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押力曲線(下)

今日は自分が担当している案件を

何とか少ないリソースで

うまく運営するための方策を会社に提案していた。

提案内容は社外企業との連携が軸だった。


しかし、答えはNOだ。

「いやー、他企業と組んで売りを渡すのは避けたいねー。」

「君はみすみす与えられた売り上げを手放すつもりかい?」

「他企業が協力するメリットは何?」


上司、同僚たちは渡された書類を

机にタン、タン、タン、と叩きつけ、

会議室を出ていく。

ある役員は書類を置き去りにして出ていった。


会議の終わった会議室で一人残った俺は

残された書類を数秒見つめたが、

手に取り、その場で破り、空の会議室を後にした。



《NAROU ニュース》

本日午後19時03分頃、

都内私鉄番間鉄道の列車と

ホームにいた乗客が接触しました。

その影響で一時列車の運行が中止され、

およそ3000人の乗客に影響がありました。

運行を取りやめた列車がありましたが、

今は正常に運行されています。


事故現場近くを撮影した

スマホの写真や動画が情報共有サービスに

数々挙げられていく。

スーツを着た男性が背中を押されて

電車と接触している様子も見受けられる。


あとは接触後の写真が上がっているなど、

一時は見ていられない景色に染まる。

サイト運営側は即効で上がったデータを

片っ端から削除していく。

さらに上げたアカウントを一時的に利用不可にした。


《ネットの一部の投稿サイト》

—-この時間はおかしいだろ

—-あ、ダイブは基本、休み明けっしょ

—-私みたんだ、人が無理やり狭いところを通り抜けるふりをして、あれは多分押したんだと思う。

—-そんなのお前の思い込みだろ?

—-さっさと警察行けよ

—-確証が…

—-言い出した奴が疑われたりしてな

—-92家権カサイコー


今日も仕事を終えて帰宅する。

俺はこんな変わらない毎日を過ごしている。

何を言っても大して変わらない。

力(?)のあるものだけが世界を変えていく。

俺には「力」が与えられなかった。


そしてもう大人の世界には簡単に

落とせるようなガラスはない。

「あのガラスがあれば、僕の世界みたいに

みんなを変えられるかもしれないね。」


やめろ、やめろ、あの時はたまたまだ。

わざとやった訳ではない。


ただ怒りが押して、押して、押しまくりたい、

いつまでも消えない種火のように燻っている。

それをもみ消す日々。


そこで俺は朝早く出勤する事にした。

そして勝手に窓拭きを始めた。

ただし本当の俺の目的は窓押しだ。

高いビルから窓ガラスが落ちたら。

その時、ビルの下には自分の会社の社員がいる。

上司がいる、同僚がいる、役員がいる。


そう想像するだけでも腹の底から

うじうじ喜びが湧いてくる。

あの時のようにそれで世界が変わる。


もし身近に突然窓拭きを始める奴がいたら……


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