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第三十五話 〖第二次均衡崩壊〗

「何が……起きてんだ……」


 悠は半分夢や幻を見ている気分だった。というか、そう信じたかった。

 十星の半数……『火星(マーズ)』『土星(サタン)』『天王星(ウラヌス)』『海王星(ネプチューン)』『冥王星(プルート)』……五人全員が血だらけで、自身の玉座に倒れ死んでいた。

 魔力は微量も流れておらず、身体も全く動かない。悠は状況を飲み込むことが出来なかった。

 そんな時、突然後ろから何者かに肩を叩かれた。いつもの悠なら警戒して攻撃していたが、今は絶望で何もすることができなかった。


「朝霧 悠、ここはまずい、場所を変えて説明するぞ。」


 声の主は坂本慎一だった。悠は言われるがままに移動し、気がついた時には、暗い地下の部屋の様な場所にいた。簡単なレンガの床と壁に、汚い土の天井。


「悠さん!」


 その部屋には、ウルグやココ、魔王やアストラ、そしてMBU隊長達が全員集まっていた。


「チッ……〖第二次均衡崩壊〗について説明したかったんだが……そうも行かなそうじゃねぇか。」


 仝々はそう悪態をつくと、貧乏ゆすりをしながら舌打ちをしていた。


「まずは何から説明すればいい?蒼皇の人見知りについてか?ENDの襲撃の時も一言も話さなかったもんな。」


 そう言ってV-ENOMはゲラゲラ笑っていた。白髪の蒼皇は興味が無さそうに無視していた。

 するとアタスマさんはV-ENOMを無視して話し始めた。


「悠さん、私たちもまさかとは思っていましたが……本当に「そう」だったとは……」

「どういうことですか……アタスマさん……!」


 アタスマさんは言いずらそうに話し始めた。


「十星のうち……五人を暗殺したのは……“貴方”です、悠さん。そして貴方はその記憶を失っています。」


 アタスマさんはハッキリとそう言い切った。


「貴方の右腕として仕えていたキル・アストラ様のことを含め、貴方は〖均衡崩壊〗以前の出来事の記憶を断片的に失っています。その条件は分かりませんが……失っているのは確かです。」

「あともう一つ……」


 窓がなく密閉空間なので気を使っているのか、坂本慎一はタバコを吸わずに話した。


「お前が十星を暗殺したのは、〖均衡崩壊〗「後」だ。何故なのか、お前はその記憶すら忘れている。」

「〖均衡崩壊〗の後に俺が十星を……!?」


 均衡崩壊以前の出来事は、全盛期悠の行ったこと。持つ力も違い、人格も違う。なので簡単に飲み込むことが出来た。

 だが、均衡崩壊後となると話は変わってくる。周りが信じられない中、唯一信じられた自分自身すら信じられなくなってしまったのだ。


「……悪いが……〖第二次均衡崩壊〗の説明もしないといけねえ。お前の気持ちは後だ。」


 仝々は少し気まずそうにそう切り出した。悠は状況を飲み込めなかったものの、仕方が無いので頷いた。


「朝霧 悠はENDからある程度聞いたはずだ。今まで『ワンク1』の強さだった物が『ワンク5』と同等の強さになった。……ちなみに、昔の『ワンク1』を『旧1』って言って、今のを『ワンク1』っていうらしいぜ。」


 V-ENOMはそう説明した。ウルグ達は状況があまりにも信じられず、絶句していた。すると次は仝々が話し始めた。


「今も物凄いスピードで『危険世界』の保護対象がいなくなっている。十星からの指示じゃ、「まだ行くな」だってよ。」


 すると仝々はフードの下から目の光だけを覗かせて、全員の顔を一人ずつ見た。


「お前ら行かないわけねぇよな。」


 フードで隠れて何も見えなかったが、笑みを浮かべているのは分かった。


「一人につきMBU隊長を一人つける。そうじゃねぇと多分全員即死だ。……朝霧 悠とアストラ、じゃんけんしろ。」

「なんでだ?」

「どっちかは蒼皇(ハズレ枠)と行ってもらう。」


 アストラと悠は同時に顔を引き攣らせた。意思疎通が出来ないのは異世界警察にとって致命的すぎた。


 じゃんけん後、決まったペアは、


『悠&V-ENOMペア』

『ウルグ&アタスマペア』

『ココ&仝々ペア』

『魔王&坂本慎一ペア』

『アストラ&蒼皇ペア』



「やだぁぁぁあああ!!!こんな無口にボクが釣り合う訳ない!!!」

「……何も否定できないな……」


 ウルグは否定しようとしたが何も思いつかなかった。

 悠は何も考えられないのか、思いついた面持ちで床を見つめたまま、一言も話さなかった。


「各自世界の情報を受けたら直ぐに向かってくれ。それじゃあ俺は煙草を吸いに行く。」


 坂本慎一はすぐにでも吸いたかったのか、部屋を出る前に煙草を咥えていた。


「あ……ちょっと待ってくださいー!!」


 魔王は慎一のペアなので、煙草を吸いに行った慎一を急いで追いかけた。


「ココロ・シンリー、お前はいちばん弱いらしいからな。修行しに行くぞ。」

「えぇ……!?まぁ、はい!!」


 ココは突然だったので困惑しつつも、仝々を追いかけた。



────────────────────────


「何故お前が弱いか分かるか?ココロ・シンリー……ココロ・シンリーって長いな。なんかあだ名つけよう。」

「あ、ココって良く呼ばれます!」

「じゃあそれでいいか。」


 仝々は何をしたのか、トレーニングルームの天井に逆向きに立って話していた。


「お前はなぁ、1パターンしか攻撃手段が無いんだよ。ほら、例えばこの的に攻撃してみろ。」


 そう言って仝々は射的の的のような物を出した。ココはピストルを抜くと、一瞬で的の中心を見事に撃ち抜いた。


「他は?」

「え……無いです。」


 仝々は半分呆れて笑ってしまった。すると仝々は天井から降りて着地した。


「次の世界に行くまでに……お前の攻撃方法を“5倍”にしてやる。」

「5……5倍!?」


第三十五話 終

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