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第五十二話 菊池圭太

 悠が第壱区の構造を調べている間、アストラはついて行こうとしたが、菊池圭太を見張っておけと言われたので、圭太と話していた。


「君、オッドアイなのか。」

「そう。俺右目だけ赤で、左目は黒なんだ。髪の毛で隠してるけど、やっぱバレるよな。父さんが『グレン族』っていう種族で目が赤いから、遺伝なんだけど左目だけメラニン?とかの量が違って黒いらしい。」


 そう言いながら圭太は自身の黒い髪で右目を隠そうとしていた。


「で、あっちが俺の妹の橋本凜奈(はしもとりんな)だ。」

「兄さん、勝手に紹介しないで。私まだそいつ信頼できないから。」


 凜奈は笛を吹くのを止めると、机に置いてあるケースに入れた。


「ん、凜奈クンと圭太クン、兄妹なのに苗字が違うのかい?」

「っ……!!」

「ちょちょ……アストラ、ちょっと来てくれ。」


 純粋な疑問だったのだろうが、何とも空気の読めないアストラに凜奈は激怒しようとしたが、圭太が寸前でアストラを連れて逃げた。


「アストラ、あの……俺と凜奈は義理の兄妹なんだよ。凜奈の両親は殺人で捕まって、俺と同じ孤独だから引き取ったんだ。」

「ふーん……そういう事だったんだ、ごめんね。」


 本当に悪びれているのか分からないが、アストラは一応謝っていた。凜奈のいる部屋に戻ると、アストラは「ごめん」と言うかのように少しだけ会釈した。


「ところで……朝霧悠ってどういう人なんだ?学校で習ったけど、俺中卒だからあんま詳しくなくて。」

「あの方は……『神を超越する神』だよ。」


 圭太はよく分からず、首を傾げた。だが、アストラは自分の世界に入ってしまったように話し続けた。


「ボクも猛者だと自負してるけど、あの方の魔力を感じることは出来ない。存在する次元が違うんだ。二手先を読む、なんてよく言うけど、ボクが二手先を読んでいる時にあの方はもう結果まで読んでる。」


 そういうとアストラは机の上のペンを取って回し始めた。


「おかしいとは思ったけど、やはり悠様、まだ『魔1』程度しか力を取り戻していないそうだ。当然だよね、ボクが魔力を感じ取れる程だった。」

「……まぁ、次出動の時に注目しておこう。」


 そういうと、圭太は立ち上がって、壁に設置されているインターホンのような物をいじりはじめた。


「そういえば、区ごとに出動させられる世界も違うんだよね?圭太クン。」

「うん。だから危険な世界が発生し続けてる今は()なんだよ。」

「変?」

「危険とか、そういう意味じゃないんだ。ビーストの強化はまだ分かる。でも世界の増殖は何か異様な力が働いてない限りありえない。」


 そんなことを話しながらインターホンのようなものをいじっている圭太は突然アストラに振り向いた。


「ワンク2の世界が発生したらしい。慎一さんとENOMさんも出動したいかな。」

「あの二人ならめんどくさいって言うんじゃないかな。」

「そうだろうな。」


 気がついた時には、悠はアストラと圭太の間に立っていた。


「アストラ、私はもう少しこの中を調査しておく。今のところ分かったのは……」


 そう言うと悠は圭太を睨むように見つめた。


「貴様がDAGだという事だ。」

「別に隠してたつもりもないけど。」


 DAGは異世界警察の暗殺部隊。全身黒の装いに違和感はあり、調べてみたところやはりDAGの幹部だったようだ。


「DAGのボスは……仝々だったはずだが、そういえば仝々も貴様もランクは『VI』だったな。」

「いやいや、俺より絶対仝々(リーダー)の方が強いよ。」

「言わずとも知っている。」


 謙遜のつもりだったのにそう返されたのがイラッとしたのか、圭太は動きを止めてしまった。


「そもそもこのランクの基準は単純な強さだけはない。貴様の覚悟がなくビビりな性格は異世界警察としては『より多くの命を助けるため』と捉えることも出来るのでこのランクにしてやったんだ。土下座でも何でもして感謝しろ。」

「跪くのはお前の方だ、朝霧悠。夜道に気をつけろよ。」

「夜道を襲わないと勝てないような貴様に注意など払わん。」


 そう言うと、勝ち逃げするように悠は部屋を出ていってしまった。もはやイジメである。


「はぁ……アストラ行くとしよう。凜奈も来るな?」

「当たり前よ。色々ムカつくし。」


 そう言うと圭太は凜奈と突然手を繋ぎ始めた。飄々とした態度でいつも上からものを言うアストラすら無表情で冷静になってしまった。


「君たち何してるの。」

「え、第零区はこの移動じゃないの?第壱区はこのインターホンモドキに触れてる人に触れてるものを運ぶんだ。もしかしてまだエレベーター方式なんか使ってるの。」

「悪かったね。」


 圭太は何かと相手を無自覚に怒らせる癖があるようだ。アストラは圭太の言う通り、肩に触れると、圭太はインターホンモドキを押した。

 すると、『ワンク2の世界へ参ります』とインターホンの機械音声が言い、3人は異空間を通ってワンク2の世界に向かった。


『到着しました。』


 機械音声がそういうと、3人は見た事が無いような景色を目にする事になる。

 右は火山、左は森林、前は海、後ろは街。そして“上”には飛行船。

 そう、理の異常は一目見ただけで分かった。『地形』。


「圭太クン、これだけ荒れた土地だと、ボクの素晴らしさが際立つねぇ。」

「はい……はい……」


 1人はしゃぐアストラの事など意に介さないかのように圭太はスマートフォンで誰かと電話をしていた。僅かながら、アストラが聞きとった言葉は信じられないようなことだった。


「はい、ターゲットは“朝霧悠”ですよね。分かっています。そのためのDAGなんですから……」


第五十二話 終

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