第四十七話 ロット
「っ……ぁ……」
三男は横腹をココに打たれ、その場に膝をついた。肺がやられたのか、息をすることが出来ず、しゃがれた声がヒューヒュー出るだけだった。
「……ぐそ……」
三男は何も出来ない自分とココに激怒して、その一言だけを呟いた。打たれた横腹から血が止まらず、抑えていても直ぐに溢れ出してしまった。
「すいません……さようなら。」
ココはせめて最後は即死させてあげようと思い、三男の脳に銃口を向け、引き金を引いた。
だが、ピストルから鳴ったのは虚しい不発音だった。そう、“弾切れ”である。
「馬鹿が。」
三男は空砲のピストルを払い除けると、ココに勢いをつけて頭突きをした。予想外の出来事で反応できなかったココは、頭突きをモロに食らい、その場で倒れて意識を失った。
「これで……二対一だ。」
次男は自身の鉄パイプを地面にぶつけると、ウルグにそう言い放った。三男の勝利でウルグは数で不利になってしまった。
「ウルグさん……僕も……」
「魔王、お前は下がっていろ。足手まといにしかならない。」
そう言うと、ウルグは手袋を付けて、挑発するように煙草を吸い始めた。
「『KREUZ』は苦すぎるから、舌の感覚が死んだ玄人向けだ。俺は甘めの『Lunar Mist』がお気に入りだ。高いのが難点だが。吸うか?」
「呑気に何言ってやがる。」
「死刑囚にも最後は情けがあるだろう。」
次男と三男は挑発に乗って、二人同時に走り出した。だが、ウルグは地面を蹴るようにして二人の間を通過した。
ウルグが二人を通過した瞬間、二人の首の脈は切られて血が吹き出した。
「正義だ。」
次男と三男は同時にその場所に倒れ込んだ。首の脈を切ったのだ。安静にしていれば延命は出来るが、少しすれば出血多量で死ぬだろう。
三男は仰向けになると、ウルグに言った。
「悪魔共が……!」
「悪いが仏教徒だ。」
その時、突然上空で爆発するように音がなり始めた。いや、「鳴き始めた」。
全く気が付かなかった。いつの間にか上空は数千を超える烏によって埋め尽くされ、空を飛んで、まるで百鬼夜行のように移動していた。
「まさか……ロット様が戦闘態勢に入ったのか……!?」
今にも死んでしまいそうな事すら気にしていないかのように、三男はそう言った。
「カァァアッ!!」という鳴き声が耳をつんざく。だが、ウルグはこんな中でも冷静に奇妙な事を発見していた。
「この数居て……フンがひとつも無い。まさか、この量を魔法で操っているというのか……!?」
その時突然、悠がウルグ達の前に『テレポート』してきた。
「……貴様ららしくないな。敵を殺すなど。」
「これが俺の信じる正義だったからだ。……だがそんなこと言ってる場合じゃないだろう。」
そうウルグが言うと、何故か悠はニヤニヤし出した。
「来るぞ。」
瞬間、烏の大群は円形に穴を開けた。その「穴」から現れたのは、烏に乗った一人の男だった。
「鳥と言えど舐めたらいけない。モズのはやにえは知っているかな?秋から冬に見られる習性でね、獲物を枝とかに刺しとくんだ。」
「魔力の方向に向かっていたが、居たのは大量の烏だけだった。貴様、烏に紛れて魔力を消していたのか。」
「そっ。この烏は魔力を消してくれるんだ。」
そう言うと、男は烏に浮かせられながらゆっくりと地面に降り立った。
「初めまして。ロットだ。」
そう言っている間、背後を飛び回る烏がまるで、ロットの翼のようだった。
先程まで面白そうにしていた悠だったが、もう早々に飽きたのか、悠はロットに殴りかかった。
だが、大量の烏がそれを守って、辺りには大量の烏の血が飛び散った。
「あぁ、僕の烏達が……可哀想に……」
そう言うと、ロットは死んだ烏を拾い上げて抱きしめた。すると、その烏は“生き返った”。
だが、それはあまりにも凄惨な復活だった。傷は全く癒えず、悠に殴られて出てきた内臓や骨は丸出しだった。
身体を動かす事は全くままならず、今にも胴体が2つに分離してしまいそうだった。
「貴様、『チユ族』か。」
「驚いた。君達の世界にも僕たちの種族がいるのかい。」
ロットは分かりやすく大口を開けてわざとらしく驚いていた。だが、ココと魔王は何が何だか理解できなかった。
「『チユ族』?」
「死んだ生物などに魔力を注ぐと生き返らせることが可能な種族だ。異世界警察内にも数人いる……あの“肉塊”は貴様の影響か。」
「烏達は意外と凶暴で、僕が見ていない隙に人を食べちゃうんだ。だから、僕が生き返らせてあげるのさ。」
ココはようやく状況が理解できたようで、「っ……」と何かを言おうとしたが、言葉に詰まって絶句してしまった。
「それが貴様の慈悲なのか……!」
「僕の仲間を殺しておいてよく言うね。」
そう言うと、ロットは三男の覆面を剥がした。すると、三男の顔は想像だにしないものだった。
眉間が貫通して、額に大きな“穴があった”のだ。
「長男と次男は、片目から口にかけて重症を負っている。というより、それが影響で三男は一度死んだんだ。そして、生き返るのはこれで三度目だ。」
そう言うと、ロットは三男の頭に手をかざして、魔力を注ごうとした。だが、すかさず悠がロットに殴りかかった。烏が間に入って止めようとしたが、勢いは止めきれず、ロットは2、3メートル吹き飛ばされた。
「死者が蘇ることはない。」
「蘇るさ。だから烏は生き返った。」
ロットは、まるで悠が何かおかしいことを言ったかのようにそう言った。
「確かにそうだな、語弊があった。」
「?」
「心が……蘇ることはない……!!」
第四十七話 終
この作品が面白いと思ったら是非★やブックマーク、コメントなどお願いします。
また、他の連載作品などもお願いします。
作品の質向上の為にもアドバイスなども下さったら有難いです。




