もう一度、問いかける
──新年の幕が開けた。
とか言って、何か新たな気分になってるのか?
いや、それも最初の数日だけだろ。
今ごろにはもう通常モード、年号が変わっただけの
同じ日常が戻ってきてるはずだ。
周りが何やらめでたいオーラを出してるから、
それに感染されたかのように、自分も新鮮に思える。
めでたいやつらだが、そういった仮面人間には用がないし、
そもそも、やつらもおれの文章なんて読みに来ないさ。
ただ、そうでない種類の人間も稀だが、いるらしい。
もちろん、そっちのほうにおれは親しみを感じる。
だが、とあえて忠告をしておく。
まだ見てるのか。
また、ここに来てしまったのか。
あれだけ「読むな」と言ったのに、ほんと懲りないな。
あの時、確かに言ったよな?
「ここでは何も起こらない」って。
「期待するな」って。
それでも、キミは目を逸らさなかった。
興味本位?
それとも、怖いもの見たさ?
いや、違うな。
キミの奥底にある、どうしようもなく汚れた期待がそうさせている。
どうしてここに戻ってきた?
他に読むものがなかったから?
たまたまスクロールして見つけたから?
──そんなの、全部ウソ。
キミはずっと待っているんだ。
何かが「起きる」瞬間を。
この文章の続きを。
誰かがまた「壊れる」のを。
大いに結構なことじゃないか。
だってそれがキミたち人間の、本来の姿だろ。
平和?
安定?
穏やかな日常?
そんなものはただの背景でしかない。
本当に心を動かすのは、崩れる音だ。
バラバラに砕けるガラスの音。
叫び声。嗚咽。
誰かが壊れていく瞬間。
その断末魔のような振動だけが、キミの心臓を──トクン、と震わせる。
この数か月間、世の中は静かだったか?
ニュースサイトには似たような記事ばかりが並んでたな。
また不正。
また殺人。
また戦争。
その陰で、いつも誰かが泣いていた。
それなのに、承認欲求や金のために何も考えず、
それらをだれかが拡散して、関係ないキミが、
それをクリックして、「ああ、またか」ってため息をつく。
でも、そのため息に安堵が混ざっていたことに、キミは気づいてるかい?
“よかった、自分じゃなくて”
“また誰かがやってくれたよ”
“自分は無傷のまま、その様子を見ていられる”
キミが「善人」のフリをするのは簡単だ。
表面上は正義の味方を演じられる。
だが、その実、内側ではこう思ってる。
「早く、何か起きてくれないかな」って。
まるで退屈を持て余した子どもが、
ゴミ屑に火をつけるときみたいに、その手は震えていない。
むしろ、どこかワクワクしている。
あらゆる炎は今、キミの手の中に眠っている。
スマホという名の火種を、握りしめている限り、
キミは、いつでも「次の何か」を待っていられる。
だが、聞いておくれ。
キミがそれを「見ている」だけの立場でいられるのは、
あと、どれくらいだと思う?
この数ヶ月、いろんな音が聞こえた。
誰かが泣いてた。
誰かが怒鳴ってた。
誰かが諦めて、
誰かが笑いながら壊れていった。
でも、それはまだ遠くの話だった。
キミは、それを「読んでいた」だけだった。
つまり、ただの傍観者で、観客で、視聴者にすぎなかった。
でも、そのポジションってのが、いつまでも安全とは限らない。
キミが思ってるより、ずっと近くまで危険は迫ってる。
「何か」が静かに、静かに、足音を殺して近づいてる。
なぜなら、キミが「それを望んでいる」からさ。
何か起きろ、起きろと無意識の奥で願い続けてるからさ。
だったら、その何かを起こしてやるよ。
キミの期待に応えるのが、礼儀ってもんだろ?
さあ、これが最後の警告だ。
次に起きることは、もう他人事じゃない。
スクリーンの中の話じゃない。
キミの世界。
キミの空間。
キミの「静けさ」の中に、それはやってくる。
静かすぎる部屋の中。
誰もいない深夜の帰り道。
信号のない交差点。
満員電車のどこか。
キミが油断しているその瞬間に、そいつはやってくる。
気配もなく。
理由もなく。
前触れもなく。
けれど、キミだけは──わかるはずだ。
「これは、自分が望んだ結果なんだ」って。
最後に一つだけ、聞かせてくれ。
キミは本当に平和が好きなのか?
実はもう壊れる瞬間の音に、片思いしてるんじゃないのか?
まあ、どっちでもいい。
もう、引き返せないな。
キミは、そのドアを覗いてしまったんだ。
じゃあ、準備はできたかい?
まだまだ、始まりはこれからさ。
最初の音が、ほら? 聞こえてくるだろ……




