第三話 「久しぶり」
『くじらぐも』に吹き飛ばされた三人は、足を骨折したのか、動けないココを連れて、一旦陸に上陸した。
「く……タイミングが合わなかった。『治癒』の能力は今使えない。ココは俺が背負ってくよ。」
「すいません……」
悠はココをおんぶして、海岸から都市部に向かっていった。砂浜のような場所から、少し歩いただけで、道が整備されており、階段を登っていった先には、この世界の全てが集まった都市が広がっていた。
「なんて言うか……ここは未来か!?」
いかにも未来都市、というような風貌の、色とりどりなライトや高層ビルなどが建ち並び、バーチャル的な映像も映し出されている。
「こんなところに例の鯨……なんでしたっけ?」
「『くじらぐも』だ。危険生物の指名手配に載っていた。」
異世界警察も、警察なので『指名手配』という物があるのだ。ちなみに、ココやウルグはよく確認しているが、悠は一度も確認したことがない。
「その『くじらぐも』が突っ込んできたら……考えるだけで恐ろしいです。」
「ん、でも今までこの都市が安全だったってことはなんか結界的なものがあるんじゃないのか?」
「まぁ、そんな所だろうな。」
ウルグはそう答えると、何かに気がついたように右の方に離れていった。いかにも高級車、という見た目の車の鍵を少しいじって、悠の方に歩いてきた。
「あの車、乗れそうだな。」
「絶対盗難車!!!警察だよな!?」
そんな事を言いつつも、ウルグの運転で都市の中心部に猛スピードで向かった。
「一般市民を守らなければいけないからな。罪の一つや二つ、簡単に犯す。」
言い訳のようにそう言って、ウルグと悠は車から下りると近くの市民を探した。
「……あれ?市民全くいないぞ?」
「ココの怪我も治さなければいけないんだがな。『探索』は使えないのか?」
「えーっと……多分あそこだ!」
『探索』を使用した悠は、小屋のような場所を指さした。
「あの中に市民全員がいるっていうのか?」
「いや……」
そう言って悠は小屋の扉を開き、中へと入っていった。ウルグがついて行くと、その小屋内の汚さに驚いた。木の板や、木くずが散乱し、そもそも人が住めるような状態ではなかった。
「……!ここだ。」
そう言うと悠は木の板を動かし、木くずやホコリを擦って地面が見えるようにした。すると地面に設置された扉のような物が現れた。
「なんだこれ……」
ウルグは眉をひそめて、扉をどかしてその先の道を見た。そこはハシゴがかけられており、地下へと繋がる道になっていた。
そのまま降りていくと、地下の部屋は思ったよりも巨大で、数百人の人間が避難していた。
市民は警戒したようで、近くの「さすまた」のような物をこちらに突きつけて身動き取れないようにしてきた。
「誰だ!!」
「いやいや、別に敵対心はないです!仲間が『くじらぐも』に襲われて怪我を負って……」
「『くじらぐも』……?あの鯨のことか?」
頷くと、少しその人は迷っていた。だが、いかにも医師という見た目の人間が周りの市民をかき分けて来た。
「怪我人がいるなら直ぐに向かいます!」
周りの人間はあまり納得がいっていないようだったが、協力してくれるなら周りの事はどうでもいい。ハシゴを共に登って、車の中にいるココの治療をしてもらった。
「『治療』である程度の怪我は治りました。骨折も少々痛むかもしれませんが、明日になれば痛みも取れて何事も無かったかのようになるでしょう。」
「感謝する。」
ウルグがそう感謝すると、「いえいえ」と行って医師はまたハシゴから逃げていった。そんなに何かに恐れているのか?
「ココ、歩けるか?」
「はい!迷惑をかけてすいませんでした。」
「大丈夫だよ。」
三人も医師を追うように地下に潜った。すると、先程のように攻撃はしてこなかったが、全員怪訝そうな顔をした。そんな中、一人がこちらに向かってきて話しかけてきた。
「あんたら……その服、もしかして異世界警察か!?」
「は……はい。知ってるんですか?」
悠がそう答えると、全員が衝撃を受けたかのような顔で突然大喜びした。何が起きたのか、一瞬引いていたが、話しかけてきた市民が説明をしてくれた。
「すみません、例の鯨……『くじらぐも』が襲ってくるのも時間の内でしたから……怖くて怖くて……」
「え、結界とか何かがあるんじゃないですか?」
すると、キョトンとした顔で不思議そうにしていた。
「結界なんて……そんな便利な道具この街にはないですし、それを操れる技術者もいないですよ!」
「じゃあ、どうやって?」
そう聞くと、その人はニコニコの顔で一人のフードを被った男を連れてきた。そしてこちらを見ると説明を始めた。
「この方が鯨を能力で遠ざけてくれていたんです!」
「な……」
悠の頭の中はは困惑していた。普通、あれほどの魔物を遠ざけられるような力を持った人間はいない。
瞬間の出来事だった。フードの男を紹介していた市民の首が飛んだのだ。
「っ……!?」
皆が息を飲んだ。だが叫び声は発せなかった。反応する暇すらも与えてくれない。その場から身体が動かなかった。犯人は俺の目でしっかりと捉えていた。フードの男。
そしてその男はフードを脱ぐとこちらを向いた。そして、口角を上げてこう言った。
「久しぶりだな。朝霧悠。」
「まさか……お前……」
俺はその男を知っていた。そう、それも最悪の形で。
第三話 終
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