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第三十九話 最後の晩餐

チョコ欲しいな……

 弱さはもう噛み締め飽きた。


────────────────────────


『えー、こちらアタスマ&ウルグペアだ。俺たちが向かったワンク1の世界、ビースト討伐済み、保護対象も保護済みだ。』


 ウルグはそういうとトランシーバーを切断し、ポケットにしまった。そう、アタスマ&ウルグペアはワンク1の世界に向かって、出動後なんと一時間で仕事を終えたのだ。

 悠と常に一緒にいるので隠れがちだが、ウルグは異世界警察内では超エリートなのだ。それに加え、MBU隊長のアタスマ、問題を冷静に対処できるこの2人なら想定の範囲内だった。


「しかし、自分で戦っておいて拍子抜けですね。ワンク1もこんなものなんですね。全盛期の悠がやられたっていうからどんな物なのかと思いましたよ。」

「ウルグさんの母校ってどこでしたか?」

「?UUY高校です。」


 UUY高校は、反異世界警察派の宗教「UUY(ウーウィ)教」が管理する学校である。宗教学校ではあるが、偏差値が非常に高いことで有名なので、UUY教信者でなくとも通う事が多い。


「あぁ、やはりそうでしたか。あの学校では〖均衡崩壊〗の真実を一部隠して教えているんです。」

「真実……?」

「はい。悠様は意外にも極度の幽霊恐怖症で……いつもなら簡単に攻略できたワンク『5』の世界も攻略出来なかったようです。」


 ウルグは思わず開いた口が塞がらなかった。また一段階、全盛期の悠の存在が恐ろしくなった。


「……帰ったら悠に話を聞くか。」

「最近、悠さんの成長が著しいですから。悠さんとして全盛期を超えて欲しいと思います。」


 そんなことを言いつつ、エレベーターに向かった。「帰り」ボタンを押して、いつも通り異世界警察署本部のある世界に戻った。


────────────────────────


 目に入ってきた世界は別のものだった。「夢を見ているよう」と人は言うが、これが夢なら悪夢以外の何物でもない。

 自分だけがなにかおかしなものを見ているようだった。


 エレベーターを降りたウルグが見たのは、エレベーターから引きずられた「血の跡」。

 そして、その先に見える“悠の姿”だった。


「朝霧!!息をしろ!!お願いだ……!!起きてくれ……!!」


 誰もが目視して一目で死んでいると分かった。目は少し開いて、虚を見ていた。そして、腹部は何かに刺されたように大量の穴が空いていた。V-ENOMは涙を流しながら悠の心肺蘇生を試みていたが、完全に再生不能だった。

 最早、治癒の余地すらなかった。全身に魔力がほんの少しも宿っていない。『治癒』は魔力を増幅させる事で、再生力を爆発的に上げる魔法。その術すら使用できないのが分かった。


「ゆ……う……?」


 僅かな希望すら見えない。ウルグの視界は暗闇に染まっていった。


────────────────────────


 数時間前、世界に出動した悠&V-ENOMペアは、世界に入った瞬間に異常に気がついた。エレベーター内はビーストのみならず、『理』の異常すら干渉できない、なのに世界に到着した瞬間、全身を針で刺されたような激痛が襲った。

 それは、「エレベーター内に干渉できない」という理すら壊してしまう程の、『魔力』だった。「化け物」や「怪物」と言った、人間の言葉で表すことすら不可能、全てが崩壊していた。


 エレベーターの扉がゆっくりと開いた瞬間、目に映ったのは「質量を得た何か」だった。


挿絵(By みてみん)


 異形、そして奇怪。五感全てが悲鳴を上げ、脳に恐怖を訴えかけていた。

 脳に直接響き渡る声と、恐怖の権化のような見た目で、悠は最早呼吸することすらままならず、その場に伏せるように倒れた。


「はぁっ……はぁっ……朝霧……!!」


 V-ENOMも動くことができず、かろうじて口を動かしてそう言った。未だ、その「何か」は動いてすらいない。


 だが、V-ENOMは一切警戒を解かなかった。このままでは魔力だけで殺されてしまう。だが、攻撃に備えなければそれも殺されてしまう。


 警戒をし、V-ENOMは「何か」を見続けていた……はずだった。

 コンマ単位で見たとしても、誰にも見えない。気がつけば悠は姿を消していた。V-ENOMが背後を振り返ると、悠はエレベーターの壁に串刺しになっていた。


 「何か」から出た触手によって、腹部を一突きされていた。


「おい……!!!朝霧!!!」


 V-ENOMは状況を信じられず、そう叫んだ。触手は悠の腹部を貫き、壁に刺さっていた。悠はV-ENOMを見ると、最後の力で少しの声を出した。


「……悪い……」


 次の瞬間、体内に侵入した触手は悠の中でまるで爆ぜるように肥大化し、悠の肉体を貫いて大量の触手が体内から出てきた。


「朝霧……朝霧!!!!」


 V-ENOMは最後の力で触手に攻撃して追い払うと、エレベーターのボタン「緊急脱出ボタン」を押した。


 数秒もしないうちに到着したが、エレベーターが開いた時には悠とV-ENOMどちらも気絶していた。

 だが、アタスマがいない今、誰も助けに来る人物はいない。



 数時間が経過し、僅かな力で目を覚ましたV-ENOMは、悠を助けなければならないと思い、必死に血だらけの悠を引きずって医者の元へ連れていこうとした。


「朝霧!!息をしろ!!お願いだ……!!起きてくれ……!!」


 涙を流してそう叫んでいた最中に、エレベーターの扉が開き、ウルグ&アタスマペアが到着した。

 誰も頭を働かせることもできない状況だった。悠は天国に向かったかもしれない。だが、ここは紛れもない地獄だった。


『ワンク???』

ビースト名 『???』

???


第三十九話 終

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