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虚映ノ鏡は真を映さず ─神気宿す少女と、月詠む死神審問官─  作者: あさとゆう
第1章 黒標対象と死神審問官

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第9話 人気教師に潜む影

「……一日ぶりじゃのう、娘よ」

「ヒ……!!」


 藍良の顔から血の気が引く。叫びかけたところで、千景が咄嗟(とっさ)に藍良の口を手で押さえ、近くの木陰へ引き込んだ。


「んん!んんん~~!」

「ごめん、藍良!ちょっとだけ静かに……」


 千景の腕に抱き寄せられたまま、藍良は戸惑っていた。


 すると、彼の肩に巻きついた黒い蛇が、ひゅるりと身を伸ばし、藍良の首筋をペロリと舐める。


「ひゃっ……!ちょ、な、なにこいつ……っ!」


 ぞわぞわと鳥肌が立ち、藍良は助けを求めるように千景を見上げる。だが、彼の視線は真っ直ぐ、体育館の裏手に向けられていた。


 その横顔はいつになく鋭い。さっきまでの人懐っこい笑顔はどこにもなく、まるで何か重要な手がかりを掴んだ探偵のようだ。藍良はゆっくりとその目線を追う。


 千景が鋭い視線を向けていた人物は、藍良の隣のクラス、C組担任の藤堂(とうどう)翔真(しょうま)だった。


 三十代で専門科目は体育。新婚ながら教員の中ではイケメン枠で、女子生徒からの人気も高い。かくいう藍良も、ノリがよくいつもテンションが高い藤堂に好印象を抱いていた。C組では男女問わず信頼されている、そんな教員なのだが──。


 藍良は戸惑っていた。目の前の藤堂は、いつもの陽気で飄々とした印象とはまるで違う。


 周囲を睨むように警戒し、頭を掻いてため息を漏らすその姿は、どこか落ち着かずせわしない。どう見ても、いつもの「人気者の先生」とはかけ離れていた。


 すると、程なくしてもう一人の人物が裏庭に現れた。


 藍良は、その顔に見覚えがあった。用務員の男だ。体育館に行くとき、よく廊下ですれ違うから顔を覚えている。


 男がポケットから何かを取り出すと、藤堂は懐から厚みのある茶封筒を差し出した。男は封を開け、中を覗きこむ。一万円札……それが何枚も。おそらく十万は下らない。


 男の口元に、にやりと笑みが浮かぶ。再びポケットに手を入れ、今度は銀色に光るなにかを取り出した。


 藤堂はそれを素早く受け取り、スーツの内ポケットへ入れる。そうして、用務員の男は特になにを言うでもなく、静かにその場から去って行った。


 残された藤堂は、無言でその背中を見送る。そして、ただ冷めきった眼差しで()()()()()()()()()()ポケットを押さえていた。


 藤堂の様子が気になって、藍良は思わず身を乗り出す。すると次の瞬間、藤堂がふとこちらを向いた。


「っ──!」


 反射的に千景が藍良を抱き寄せ、身をさらに木陰に隠す。それと同時に、藍良の胸が一気に高鳴った。


 一歩、また一歩。藤堂がこちらに向かってくる。


 こちらに気付いたのだろうか。このままだと見つかる……そんな緊張が走った、まさにそのとき。


《藤堂先生、藤堂先生。至急、職員室までお戻りください》


 校内放送が、緊張を断ち切るように響いた。


 藤堂は一瞬だけ表情を動かしたが、そのまま背を向けて去っていく。


 数秒後、藍良はほっと息を吐いた。



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