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第四十一話 「その名は」 

「アストラさん、起きましたか。落ち着いて聞いてください……あなたの命はもう短……」


 アストラの元に来た医師はそう言う途中で言葉を途切らせた。今にも亡くなってしまいそうだったアストラの体調は、驚くほど良好、かつ、体は完璧な状態になっていたのだ。

 左腕も完全に再生し、怪我をしていたはずの腹も完全に治癒されていた。


「な……何が起きたんですか……!?」

「ふっふっ……何、神が舞い降りただけですよ。」


 そう言うと、アストラは笑い続けた。その目には、完全に光しか映っていなかった。


────────────────────────


 一方のココと仝々はEND達の様子を観察し続けていた。今知ることができた情報は、【ジン】という銀髪の男と、【メイ】という黒髪ロングの女がこれから組織のリーダーとなるという事だった。


【そしてもう一つ、知らせがある。お前達もよく知る……朝霧 悠につ】


 そうENDが話している最中に、突然ココと仝々の見る景色は一転した。

 END達の会合を見ていたはずが、気づけばエレベーター内に二人はいたのだ。


「え……なんで私たちここに……」

「初めましてだ、ココロ・シンリー。」


 突然の事態に理解が追いつかないココと仝々の元に、その者は来た。そう、その男がココと仝々を一瞬にしてエレベーターまで運んだのだ。


「あなたは……!?」


────────────────────────


 一方、坂本慎一はヴァイレントの戦闘中、魔王が倒されたことで追い詰められていた。


「くそ……場所までバレた……!!」

〖ヴゥオオオォォオオオ!!〗


 慎一は煙草を吐き出して、隣のビルに走って飛び移った。瞬間、ヴァイレントの手はビルに振りかざされて街は壊滅的な被害を受けた。

 慎一も爆風で吹き飛ばされ、その体は地面に叩きつけられた。


「はぁ……はぁ……クソ、ここまでか……!」


 ヴァイレントは陸上にまで上がってきて、山ほどの大きさの巨体で慎一を見下ろした。


「『叢雲』。」


 その声がどこからか聞こえてきた途端、ヴァイレントの体は左肩から右腰まで真っ二つに切られた。

 どこかで聞いたことがある声……いや、聞き馴染みがありすぎるその声の主は、慎一の近くの倒壊しているビルに座り込んだ。


「『KREUZ(クロイツ)』か。慎一、やはり煙草のセンスは健在だな。」

「嘘……だろ……」


 慎一のポケットからは煙草、『KREUZ』が消え、いつの間にかその声の主の手元にあった。

 その声の主は仝々とココの救出後、すぐに慎一の救出に来たのだった。

 呼吸の一つ取っても、全ての所作、一挙手一投足が神々しい。神をも凌駕するような神々しさと美しさ。慎一は呼吸の仕方が分からなくなるほどに、その姿に見とれていた。


「はぁ……はぁ……悠様……!?」


 その男の名は『朝霧悠』。世界の英雄。そしてナルシスト。


挿絵(By みてみん)


────────────────────────


 数時間後……


「悠……悠様……?なんて呼べばいいんだ……」


 ウルグは思わずそう呟いた。ウルグ達、特別警官5人と、アタスマ達MBU隊長5人はトレーニングルームに集まっていた。


「何でもいい。それよりもEND達の件についてだ。」


 ウルグの事など見もせずに、叢雲を眺めながら悠はそう話を切り出した。


「仝々とココロ・シンリーが向かった世界にENDの組織が存在する地下帝国があったようだ。」

「悠様、お言葉ですがENDは今無限牢獄に捕らえられています。長がいない今、最早組織は無力同然かと。」


 性にもあわないような丁寧な敬語でV-ENOMはそう言った。そう、V-ENOMの言う通り、今ENDは地下の無限牢獄に捕らえられている。


「知っている。だが、奴の組織は女と男が新しいトップになるようだ。片方は俺もよく知っている。」

「まさか……メイですか。」


 仝々は苦虫を噛み潰したような表情をフードの下で浮かべてそう呟いた。


「……え、「メイ」って……まさかあのメイさんだったんですか!?」


 ココは思わず衝撃を受けてそう叫んだ。そう、「メイ」こと「メイ・ルリア」は高校を出た人間なら誰でも認知しているような、有名な女性なのだ。


「悠様を裏切った背信者ですよね。」

「シガール・オウマ。悪いが自分の知る情報が全てだと思うのは辞めてもらおう。メイは裏切り者ではない。」

「メイはゴドラ……『(ムーン)』と殺し合いになって負けた、だから悠様から離れたんだ。」


 慎一はそう言うと、『KREUZ』に火をつけ、一箱悠にも渡した。

 悠は煙草を咥えると、当然のように魔法で火をつけた。


「……そういえば、悠様、魔法の調子はどうですか?」


 アタスマは悠にそう聞いた。悠は手を握ったり開いたりして、自身の魔力を感じていた。


「本調子とまでは行かなくとも……悪くない。使用できない魔法はひとつも無い。」


 そう言うと、悠は煙草の煙を吐き、煙草を灰皿に捨てた。


「とは言え……問題は何も解決していない。アストラ、着いてこい。」

「っ……はいっ!!」


 アストラは呼んでもらえたことが感無量と言いたいように、満面の笑みで元気いっぱいにそう言った。

 そしてアストラと悠は周りに聞こえないほどの距離まで移動すると、悠は話し始めた。


「アストラ。」

「はいっ!!」

「ある策を実行しようと思ってな。」


 そう言うと、悠は近くの木箱に腰掛けた。


「異世界警察を“ランク付け”する。」


第四十一話 終

第三十九話の初めに「弱さはもう噛み締め飽きた」って言っていると思うんですが、あれは悠のセリフで、噛み締め飽きた「弱さ」を『全盛期』に戻ることで最後にする。だから第三十九話のタイトルは「最後の晩餐」なんです。

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