表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/28

スクロール・オア・デス③

終わりの兆候って、不吉だよな。


でも、安心してくれ。

お前だけじゃない。


みんな、そうなっていくんだ。

ゆっくりと、自分の中身がなくなっていくのに、誰も気づかない。

いや、違うな。

気づいてないんじゃない。

気づいても、止められないんだ。


ただ、本当に怖いのは、ここからさ。

そのうち、言葉を読んでも「感じる」ことができなくなる。

何が面白いのか、何が腹立たしいのか、

自分がどう思っているのかすら、わからなくなる。

なぜなら、中身のない情報ばかりに触れ続けると、

自分自身の中身まで少しずつ腐っていくからだ。


もう、始まってるかもしれないな。

この文章だって、どこまで読んだか覚えてるか?

次に別のタブを開いた瞬間、これも忘れるんだろ。


本当にそれでいいのか?

でも、もう遅いか。

ようこそ、見出しの世界へ。

中身をなくした人間たちが、情報の殻だけを喰らい続ける、永遠のループへ。

スクロールを止めるなよ。

止めたら、自分の空っぽさに気づいてしまうからな。


最後にひとつ、残酷な事実を教えてやる。

この文章を読んで「なるほど」とか「刺さる」とか、

そんなことを思ったお前。

もうとっくに、手遅れだ。

なぜなら、お前は今、見出しに釣られてここに来た。


ほら、もう忘れたか?

このページを開いたときに、最初に目に入ったあの一文。

この文章だって、「見出し」がなければ読まれてない。

それをクリックしたのは、お前自身だ。


つまり、お前は俺と同じだ。

叩くために読み、知った気になって安心し、「見抜いた自分」に酔う。

そうやって、自分がまだ中身のある存在だと信じ込もうとしてるだけ。


笑わせんな。

それが一番薄っぺらいんだよ。

お前はもう、見出しの構造の中に組み込まれてる。

騙す側でもなく、騙される側ですらない。

ただ、回路の一部になっただけだ。

感情も、価値観も、好みも、すべてアルゴリズムに最適化され、

選ぶ言葉すらも、誰かが釣りやすいように設計したフレーズの中から選んでる。


お前が何かを言ったと思ってるその瞬間、

もうお前の言葉じゃない。

それらはすべて選ばされた言葉だ。


どうだ?

まだ自分が「考えてる側」だと思ってるか?

だったら、試してみろ。

今すぐスマホを閉じて、目をつぶって、

最後に読んだニュースの内容を、ひとつでも言葉にしてみろ。


……出てこないだろ?


断片ばかりさ。

見出しの切れ端と、曖昧な印象だけ。

それが今のお前だよ。

空っぽの情報を食べ続けて、消化できなくなった情報の亡者。

自分の中に何も残らないまま、それでも「知ってる気」でスクロールを続ける。

最悪なのは、それで「何者かになった」と思ってることだ。


でも、安心しろ。

お前が自分の空っぽさに気づく日は来ない。

なぜなら、そうなる前に次の見出しが、

お前の思考をまた引っ張っていくからだ。


永遠に、終わらない。

死ぬまでスクロールしてろよ。

脳が擦り切れるまで、タップし続けろ。

中身のないまま、見出しの中の人生を生きて、死ぬ。


……お前も。

そして、俺もだ。


気づいていようが、抗っていようが、

どうせ次のそれっぽい言葉が来たら、また指が動く。

情報に溺れて、スクロールして、

「これは違う」とか言いながら、同じ沼にハマっていく。

お前が空っぽなら、俺はもう空っぽの外殻すら擦り減ってる。


それでも、止めない。止まれない。

だから、最後にもう一度だけ言ってやる。

この世界で一番中身がないのは、結局、そういった見出しじゃない。


それを繰り返し消費する、お前と、俺なんだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ