第五十三話 ツーペア
『登場人物』
【朝霧 悠】
この物語の主人公。世界最強であったが、『世界切断』という事件を経て弱体化してしまった。昔自分にかけた魔法によって数千年という時を生きている。使う武器は『叢雲』で、58364個もの魔法を使用できる。
『叢雲』の魔力を借りる『〆桜』を使用する。ランクは『IV』。(全盛期の場合は『XI』)
【キル・アストラ】
自己陶酔という言葉が似合う男。悠に勝るナルシストっぷり。一言一言が名言と言われている。ランクは『V』。
【菊池圭太】
第壱区の警官。オッドアイで、右目だけ赤い。
DAGに所属している。ランクは『VI』。
【END】
世界最悪のビースト。悠の全盛期と張り合える程の実力があり、『世界切断』当時からの唯一の生き残り。様々な世界を徘徊している。今は無限牢獄に囚われている。
『世界の種類』
【純世界】
ビーストがおらず、保護対象だけが存在する平和な世界。異世界警察が出動する必要はない。
【純正世界】
純世界に加え、『理』の異常が存在しない世界。異世界警察署本部があるこの世界のみが発見されている。
【危険世界】
ビーストと保護対象が存在する世界。
【超危険特別処理世界】
ワンク5の世界。パトロール中の特別警官は全員出動する必要がある。
【空世界】
ビーストも保護対象も存在しない世界。数年もしないうちに世界の存在自体が消滅してしまう。
「アストラ、悪い。電話かかってきてたから。」
電話を切った圭太はそう言いながらアストラに走って近寄ってきた。
アストラは黙って飛行船を見上げ続けた。
「街に向かおうか。飛行船も気になるけど後にしておこう。」
一つ下のランクのアストラに指示されるのが気に食わない気はしたが、圭太は黙って着いていった。
「そういえば凜奈クンはランク外なのかい?」
「軽々しく名前を呼ばないで。」
凜奈はアストラを毛嫌いしているようで、そう一蹴した。アストラは何故か傷つかないどころか、嘲笑うかのように薄ら笑いをしていた。
「多分アストラが貰ったのは『ver.1』なんじゃないのか?あれは朝霧悠が第零区の研究班に仮のものとして作らせたものだから、ほんの少ししか乗ってないんだ。」
「じゃあ、『ver.2』があるんだ。」
「『ver.2』っていうか、人数が多いから区ごとに分けて配布されてる。今も追加中らしいから。確か凜奈は『III』じゃなかったっけ?」
凜奈は頷くことすらしなかったが、否定しなかったので、恐らく合っているのだろう。
「見て、保護対象だ。」
圭太はそう言いながら街を指さした。指した先には確かに市民が居たものの、市民は圭太達を発見すると、まるで恐れているかのように走って家の中に逃げてしまった。
「あれ、逃げちゃった。なんでだろう。」
「……あそこ、本当にあの人の家なのかしら。」
そういえばそうだ。恐らく買い物帰りだったのだろう。荷物を持っていたので、偶然自宅の前だったとも思ない。
「となると……『避難』したみたいだね。」
「どんだけ怖がられてるんだ……」
圭太は警察の帽子を脱いで見つめると、ため息をついてもう一度被った。
「まぁ、一人くらいは話してくれるだろ。」
そう言って圭太は街に入って歩いていったが、街中には誰一人として市民が居なかった。いわゆる田舎っぽい雰囲気の街だったが、誰一人として住んでいないわけがない。
「……んぁあっ!こういう意味の無い行為は嫌いなんだ。ボクは家の中に入らせてもらうよ。」
「多分空いてないぞ。」
「関係ないね。」
すると、アストラは扉に触れた。まさか、と思い圭太は走ってアストラを止めようとしたが、間に合わなかった。
アストラの魔法、『侵入』は基本的には心に入り込む能力だが、その気になれば物体に入り込むこともできる。そう、例えば鍵のかかった家とか。
家の中に『侵入』したアストラは内側から鍵を開けると、圭太達二人を入れた。
「アンタ……最低ね。」
「あぁ、同感だ。」
2人の罵倒など気にしないかのように、ノリノリでアストラは家の中を進んでいった。仮にも住民がいると言うのに、なぜこんなにも呑気なのだろうか。
凜奈は家に上がるので、自身の履いている下駄を脱いだが、裸足は裸足でペタペタと音が鳴って、うるさかったので、一旦家の外で待機という事になった。
「アストラ、もう少し慎重に行けないのか……!」
「別に家主に会ったところで問題じゃないからね。気にしすぎだよ。」
そんなことを言って、部屋の扉を開いた瞬間、タイミング悪く、家主と思われるハゲオヤジに出会ってしまった。
「ッ……うわぁぁああぁっ!!!喰われるっ!!!」
そう叫んで家主は逃げ惑った。アストラは魔法で黙らせようとも思ったが、一旦状況を理解するのが先だと思って止めておいた。
「待ってください!俺たち人を食べるだなんて……家に入ってきたのはこの男の責任で!」
「圭太クン、結構酷いんだね。」
「な……なんだ、もしかして本当にオマエら『喰人症』じゃないのか……!?」
『喰人症』、聞き馴染みのない単語に戸惑ったが、本能的に何やら危なそうなものだと言うのは感じ取ることができた。……と、丁度その時、窓を突き破って、何かが家の中に入ってきた。
「んなっ……凜奈!?」
「凜奈クンッ……!?」
そう、その人物は凜奈だった。だが、様子がおかしかった。全身の所々に痣のような紫の斑点がある。そして、窓を突き破ったと思えば、目にも止まらぬ素早い動きで、家主の肩に噛み付いた。
「おい!凜奈!何やって……」
ビーストの魔法なのか、そう思い圭太は凜奈を引き離そうとしたが、凜奈は「グルルルル……」というゾンビの様な低い声を出して、圭太に威嚇した。
余りの覇気に、圭太は一歩下がってしまった。何が起こっているんだ、そう思い、状況を理解しようとするのに精一杯だった。
次の瞬間、紫の斑点は家主にも感染って家主も意識を失ってしまったようだった。
「圭太クン、一旦離れるとしよう。」
アストラは不穏な空気を感じ取って、圭太の腕を掴むと、隣の家、その隣の家、またその隣の家……に、『侵入』を繰り返し、高速で移動した。
「狂ってるのは……この街自体かもしれないね。」
十軒程家を移動すると、アストラは内側から鍵を開け、外に出ると、屋根に上がった。
圭太も続いて屋根に上がると、そこから見えた景色は地獄絵図だった。
町中に大量のゾンビが蔓延っている。家の壁を壊し、誰かのペットと思われる犬、猫は喰われていた。
そう、これこそが先程言っていた『喰人症』。感染直後、もしくは食欲が満たされていなければ、見境なく人を喰らう病。
では、食欲が満たされている場合は?そう、先程の家主のように感染してしまう。そうでなくとも、空の飛行船から降ってくる『菌』を吸ってしまえば感染してしまう。
生命力が高ければ感染しにくい。ただし……
「圭太クン、その紫の斑点……痣かい?」
“誰でも最後には感染する”。
第五十三話 終
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