」


 俺に同情してたんじゃなくて、前のパーティメンバーに同情してたのかよ。

 俺の疑問に二人は揃って頷いた。


「あたし達だけじゃなくて、みんな分かってたよ。まあ、あたしがやられてたら金的十発くらいしてる」

「私はどうしよっかなあ〜」

「ひっ」


 ミミアとリリーの視線に、俺は思わず股間を手で隠す。


「てか、アルフに流行り病が蔓延してたとか知らなかった」

「そうね、私が会うはずだったいい男は、そのせいで儚く散ったのかしら」

「流行り病の事は俺だって知らなかった。悪かったよ」

「もう収まって数年経ってるし、悩んでたルーズをあたしが誘ったんだから謝らないでよ」

「そうね、いい男がいなかったのは残念だけど、アルフの王都はほどほどに楽しめたわ」


 けど、そもそもミミアが誘ってくれたのは、解散理由を知りたがってた俺を気にしてくれたからだよな。


「ミミアは、何で俺が悩んでたのを気にしてたんだ?」

「え、いきなり何の話?」

「俺を追放したパーティの解散理由ってそんなに気になるものなのかってさ」

「あーあれか、そりゃ追放されて五年経ってるパーティを懐かしがられてたらむかつかない? それに、あたし達のパーティに加入する前から思い出話がうざかったもん」

「分かるー! 今カノより元カノがいいとかやだよねー!」

「ちょっとその例えは分からないかも」


 俺にも分からない例えだな。

 そうか。ミミアは、俺が前のパーティの事をいつまでも気にしてたのがうざかったのか。


「愚痴の内容もそりゃ追放されるなって思ってたし、キモってなったの何回もあるよ」

「酷い話ねって言ったら、何故か自分がされた仕打ちに同情してるって勘違いしてたでしょ? 訂正するのも面倒くさいからそのままにしてたわ」

「酷いよなってメンバー全員一致してた」

「リーダーは、加入させるか悩みすぎて少し筋肉が痩せたわ」

「そんなんで、何で、俺、今のパーティに加入出来たんだ?」

「ギルドにある、評価が書いてあるのに本人は見れない個人記録に、ルーズを追放したパーティリーダーが腕はいいとか結構細かく書いてたよね」

「あれは、中途加入希望の冒険者をパーティに入れるか決める為にある記録だからそれでいいのよ。ルーズの悪いところもたくさん書かれていたけれど、自分には無理だったが正しく導けば良い剣士になると書いてあったのが印象に残ったわ」

「アーク、ぐすっ、ううぅー」

「ほら、泣かない泣かない」

「泣き虫〜」

 

 俺は泣きに泣いた。アークが、剣士としての俺を認めてくれていた事を知ったからだ。

 俺は、アークの事が気に入らなかった。

 いつもあいつらが頼っていたのはアークだったから。あれは、俺への苦情を言ってる時もあったんだろうな。

 それもそうだ。俺がやっていたのはあいつらを不快にさせる事だけだった。

 いくら戦闘が上手くなっても、他の部分がダメ過ぎたんだ。

 

「まあ、あたし達のパーティでは、前のパーティでやってた事してないし」

「やられたとしても、みんな、倍以上にしてやり返すわね」

「だって、お前らあいつらより可愛くないし」

「はっ? ぶっ飛ばすぞこの野郎」


 ミミアが躊躇なく俺の顔面を殴りにきた。普通に避けたけど、ミミアの口から盛大な舌打ちが聞こえた。


「だってだって、あいつらマジで可愛かったんだぜ。二人だって会ったら絶対可愛がってた」

「ルーズの可愛がりは異常だと自覚なさい。色々酷い内容の中で、特に酔っ払って抱きつくのもだけど、下ネタは可愛い男の子にする話じゃ無いわよ」


 俺がやってた事をリリーに批判される。そっか、男にも下ネタはダメなのか。


「うん、下ネタはもう封印する」

「そうしなよ。ルーズ、酒場とかで大声で下ネタを話すからモテないんだし」

 

 ミミアから衝撃的な話を聞いた。


「え、まじ?」

「まじ。ルーズの事いいなって思う女の人って結構いたけどさ、酔っ払って下ネタ連発するの見て、全員がやっぱり無しってなってる」

「そうそう、男には大層受けてるけど、女には刺激が強い話とかあったわよね」

「ギルドにルーズを嫌ってる人いるよね。サラとか」

「流石に、ルーズのせいでパーティごと嫌われているとかは無いから安心なさい」


 リリーからも言われて、俺はまた泣きそうになった。

 てか、サラちゃん俺の事嫌ってたのか。思い返してみると、確かにサラちゃんの態度は嫌われてるかもって思えるもんばっかだわ。

 下ネタってそんなダメだったのか。結構受けてたけど、確かに男しかいなかったな。

 あれ、そもそも前のパーティでみんなへの態度を変えたり、下ネタとか言い出したのってなんでだっけ?

 十九の時の俺、何があったんだ?


「うう、俺、頑張って女に受けそうな話をする」 

「女向けって、ルーズに出来るのかしら?」

「一朝一夕には出来ないだろうけどさ、頑張ろう? あたし、応援するよ!」


 ミミアの優しさが身に染みる。


「ありがとな、俺、頑張ってゴズエルさんみたいになって可愛い嫁さん貰う!」

「いや、無理でしょ」

「高望み〜」

「何でだよ!」

「だって、ルーズじゃリーダーの足元にも及ばないくらい男として差がありすぎるじゃん?」

「そうね、私の好みじゃ無いけど、あの男はとてつもなくいい男よ」

「でしょでしょ!」 

「ふふふふふ」

 

 二人の言う通りだ。コワモテモリモリ筋肉のゴズエルさんだが、老若男女だけじゃ無く動物にもモテる。

 何でだっていつも思ってたけどさ、本当は分かっていた。ゴズエルさんは常に真摯で紳士なのだ。

 他のメンバーだって曲者揃いとか言われてるのに、ゴスエルさんの手腕で鍛え上げられた団結力は他のパーティに引けを取らないどころか憧れのパーティとして新人に人気だ。

  

「俺、このパーティに加入出来て幸せだぁ」

「そうでしょ! リーダーに感謝しなよ」

「ルーズって運はいいと思うわよ」


 二人と一緒に笑っていると、ふと前のパーティメンバーで、こんな風に笑っていたのはいつまでだったか思い出せなかった。

 俺が追放される頃には、あいつらは苦笑いか無表情だった。

 俺、みんなの事が好きだった。

 だけど、接し方を盛大に間違えていたんだな。

 リーダーであるアークの注意も碌に聞いてなかった。俺よりあいつらに頼りにされてるってバカな嫉妬をしてた。

 天使とか言って可愛がっていたけど、フィー自身の言葉を無視していた。

 カールにだって、同じ剣士で年が二つ上ってだけで上から目線で指示してたな。

 アイルには教会の闇とか言って、低俗な噂を聞かせていたな。

 リサとサリアは、碌に目を合わせてくれなくなっていた。

 俺、ダメな男だな。

 今、こうしているのが不思議なくらいダメな男じゃん。

 

「ルーズ? どうしたの?」


 ミミアが、いつの間にか黙り込んでいた俺に気づいて声をかけてくれた。


「いや、ほんと、ダメ男だなって」

「え、いきなりどうしたのさ。気持ち悪い」

「ひどっ!」

「まあまあ、今やっと過去にしでかした自分の過ちを自覚出来た最低野郎なのよ。そっとしとくのがいい女のやる事よ」

「そうなの?」


 リリーの言葉に、ミミアが俺を見ながら首を傾げて聞いてくる。


「いや、前半は確かにそうなんだが、後半は俺も知らん」

「だから、ルーズはダメなのよ」

「まあ、ルーズはダメだね」

「ダメダメ言うなよ。へこむぞ」

「へこんでいいよ」

「そうね。へこんだ後に、また盛り返せる様に頑張りなさいな」

「お前ら……いい奴らだな」

「そりゃあ、あたしはリーダーに一から鍛えられてるし」

「私はルーズと同じ中途加入だけど、年季が違うからね」

「そういえばリリーって、いや、何でも無いですすみませんでした」


 リリーに年齢を聞こうとしてたが、リリーからの鋭い殺気にすぐにやめた。

 そういえば、リリーに年齢関係の話を振るのはパーティ内のタブーだった。

 ただし、ゴズエルさん家族は除く。


「帰ったらさ、俺、ちょっと鍛え直すわ」

「え、何を?」

「そりゃあ、剣の腕と心?」

「何でちゃんと言い切らないのよ」

「そこは剣の腕と心を鍛え直すぞって言い切るとこだよね」

「いやー、俺にもまだ分かってない感じ?」

「そういうとこルーズらしいね」

「帰ったらリーダーに、私達と話した内容を聞いてもらうといいわ。リーダーの助言って、すっごく効くから」


 リリーの言葉に、ミミアが即座に食いつく。


「確かに、斥候のやり方とかで悩んでた時、リーダーと話すだけで自分のやり方を最適化した事があった!」

「そうなんだ。そういえば俺、あまりゴズエルさんとまともに話した事がないかも」

「は、マジで!?」

「それは、人生損してるわね」

「そこまで言うか」


 なんて言うか、俺はリーダーって役割の人間に、苦手意識があった。

 仕事中は呼び名を統一しているから、リーダー呼びだけど、それ以外ではゴズエルさんと呼んでいる。

 だけど、今日アークと話してから自分のダメさを自覚したら、ゴズエルさんに会いたくなってきた。

 今の俺を、あのリーダーはどう思うだろう?

 俺は、死ぬか引退するまで冒険者として生きていけたら幸せなんだろうな。


「じゃ、見張りと火の番はルーズが最初で」


 ミミアとリリーが寝る支度を始める。 


「おう、次に起こすのはリリーだよな」

「ちゃんと私が起きるまで起こしてよね」


 リリーは少し起きるのが苦手なので、起こすのにもコツがいる。


「おやすみルーズ」

「おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」


 追放されたパーティの解散理由が、俺の想像とは違っていたけど、俺は追放されて仕方がない男だったし、それを五年経ってようやく自覚できたのは、いい事なんだろうな。

 俺は見張りと火の番をやりながら、ベーチィアでの冒険者暮らしは、本当に運が良かったんだなと改めて幸運を噛み締めていた。

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