第四十九話 別名
『登場人物』
【朝霧 悠】
この物語の主人公。世界最強であったが、『世界切断』という事件を経て弱体化してしまった。昔自分にかけた魔法によって数千年という時を生きている。使う武器は『叢雲』で、58364個もの魔法を使用できる。
『叢雲』の魔力を借りる『〆桜』を使用する。
【ウルグ・ハース】
悠の相棒。常に冷静で、表情筋を使ったことないのではないか、という噂がたったことがある。
【ココロ・シンリー】
皆にはココと呼ばれている。異世界警察では珍しい女性の警察官。基本的にピストルを使用して戦う。
【魔王】
悠やウルグ達と同じ特別警官。『創造破壊』の能力の強さで昇格した特例。気弱な性格。
【キル・アストラ】
自己陶酔という言葉が似合う男。悠に勝るナルシストっぷり。一言一言が名言と言われている。
【END】
世界最悪のビースト。悠の全盛期と張り合える程の実力があり、『世界切断』当時からの唯一の生き残り。様々な世界を徘徊している。
「ならばヤツだけを地獄に送ってやる。」
悠はそう言うと、『翼翼翼』という魔法を使用し、背中から魔力の翼を作り出した。
悠は一気に舞い上がると、烏の目の前に向かった。
「叢雲、起きているだろう。狸寝入りも程々にしておけ。」
【チッ……なんで分かるんだよ……】
叢雲は先程まで静かにしていたが、悠に忠告されると、起きて話し始めた。だが、そんな2人に様子を見ながら、〖黒羽〗は巨大な口を開いた。
〖生物において「強さ」とは「大きさ」。百獣の王ですら恐竜の前では無力。〗
「鶏肉風情が話せるのか。」
悠は〖黒羽〗の話など全く聞かずに、そう言った。
「悪いが異形との戦闘は好みではない。早々に決着をつけさせてもらう。」
瞬間、悠は〖黒羽〗の羽の上に乗っていた。『テレポート』は使用していない。ただ単純な脚力であった。
だが、〖黒羽〗は全く引けを取らずに、上空に垂直に登って行った。
〖振り下ろされぬように掴まっていることだな。〗
「節穴でないのならその目で見てみろ。」
黒羽はそう言われると、羽に掴まる悠を見ようと、首を回した。だが、そこに居たのは、必死に掴まる悠ではなく、腕を組みながら、ただ黒羽の体に垂直に立つ悠の姿だった。
〖何故落ちない……〗
「神は堕ちん。」
〖傲慢な。〗
どんな魔法を使ったのか、そう考えることすら愚行であった。悠の使用できる魔法は58364個。重力に逆らって、平行に立つ事くらい出来るのだろう。
黒羽は話にならないと思い、そのまま限界まで高度を上げると、グルンッと向きを変え、真下に向かっていった。
「我慢比べか。仝々と良くやったものだ。」
〖あぁ、チキンレースだ。〗
「貴様はカラスだろう。」
そんな事を言いつつも、悠は直ぐに勝負を降りて、黒羽の背中から下りた。それに気が付かず、黒羽は物凄い勢いで地面に激突した。
砂埃が辺りに舞い、地形すらも変えてしまった。
「『地球』め。魔法で作り出した生物の破壊は罰に値しないと言うのか。」
〖カァッアァッ!!貴様の負けだ、朝霧 悠!!〗
「戦いの中のゲームに付き合う程私は優しくない。」
だが、少々悠は驚いていた。あの高度からあの勢いで落下して、かすり傷のひとつも付かないとは、相当の防御力なのだろう。
「とはいえ私の前では無力だ。」
そう言うと、悠は右手を前に突き出して、黒羽に向けた。
「『極光』。」
瞬間、黒羽の足元からは、天に向かって一筋の光が放たれた。その光の筋はどんどん増えていき、遂に7本になった時には、黒羽の姿全てを囲った。
「『夜景色』」
『極光・夜景色』、そう悠が唱え終えた瞬間、7つの光の筋の内側は一本の太い光の筋で包まれ、内側に居た黒羽の身体は炎の光に包まれた。
〖ッカァァアアアァアッ!!〗
「味付けだ。」
悠はそう言うと、隣のビルを粉々になるまで魔法で砕いて、それを烏に向かって激突させた。
その時だった。突然悠の身体からは力が抜け、魔法は放つことができなくなった。誰もが理解できない状況で、ただ一人叢雲が口を開いた。
【罰は魔力を奪うものだったのか……】
ガッカリしたのか、呆れたのか、いつもの嫌らしい笑みを含んだ話し方ではなく、つまらなそうな低い声で叢雲はそう言った。
そう、誰一人として視覚で確認できる、「悠が倒れた」ということ以外異常を感じ取れなかった。
何故なら叢雲以外は悠の魔力を元々感じることが出来ていなかったのだ。
「人工物ですら『罰』の対象なのか……!」
〖阿呆めが。〗
そう言うと、黒羽はボロボロの身体だったが、倒れる悠の元に近寄ってきて、口を開くと、その嘴で悠を食べようとした。
だが、直前でココがピストルを撃って黒羽の気を引いた。
〖……〗
「悠様……その体は悠さんの体でもあるんです!娯楽のために戦いは二度としないでください!」
「……悪かったな。」
癪に障ったので反論しようと思ったものの、言葉に詰まり何も言い返せなかった。
すると、悠は叢雲を支えにして立ち上がった。
「全く……まだ起きる気がないのか。【叢雲】。」
【起きてるよ。】
「力の話だ。」
そう、実は叢雲はまだ“力を解放していなかった”。『紫煙』『〆桜』など、使用者の技の問題ではない。叢雲には「意思」があり、「力」があるのだ。
「目覚めろ、叢雲。」
【仕方ねぇな。】
そう言うと、悠は地面に叢雲を突き刺した。すると、まるで底なし沼に入っていくかのように、叢雲はズブズブと姿を消していった。
完全に姿が見えなくなると、叢雲が消えていった辺りの地面から一筋の黒い光が天に向かって突き抜けた。
【いい気分だ……朝っつーのは。】
光の筋の中から現れた男は、黒髪をかきあげると、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
全身黒で統一された服に、耳には割れた【ダイヤ】のイヤリング。
〖貴様は何者だ?〗
【叢雲、またの名を“ダイヤ”だ。おはよう。】
第四十九話 終
①セリフの時のカギカッコが【】←これ(このカギカッコを使用しているのはEND関連のみ)
②叢雲の鍔の形がひし形(ダイヤの形)
③笑い方が「か行」(ダイヤの笑い方が【カカカ】で、スペードが【キキキ】、クローバーが【くっくっく】、ハートが【コココ】で、叢雲が【ケケケ】)
っていう3つの伏線がありました。




