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第四十話 凶悪 

 悠の死亡が確認された後、数時間が経過した。ウルグ、アタスマ、そしてV-ENOMは下を向いたまま、死体留置室の前で放心状態になっていた。


────────────────────────


 一方のアストラと蒼皇は危険な状態だった。

 二人とも鴕鳥の足元で倒れている。アストラは左腕が吹き飛ばされ、出血多量。鴕鳥が少しでも動けば二人とも即死だ。


「はぁ……鳥程度に……!!このボクが……!!」


 こんな状況でも、アストラは傲慢さを忘れていなかった。

 アストラは地面を這って鴕鳥に近づくと、その足に触れた。


「『侵入』!!」


 この能力を見たことがあるものは数百人、だが、能力を覚えているのは“たったの数人のみ”であった。

 この能力は、相手の心に入り込み、相手の心理を可視化する能力。相手の気を狂わせることもできれば、相手の心を改心させることもできる。


 鴕鳥の心理内に侵入した……はずだった。だが、そこは白い床しかなく、辺りはただ黒に包まれた空間が広がっていた。


「はぁっ……はぁ……まさか……!!」


 そう、鴕鳥とは絶望的に記憶力、状況認知能力が低い。つまり、心理内に侵入したところで、何にもならない。

 だが、完全に何も無いはずはない。鴕鳥も思考しているはずだ。辺りを散策すると、見つかったのはただ一点の「黒い球体」だった。

 なんの濁りもなく、触れてしまえば吸い込まれて消えてしまいそうな「黒」。


「これが……鴕鳥の「悪意」……!!」


 そう、何もない空間に落とし込まれたただ一つの黒。その正体は鴕鳥の悪意なのだ。


「はぁっ……もう時間もない……潰れろ!!!」


 そう叫んでアストラは悪意を潰そうとした。だが、その瞬間、黒い球体は一点から尖りを生み出すと、アストラの腹部を貫いた。


「ぅっ……!!」


 アストラは声にならない叫びをあげると、反動で能力を解除してしまった。もう逃げ場もない、そう思われた時、蒼皇が立ち上がり鴕鳥に向き合った。


「……準備がようやくできた……この術には溜めがいる……」


 そういうと、蒼皇の魔力はガソリンに炎をつけたかの如く、一瞬で爆発的に上昇した。

 そして、蒼皇は目に映らない程の速度で移動すると、鴕鳥の腹部に手を当てた。


「……燃えろ『(あか)』……」


 瞬間、蒼皇の手からは、炎のように赤い魔力が放出され、鴕鳥の体は魔力によって貫かれた。


「……アストラ……」


 アストラは激しい攻撃により、既に意識を失っていた。蒼皇は、術使用による疲労もあったが、ウルグを背負ってエレベーターまで向かっていった。



────────────────────────


「……悠様に教わった『イルカ訓練』の役立ち方がこんなのなんて……なんて皮肉ですか。」


 アストラは目覚めると共にそう呟いた。周りはカーテンに囲まれ、体は点滴などに繋がれている。そして、隣には悠の遺体が横たわっているベッドがあった。

 『イルカ訓練』は、悠全盛期時代に、アストラが教わったもので、意識がない間も脳を半分だけ働かせておく訓練である。


 そう、アストラは出血多量で意識を失っている間に、悠の死亡を耳にしたのだ。


「ここに居るということは……ボクの命も短いみたいです……悠様、そちらに……」

「お前らしくもないな、アストラ。」


 アストラの独り言に、何者かはそう返した。その声は悠の眠るベッドの方向から聞こえてきたのだった。


「まさか……」


────────────────────────


 一方のココは仝々と共にワンク1の世界に来ていた。


「なんて世界ですか……エレベーターの出た先が地下だなんて……」


 そう、ココと仝々が出てきた先は地下帝国の一室だったのだ。壁や床、天井は全て綺麗に整えられ、相当な文明だ。

 ただし、どの部屋を探しても、生存者は誰もいない。だが人の居た痕跡だけが大量にある。


「どっかにひとまとめになってるみてぇだな……今見ただけでも十人は最低でも居そうだぜ……」


 痕跡を軽く見て行っただけでも十人を超える人間の痕跡が見つかった。

 そのまま様々な場所を見ていると、長い廊下に出た。廊下の右側には個室が等間隔で設置されており、左側には細長い窓が何個も設置されていた。


「地下なのに……窓……!?」


 窓を覗いた。

 その違和感は直ぐに消えた。


 目に入る人数は軽く“数万を超えていた”。

 窓の先の空間は超巨大な広間となっており、そこには数万を超える兵がいた。


「な……なんて数……それに一人一人の魔力だって……」

「三下みてえな兵でもねぇ……この中の一人だけでも異世界警察官……いや、最悪特別警官にだって匹敵しやがるぞ……!!」


 広間を見ていると、直ぐに全体の明かりが消えた。そして、壇上に四つのスポットライトが当たった。


【雑魚どもォッ!!調子はどうだ!!】


 壇上の一人がそう叫ぶと、兵達は波紋が広がるように【ぅおおおっ!!】と沸いた。

 壇上に現れた四の光。そう、その正体はココもよく知る最悪の四人【獄牌覇王四ノ虚ごくはいはおうよんのうろ】、通称【四天王】であった。


「まさか……ここがEND達の本拠地……!?」

「襲撃の時に閉鎖を解いたんだろうな……そのせいで研究班が探知しちまった……」


 ただ、安心できる……のか、壇上の四人からは何故か微量の魔力も感じなかった。それこそ「死んでいる」かのごとく。


「ココ、四天王の魔力を感じねぇだろ。」

「はい。なんでですか……?」

「本当にヤベェやつの魔力っていうのはな、感じることすら出来ねぇんだよ。俺でさえ感じることはできねぇ。」


 そう説明されている最中も、ココは見逃さぬように広間の様子を見続けた。

 すると、壇上の右サイドにスポットライトが当てられた。


【静まれ。】


 その声が広間に広がった瞬間、全員の肝が冷えた。フロアは静寂に包まれ、数人は気絶してしまうものもいた。

 右サイドから出てきた影は二つだった。


 一人は、ENDの声が出ているスピーカーを持つ、銀髪に鋭い目つきの男、そしてもう一人は胸の当たりが黒い毛に包まれたベアトップを着た黒髪ロングの女だった。


挿絵(By みてみん)


【ジン、メイ、座れ。】


 そうENDが言うと、ENDの声が出るジンと呼ばれている銀髪の男は、スピーカーを壇上の中心に設置されている机上に置いた。

 そして、その両端の椅子に1人ずつ座った。


【よく集まってくれた……ところで、“客人二人”は何の用だ。】


 スピーカーの声はそう言った。仝々はその声を聞いた瞬間に自身とココの頭を下げて、窓からこちらが見えないようにした。

 そう、ENDはスピーカー越しに、世界に侵入したココと仝々の魔力を感じ取ったのだ。


「化け物が……!」

【……まぁ、良いとしよう。俺からお前達に2つ言わなければならない事がある。四天王以外には初めて言うことだ。】


 ENDはココ達二人に興味がなかったのか、自身の話を続行した。


【壇上の二人、ジンとメイは私が動けない間、この組織の(おさ)として務めてもらう。】


 ENDがそう言うと、兵が一斉に【ぅおおおーっ!!】と沸いた。そう、ENDの組織はENDが居なかろうとも変わることなく、凶悪さは失わないのだ。


第四十話 終

〖第二次均衡崩壊〗、『十星暗殺』、『悠死亡』、『メイとジン登場』、しかもみんなピンチ…どんどん最悪の展開になっていきますけど、もうちょっとだけ我慢してください!笑

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