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第三十六話 海辺の悪魔

 世界の情報が来たら直ぐに報告しに行くという約束で、アタスマさんとウルグはペアではあるが各々の行動をとった。

 ウルグは『廃品回収』の能力で武器などを準備しておき、一人で特訓をしていた。


 アタスマさんによれば、「体術を優れさせるべき」との事だった。遠距離から近距離まで、全てに対応できている能力なので、近距離の体術を極めて、能力頼りにしない事が大切らしい。


────────────────────────


 一方の坂本慎一は、煙草をふかしながら電話をしていた。「あぁ」や「了解だ」などと返事をしていたが、電話を切ると急いで魔王に話しかけた。


「出動だ、シガール・オウマ。」

「は……はい!」


 坂本慎一は、Tシャツの上から上着を羽織ってエレベーターへ向かった。異世界警察だと言うのに、MBU隊長達は全くもって警察らしい服装をしていない。



「あの……危険世界って誰がどうやって発見してるんですか?」


 エレベーターがある部屋へ向かう道中、魔王は気になってそう聞いた。


「研究班がいる。そいつらとこっそり連絡を取っているから、十星にバレずに勝手に出動できる。」


 そんなことを話していると、直ぐにエレベーターのある、『マスタールーム』に到着した。坂本慎一は、トランシーバーを出すと、MBU体調達に連絡を送った。


『えー、坂本慎一から連絡だ。ワンク1の世界が発見されたので出動させてもらう。』


 そう言うと坂本慎一はトランシーバーの通信を切って、エレベーターに乗った。魔王も急いで乗り込み、坂本慎一についていった。


「ビーストの力は未知数だ。『ワンク1』とは言え、『旧5』超えの可能性だってある。エレベーターが開いた瞬間から緊張を解くな。」

「はい!」


 エレベーターの出た先は便所だった。魔王は自身の能力、『創造破壊』で直ぐにピストルを創り出すと、警戒しながら便所の個室を出た。


「!……ここ、海か。」


 便所を出て直ぐに見えたのは砂浜だった。そして広がる青い海。先程の便所はビーチのものだった。

 美しい景色とは裏腹に、市民の姿は見当たらない。海に対する街を見ても人っ子一人見つからなかった。


「どういうことだ。街があんのに人がいない。」

「まさかここも保護対象が……」

「お前ネガティブだな。ムカつく奴だ。」

「う……酷い……」


 そんなことを言いつつも、警戒して街に入っていった。


「……構えろ、シガール・オウマ。」

「え……」

「構えろ。」


 坂本慎一は怒鳴ることも無かったが、静かにそう言った。警戒状態の慎一は、近くで動いた微量な魔力すら感じ取った。


「……出てこい!こっちから行くぞ!」


 慎一は煙草の火を振って消すと、地面に投げ捨てた。ビーストが魔力を潜めている可能性もある。


「ちょ……ちょっと待ってくれ!」


 聞こえて来たのは、想像しているよりも高い声だった。魔王が声の方向を見ると、そこには無害そうな少年がいた。


「大丈夫ですか!?」

「待て。」


 走り寄ろうとする魔王を慎一は止めた。


「保護対象を守るだけが正義じゃない。焦るな。それに……あのガキがビーストだったらどうする。」


 そう言われると、魔王は先程しまったピストルをもう一度取り出した。


「そこから説明しろ。どういう状況だ。」

「ぜ……全員食われちまった……お母さん(おっかあ)も……お父さん(おっとう)も……!!」


 涙をうかべて少年はそう言ったが、警戒をとく訳にも行かず、坂本慎一はもう一度煙草に火をつけた。


「具体的に説明しろ。生存者はお前以外1人も居ないのか?」

「俺以外に一応3人いる……地下のシェルターに食料を持って逃げちゃった……」

「この世界の理の異常は……知るわけねぇか。」


 慎一は煙草の煙をユラユラ揺らし、少しの間考えた。


「シェルターに戻れ。俺の前に居られると、殺さなきゃいけなくなる。」

「っ……えぇぇぇん!!」


 泣き叫んで少年は走り去っていった。魔王は少し不憫に思えて、慎一に異を唱えた。


「流石に可哀想じゃないですか?」

「さっきも言ったろ。あいつがビーストだったらどうする。それで俺たちが殺されるのが保護対象を殺されるより「最悪」だろう。」


 納得は行かなかったが、言い返すこともできず、魔王は黙って慎一についていった。

 完全な都市ではないが、それなりに文明も発達しており、ビルも数件立ち並んでいた。慎一は止まることなくすいすい壁を駆け上がり、簡単にビルの屋上まで登った。

 魔王も魔法で必死について行き、数分してからようやく追いついた。


「街に大した損傷もない……そうなるとビーストは人型の奴か。」


 街は少し壊れた跡があるが、壊滅状態という程でもない。一ヶ月もすれば復旧できそうなレベルだ。

 砂浜を囲むように出来たこの土地は、至る所に「魚」の文字が見える。やはり海に頼り切りな街なのだろう。


「ちっ……やはりあのガキが……」


 そう言って慎一が少年を殺害しに行こうとした、その瞬間だった。

 大地は揺れ、空気は震えた。天は叫び、海は……


 怪物を生んだ。


〖ヴゥオオオォォオオオ!!〗


 海をまるで割るかのように現れたその怪物は、耳を劈くような咆哮を上げた。その大きさは、山と同等だった。


「そういう事か……!!この街は海が中心……海中のビーストが凶悪化したことで市民は全員食われたのか……!!」

「みんな海の近くに居たから街の被害も少なかったんですね……なんて残酷な……!!」


 そう、海面付近に集まっていた市民は、突然の自体に対応出来ず、怪物によって殺戮されてしまったのだった。


『ワンク1』(『旧5』)

ビースト名 『ヴァイレント』

確認済み。


第三十六話 終

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