第三十一話 『MBU隊長』
『登場人物』
【朝霧 悠】
この物語の主人公。世界最強であったが、『世界切断』という事件を経て弱体化してしまった。昔自分にかけた魔法によって数千年という時を生きている。使う武器は『叢雲』で、58364個もの魔法を使用できる。
『叢雲』の魔力を借りる『〆桜』を使用する。
【ウルグ・ハース】
悠の相棒。常に冷静で、表情筋を使ったことないのではないか、という噂がたったことがある。
【ココロ・シンリー】
皆にはココと呼ばれている。異世界警察では珍しい女性の警察官。基本的にピストルを使用して戦う。
【魔王】
悠やウルグ達と同じ特別警官。『創造破壊』の能力の強さで昇格した特例。気弱な性格。
【END】
世界最悪のビースト。悠の全盛期と張り合える程の実力があり、『世界切断』当時からの唯一の生き残り。様々な世界を徘徊している。
【スペード】
四天王こと【獄牌覇王四ノ虚】の1人。魔力操作を得意とする。見た目は子供。
【ダイヤ】
【獄牌覇王四ノ虚】の1人。侍の見た目の老人。
【ハート】
【獄牌覇王四ノ虚】の1人。おかめ面を被っている女。
【クローバー】
【獄牌覇王四ノ虚】の1人。水色の美しい髪に似合わぬほど性格が荒々しい。
『世界の種類』
【純世界】
ビーストがおらず、保護対象だけが存在する平和な世界。異世界警察が出動する必要はない。
【純正世界】
純世界に加え、『理』の異常が存在しない世界。異世界警察署本部があるこの世界のみが発見されている。
【危険世界】
ビーストと保護対象が存在する世界。
【超危険特別処理世界】
ワンク5の世界。パトロール中の特別警官は全員出動する必要がある。
【空世界】
ビーストも保護対象も存在しない世界。数年もしないうちに世界の存在自体が消滅してしまう。
「フッフッフッ……ハッハッハッ!!まだ私もハートも一歩も動いていないのに王手とは……朝霧悠、生憎力は強くなったが頭は弱くなったようだな。」
「【俺が〆桜解放した時ビビって動いてたじゃねぇか。】」
悠は別に挑発の意図なくそう言ったが、ENDは静かに怒り、魔法陣を更に複雑なものにした。
「蹴散らせ……『くじらぐも』。」
そう言ってENDは『召喚』の能力を発動した……が、何も現れることはなかった。
全員が沈黙し、静寂に包まれる。だが、悠は何かに気がついた。
「【風が強い───】」
【一、二、三】
その時には既に遅かった。目の前からくじらぐもに突進されて、悠は異世界警察署本部のビルひとつを破壊して吹き飛ばされた。
「くじらぐもは常に雲隠れになっている事で、飼い主である俺と、四天王……【獄牌覇王四ノ虚】以外知覚することすらままならない。攻撃する時のみ、姿を現す。風が強い事に気がついたのは褒めてやる。だがそれまで。」
そう言うと、ENDは『くじらぐも』を寄せ、異世界警察署本部を壊すように指示を出した。
すると、くじらぐもは勢いをつけ、異世界警察署本部に突撃していった。これでビルは破壊され、全てが終わる。ENDは思わず笑みを浮かべてしまった。
だが、勢いをつけて突撃したくじらぐもも、その場で一瞬にして停止してしまった。
「異世界警察署本部を壊されては困りますので。お引き取り願いますでしょうか。」
そう言ってくじらぐもを止めていたのはアタスマ・メルシーであった。だが、ENDが想定外の自体に驚愕していたのはそれだけではなかった。
アタスマ・メルシーを中心に、5人のMBU隊長が並んでいたのだ。その内1人は吹き飛ばされたはずの悠を片手に抱えていた。
「MBU……!!」
【「アタスマ・メルシー」「坂本 慎一」「仝々《どうどう》」「V-ENOM」「蒼皇」……全員本物ですわ。牢獄に捕まっているはずでは。】
「全く……あなた方のせいで十星達に怒られそうになったんですよ!!」
アタスマがそう怒鳴ると、特徴的なメガネを頭に付けている女性、V-ENOMが笑いながら口を開いた。
「いいじゃねぇか、あんな場所つまんねぇから出てきたんだよ!」
そう、牢獄に捕まっていた4人のMBU隊長は自身の力で勝手に抜け出してきたのだ。
V-ENOMに続くように、煙草をふかしている坂本慎一は煙を吐いて言った。
「ENDの気配がしたんだ。あんな場所で大人しくしている方が阿呆らしいだろう。それに、今日は祝いだ。」
「【祝い?】」
坂本慎一に抱えられていた悠は思わずそう聞いた。悠に意識があることに気がついた慎一はその場に悠を放り捨てた。
「【ぐえっ】」
「よく見ておけ、これが先輩の背中だ。」
そう言うと、慎一は煙草をくじらぐもの体に近づけた。
「蟠。」
瞬間、煙草の煙は渦巻き、くじらぐもの体を円状に貫いた。
「【先輩って……】」
悠が困惑してそう聞くと、アタスマさんはニヤリと笑って言った。
「悠さんは今日からMBU、第6の隊長になったのです。」
「【はぁ!?!?】」
想定外すぎる出来事に、悠が思わずそう叫ぶと、ENDは段々とイライラしてきたのか、魔法陣をさらに強化した。
「『召喚』。」
瞬間、魔法陣からは溢れんばかりの大量のくじらぐもが現れたが、やはり悠にはその姿が見えなかった。
「【やっぱ何も見えないぞ?】」
悠が目をこらしてそう言うと、フードを被り、その下の姿が全く見えない「仝々《どうどう》」がボソボソと言った。
「魔力操作が一流になれば魔力の流れを視覚化することができる。シガール・オウマはその極地まで辿り着くことができたんじゃねえか?」
そう、魔王は魔力の視覚化を最大の極地まで極めた結果、流れを読み取り、次の攻撃まで読めるようになったのだ。
瞬間、仝々はポケットから短刀を取り出し、くじらぐもの体に突きつけた。
「『巨大化』。」
瞬間、仝々の持つ短刀は巨大化し、くじらぐもの体を貫いた。そのまま仝々は刀を辺りに降ると、くじらぐもをどんどん切り裂いていった。
「その程度でくじらぐもが死ぬとでも思ったのか。」
真っ二つになり、悠も視認出来るようになったくじらぐもだったが、その体はまるで名前通り「雲」のようにふわふわと浮かんでいた。だが、その体からは血液も流れなければ、消滅することもなかった。
瞬間、全員の思考が停止するような出来事が起こった。くじらぐもは辺りの雲と融合すると、さらに巨大化していき、巨大な怪物となったのだった。
「なんだこりゃあ!?!?」
V-ENOMは大口を開けてそう叫んだ。
【天までとどけ 一、二、三】
瞬間、くじらぐも達はビルに突っ込むと、異世界警察署本部をどんどん破壊していった。
「おい、V-ENOM!例の術で止めれねぇのか!」
「うるせえ仝々!こんなでかいヤツに効かねえよバーカ!」
「猿じゃねぇんだ。静かにしろ。」
慎一は叫ぶV-ENOMを静かにさせると、煙草の煙を吐いてとある提案をした。
「このままやらせとけば十星が出てくるだろ。俺たちがやる必要もねぇ。」
仝々とV-ENOMは「あぁん!?」と叫んで文句ありそうだったが、慎一は無視して、街の方を向いた。
異世界警察署本部とは離れた場所にある、市民が住む街。あちらに超巨大なくじらぐもが向かっていた。
「おいEND。あのくじらぐも妙にでかくねぇか。お前何しやがった?」
「坂本慎一。何かあると思うなら止めればいいんじゃないか。貴様の師匠も居るんだろう?」
「お前が出していい名前じゃねぇ。」
慎一は怒鳴ることもなかったが、静かにそう言うと、全員に向かって叫んだ。
「街に向かってるくじらぐもだけ止めろ!あとは十星にやらせとけ!」
「全く……面倒くさい男だ坂本慎一。」
そう言うと、ENDはハートを元の世界に戻らせた。すると、ENDは宙が裂けた虚空のようなゲートから降りてきた。全員の視線がENDに集まった瞬間、全員が一斉にその場に膝を着き倒れた。
「【な……なんだ……!?】」
「体が動かねえ……!」
異世界警察最高クラスの実力を誇るMBU隊長ですら、その場で動く事が出来ていなかった。
「黙って……行かせるとでも?
跪け。塵共。」
第三十一話 終
話のストックが足りなさ過ぎて尽きそうなので、1週間だけ投稿を休止します。すみません




