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第三十話 襲撃 

『登場人物』


「朝霧 悠」

 この物語の主人公。世界最強であったが、『世界切断』という事件を経て弱体化してしまった。昔自分にかけた魔法によって数千年という時を生きている。使う武器は『叢雲』で、58364個もの魔法を使用できる。

「ウルグ・ハース」

 悠の相棒。常に冷静で、表情筋を使ったことないのではないか、という噂がたったことがある。

「ココロ・シンリー」

 皆にはココと呼ばれている。異世界警察では珍しい女性の警察官。基本的にピストルを使用して戦う。

「魔王」

 悠やウルグ達と同じ特別警官。『創造破壊』の能力の強さで昇格した特例。気弱な性格。

「END」

 世界最悪のビースト。悠の全盛期と張り合える程の実力があり、『世界切断』当時からの唯一の生き残り。様々な世界を徘徊している。

「スペード」

 四天王こと【獄牌覇王四ノ虚】の1人。魔力操作を得意とする。見た目は子供。

「ダイヤ」

 【獄牌覇王四ノ虚】の1人。侍の見た目の老人。

「ハート」

 【獄牌覇王四ノ虚】の1人。おかめ面を被っている女。

「クローバー」

 【獄牌覇王四ノ虚】の1人。水色の美しい髪に似合わぬほど性格が荒々しい。

「【死ぬ覚悟……?】」

「えぇ。」


 そう言うと、アタスマさんは一瞬の間に悠の背後に回って、悠が気付かぬ間に正座をさせて話し始めた。


「【っ……な……!?】」

「私の過去の役職……悠さんならご存知ですよね?」


 そう言うと、立ち上がろうとした悠の身体を固定して、話しながら一瞬で悠の髪型を整えて、モヒカンやらなんやらいじっていた。


「私の昔の役職は異世界警察の『暗殺部隊』、通称『MBU』の1番隊、『MBU-1』のTOPです。全盛期の悠さんがお作りになられた裏の組織です。『1〜5』のTOP5人は異世界警察最高戦力ともされます。」


 『Midnight Blood Unit』、略して『MBU』。十星を除く異世界警察の中での最高戦力。朝霧悠全盛期に悠への忠誠を誓っていた5人がMBUのTOPに位置する。

 アタスマ以外のMBUリーダーは十星によって地下の牢獄に囚われており、その存在を話すことも許されない。


「現在の悠さんは本来の悠様の力を取り戻せないどころか、現在眠っている自身の力すら発揮出来ていません。私は悠様の力を取り戻すことは出来ません。なので、悠さんの力だけを起こさせて頂きます。」

「……なんかアタスマさんって怖いですね。」

「あぁ、あの人以外と怖いぞ。」


 ココとウルグがそんなことを話していると、アタスマさんはまるで獣の本能かのように、グルンッと頭を回してウルグを睨んだ。地獄耳なのかもしれない。


(俺の周り全員怖い。)

「悠さんの全盛期から生きてるって……アタスマ見た目の割におばさんなんですね。」

(あぁ……魔王も怖い。)



 こうして悠と、3人はアタスマさんに特訓をしてもらうことになった。初めの1週間は攻撃どころか、まともに歩くことすらままならなかった。

 1番初めにまともに動けるようになったのは悠、次に戦闘IQの高さからウルグであった。恐らくその前日にアフロにされたのが相当気に食わなかったのだろう。

 その後直ぐに魔王も動けるようになった。恐らく技術というよりも、魔力を捉えやすい“目”が役立ったのだろう。

 ココはアタスマさんに丁寧にアドバイスを貰ったことで、一ヶ月してようやく動けるようになった。


────────────────────────


 半年が経過した。朝からアタスマさんとの特訓を終え、午後には情報を受け、ワンク3の世界をなんとココ一人で攻略した。


 喜ばしい成長の裏で、アタスマさんは十星に呼ばれ、関係者以外立ち入り禁止の『じゅうの部屋』に来ていた。


「パトロールマスター及び、『MBU-1(のいち)』隊長、「アタスマ・メルシー」です。」

「おぉーっ、アタスマちゃん久しぶりだねぇ。元気してた?」

「おい、『金星ヴィーナス』。貴様の吐いた息を吸いたくない。静かにしておれ。」


 アタスマが入ってきた扉を中心に、十星の十人が半円形に座っている。かろうじで見えるのは扉の外から入ってくる光のみ。アタスマが覚えている限りだと、先程『金星ヴィーナス』を(たしな)めた声は恐らく『木星ジュピター』であろう。

 そんな2人など目に入っていないかのように、どこかから、『ムーン』の声が聞こえてきた。


「アタスマ・メルシー……半年ほど前から朝霧悠達の修行をしているそうではないか。老兵なりに職務をまっとうしてくれて有難いよ。」

「そうですね。いつまでも椅子に座り続けるだけのボンクラにはなりたくないと思っています。」


 アタスマさんが皮肉を込めてそう言い放つと、数人が怒りで魔力の「圧」をアタスマさんにかけた。


「『ムーン』、何も私たちは口論をするために呼んだわけではないだろう。口を慎みたまえ。」


 今にも口論を始めそうなムーンをマーキュリーが止め、きちんと本題を話し始めた。


「おい、アタスマ・メルシー。貴様、朝霧悠の特訓をするというのならせめて少しくらい力を使ったらどうだ?」

「お褒めの言葉有難いです。ですが過大評価ですよ。私は司令通り『魔1(まいち)』程は解放したつもりです。」


 『魔1』というのは、自身の力を10としたうち、1割を使用しているという意味である。


「ところでなのだが……メルシー、君に質問したいことがあってね。」

「何でしょうか。」

「君は地下の……」


 そう『木星ジュピター』が話しかけた瞬間、地面が揺れ始め、アタスマさんはその場に膝をついた。


「地震……!?」

「おい!どうなっている!?」


 『木星ジュピター』が叫ぶと、『(ムーン)』が少し考えてからゆっくりと答えた。


怪物(バケモノ)の咆哮だ。」




 アタスマさんが上に呼ばれたことで暇をしていたウルグはバーエリアでワインを片手に考え事をしていたが、そんな時突然、外で異常な爆発的な魔力が発生した。


「っ……なんだ……!?」

「ウルグ、出るぞ!!」


 そう言うと、悠は右手で叢雲を掴み、ウルグの横を通過した。そして、いとも簡単に窓ガラスを破って外に出ると、壁を駆け上がって屋上まで上がった。


「……魔力で何となく分かってはいたけど……やはりいざ対峙すると恐ろしいな。『END』!!」

「興奮するなよ、朝霧悠。そう簡単に玩具は壊したくない。」


 宙が裂け、虚空から出てきたのはENDであった。ENDは悠の事など目も向けずに異世界警察署本部だけをジッと見つめると、指で宙に魔力で魔法陣を描いた。


「『召喚サモン』。」


 そう唱えると、魔法陣からは奇妙な“何か”が生まれ、悠の前に「ベチャッ」と落ちてきた。


「【スペード】についでに研究してデータを貰ってあったんだ。貴様と同じだ、私も使用できる魔法の量は膨大。」

「『おとろし』……」


 悠の前に落ちてきたのは、狂ったような怒りの形相の『おとろし』だった。

 悠が叢雲の『紫煙』を解放してようやく倒すことができた神社に宿る妖怪。


「お前と戦った時は狛犬を倒した程度だったらしいが、私は研究で最高まで怒らせた状態にする事が可能になっ……」


 話している途中に、悠は叢雲を抜刀して、地面に刺した。


「説明が長い。」


 悠の言葉に呼応したかのように、一瞬大気に魔力が満ちると、太刀筋すら見えぬ間におとろしは真っ二つになって、魂が無くなった。


「END、お前が出ねぇなら『〆しめざくら』を使う必要すらねぇ。それとも……その横のヤツが来るか?」


 そう悠が言うと、ENDは少し驚いたようで「フッ」と笑みを浮かべていた。すると、ENDの横で段々と何者かの姿が浮かび上がってきた。


【よく分かりましたね。ココココ……!】

「【ハート】の魔力隠滅はスペードの技術だぞ。どうやって見破ったのだ?」

「生物としての本能だよ!」


 そう言うと、悠は地面に刺した叢雲を抜いた。すると、ENDは悠に手をかざした。瞬間、『召喚サモン』の能力で、辺りから大量のおとろしが現れた。

 一、二、三……と数えているのがバカバカしくなるほどの数だった。その数、およそ100体。


「『〆桜』。」


 悠がそう唱えた瞬間、ENDは思わず二歩後ろに下がった。魔力の爆発。そして、更にはその容姿だった。服装までもが変化し、全身真っ黒の装いになっていた。


「【よぉ、END。仲良く殺り合おうぜ!!】」


 瞬きも許されぬ一瞬の間。辺りの静寂をまるで物理的に切断するかのような刃が、辺りのおとろし全員を真っ二つにした。

 勢いを失わぬ叢雲はそのまま攻撃を避けようと頭を下げたENDの頬を掠めた。


「……!」

「【王手だ。END。】」


第三十話 終

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