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第三十四話 混沌

『登場人物』


【朝霧 悠】

 この物語の主人公。世界最強であったが、『世界切断』という事件を経て弱体化してしまった。昔自分にかけた魔法によって数千年という時を生きている。使う武器は『叢雲』で、58364個もの魔法を使用できる。

 『叢雲』の魔力を借りる『〆桜』を使用する。

【ウルグ・ハース】

 悠の相棒。常に冷静で、表情筋を使ったことないのではないか、という噂がたったことがある。

【ココロ・シンリー】

 皆にはココと呼ばれている。異世界警察では珍しい女性の警察官。基本的にピストルを使用して戦う。

【魔王】

 悠やウルグ達と同じ特別警官。『創造破壊』の能力の強さで昇格した特例。気弱な性格。

【キル・アストラ】

 自己陶酔という言葉が似合う男。悠に勝るナルシストっぷり。一言一言が名言と言われている。

【END】

 世界最悪のビースト。悠の全盛期と張り合える程の実力があり、『世界切断』当時からの唯一の生き残り。様々な世界を徘徊している。

【スペード】

 四天王こと【獄牌覇王四ノ虚】の1人。魔力操作を得意とする。見た目は子供。

【ダイヤ】

 【獄牌覇王四ノ虚】の1人。侍の見た目の老人。

【ハート】

 【獄牌覇王四ノ虚】の1人。おかめ面を被っている女。

【クローバー】

 【獄牌覇王四ノ虚】の1人。水色の美しい髪に似合わぬほど性格が荒々しい。


『世界の種類』


【純世界】

 ビーストがおらず、保護対象だけが存在する平和な世界。異世界警察が出動する必要はない。

【純正世界】

 純世界に加え、『理』の異常が存在しない世界。異世界警察署本部があるこの世界のみが発見されている。

【危険世界】

 ビーストと保護対象が存在する世界。

【超危険特別処理世界】

 ワンク5の世界。パトロール中の特別警官は全員出動する必要がある。

【空世界】

 ビーストも保護対象も存在しない世界。数年もしないうちに世界の存在自体が消滅してしまう。

「はっ……捕まっといて態度だけはデカイんだな。」

「そう思うか。」


 瞬間、悠は首を絞められているかのような魔力の圧を感じた……気がした。十星の『魔力封じの刀』によって魔力は完全に封じられている。それでも生物としての圧は消えていなかった。

 

「今も貴様の首が欲しくて仕方がない……目の前に餌を用意された獣だ。食われても文句はなしだぞ……」

「馬鹿が、食われるわけねぇだろ。」


 悠は反発するようにENDを睨んでそう言った。悠は猛獣が囚われているかのような檻の前に座ると、口を開いた。


「なんで……『〆桜(しめざくら)』が通用しなかったんだ……!?」

「ほう、気がついていたのか。流石だな、朝霧 悠。」


 子供をあやすようにENDはそう言った。少しでも優位に立とうとしているENDに嫌気が刺した悠はキッとENDの目を睨んだ。

 そう、ENDは〆桜の攻撃が当たったかのように振舞っていたが、実際はかすり傷にすらなっていなかったのだ。


「そもそもだが……俺が貴様にそれを教える必要性を言って欲しいものだ。」

「まぁそれもそうだ……」


 悠の事など目に入らないかのようにそういうENDに、思わず悠はそう言ってしまった。だが、悠は何かを思い出したかのように話し始めた。


「そういえば……「死」ってなんの事なんだよ。お前が「死」?」

「……初めにそれを言った時の反応でなんとなく察していたが……やはり“覚えていなかったか”。」


 「覚えていなかったか」。ENDはハッキリとそう言った。悠の頭にはまた「記憶喪失」という考えがよぎった。

 そんな時、悠は何かを少し思い出しそうになったが、突然頭が痛くなってきて何も思い出せなかった。


「どういう事だ……!?」

「俺の能力は貴様が全盛期の時に教えてあった。貴様は記憶を失っている。」

「そんなことはどうでもいい……教えろ、お前の能力を。」


 先程から悠は頭痛が止まらなかったが、ENDの能力を聞くことが最重要だと分かっていたのでそう聞いた。


「……そんなに知りたいなら教えてやろう。俺の能力は先程も言った通り「死」。万物に「死」を与えているのは()。「寿命」も「他殺」も「自殺」も……何もかも俺の手で行われる行為だ。」


 そう聞いた悠は、思わず檻の奥のENDの胸ぐらを掴んだ。魔力でバリアが貼られていたので、腕を焼けるような痛みが襲ったが、そんなことどうでも良かった。


「お前……何を言ってるか分かってるのか……!?」

「聞いたのは貴様だろう。今も世界で誰かが死んでいる。それも全て俺の能力。」

「ふざけんな!!!そんな事がある訳ない!!!」

「凡人に天才の思考は理解できないか。俺の能力は『理』そのもの。ここまで言えばわかるな?貴様が『世界切断』をした時、『理』は歪んだ……そして生まれた存在が俺だ。」

「なら『不死』の世界は……」

「言い換えれば、『俺の能力を防ぐ』というのが理の異常だ。太古の昔からこれは繋がれてきた……当然の出来事だ。昔分かれていた七つの世界……そんなことよりも前からだ。」

「お前……なんで平然とそんなことが……!!」

「あぁ、一つ語弊があったな。『世界切断』で生まれたと言うよりも、その際に俺に能力が移っただけだ。元は他の者の能力だ。」

「END……てめぇさっきから誰と喋ってんだ……俺の事なんて全く見ずに……」

「最初から貴様となど話していない。私が話しているのは」


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 ENDは悠と会話をしているはずなのに、まるで悠のことを見ていないようだった。


「だが貴様、そんな呑気にしていていいのか?」

「……どういうことだ!?」

「MBU隊長達の間では騒ぎになっているだろう。名付けるならば……〖第二次均衡崩壊〗。」


 ENDのその低い声は無限牢獄内に響き渡り、悠の心臓にまで届くようだった。


「俺はスペードに「ビースト」について研究させた。何故だか分かるか。」

「どういうことだ……!?」

「全てのビーストを強化した。分かりやすく言おうか?今までの『ワンク5』は……“これからの『ワンク1』”だ。」


 悠は混乱した。


 思考が理解を阻んだ。全盛期の悠が太刀打ち出来なかった、〖餓者髑髏(がしゃどくろ)〗の存在する世界が『ワンク5』だ。それが……『ワンク1』と同等に?


「そ……そんな訳ないだろ……?」

「ふっふっふ……はははは!!!貴様のその絶望する顔が見たかった……はっはっは……はははは!!はははははははははははははははは!!」


 ENDは狂ったかのようにただそう笑い続けた。悠は目を見開いて、絶句することしか出来なかった。頭が回らず、理解が出来なかった。


「そのせいで……いくつの世界が失われると思う……!いくつの命が……」

「ならば俺に怒りをぶつける前にその「命」とやらを救ってくればいいんじゃないか?」


 悠は挑発してきたENDを殴ろうとしたが、これでは思惑通りだと思い、静かに拳を下げ、掴んでいる胸ぐらを離した。


「お前は……何がしたい……!?何が目的なんだ……!?」


 悠は正直、全くもってENDの目的が分からなかった。

 てっきり、ENDがサンを蘇らせようとしているのは、ENDがこの世界の成り立ちや、自身のことを知りたいという欲求からだと思っていた。だが、ENDは悠よりも知識があった。

 ならばその目的は?

 ENDは口を開いたかと思うと、砂漠のように乾ききった声で言った。


「万物に死を与えるのは俺の義務だ。目的も何もない。」


 悠に不快感を抱かせようとしている訳でもない、自分を着飾り格好つけようとしている訳でもない。

 ただ事実を述べるかのようにENDは淡々とそう言った。まるでそれが当然のことかのように。

 最早、悠は怒りを言葉にすることすら出来なかった。


 だが、ENDは自分が何かおかしなことを言ったとも思っていなかった。だからかもしれない、ENDは悠にあることを言った。


「十星のいる……『じゅうの部屋』へ乗り込め。そうすれば貴様の求めているものが見つかる。」


 ENDのくだらない唆し、いつもなら悠はそう思って簡単に無視できた。だが、今混乱状態の悠は、藁にもすがる思いでその言葉を信じてしまった。


 悠は無限牢獄を早々に去ると、走って『拾の部屋』へ向かった。魔法で厳重なセキュリティが張られているが、悠なら簡単に突破できる。

 悠はセキュリティを乗り越えると、拾の部屋の扉の取っ手に手をかけた。冷たい金属の取っ手が、まるで悠に「入るな」と警告しているようだった。

 だが、悠は気にもとめずに扉をこじ開けた。


「……は?」


 悠は、口から息のようなか細い声を出してそう言うことしか出来なかった。

 何席か空席があった。元々空いていた『太陽(サン)』に加え、『(ムーン)』『木星(ジュピター)』『金星(ヴィーナス)』『水星(マーキュリー)』『地球(アース)』。

 その他五人の十星は……


()()()()……」


 落ちていく───

 まだまだ下へ───暗い闇へ───


第三十四話 終

ENDの「貴様だ」ってやつ、こういうの「第四の壁」って言うらしいですね。

────────────────────────

ちなみにここからは小ネタですが、『死』ってキャラクターは実は『最高のモブキャラスキルで世界征服する』っていう僕が初めて投稿した作品に出ているキャラクターなんですよね。

世界が誕生する前から『死』という能力は継承されていて、異世界警察に対しても、第四の壁越しの僕らに対しても、例外なく全ての物に『死』を与えているのが『死』っていう設定です

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