第二十九話 修行
『登場人物』
「朝霧 悠」
この物語の主人公。世界最強であったが、『世界切断』という事件を経て弱体化してしまった。昔自分にかけた魔法によって数千年という時を生きている。使う武器は『叢雲』で、58364個もの魔法を使用できる。
「ウルグ・ハース」
悠の相棒。常に冷静で、表情筋を使ったことないのではないか、という噂がたったことがある。
「ココロ・シンリー」
皆にはココと呼ばれている。異世界警察では珍しい女性の警察官。基本的にピストルを使用して戦う。
「魔王」
悠やウルグ達と同じ特別警官。『創造破壊』の能力の強さで昇格した特例。気弱な性格。
「END」
世界最悪のビースト。悠の全盛期と張り合える程の実力があり、『世界切断』当時からの唯一の生き残り。様々な世界を徘徊している。
「スペード」
四天王こと【獄牌覇王四ノ虚】の1人。魔力操作を得意とする。見た目は子供。
「ダイヤ」
【獄牌覇王四ノ虚】の1人。侍の見た目の老人。
「ハート」
【獄牌覇王四ノ虚】の1人。おかめ面を被っている女。
「クローバー」
【獄牌覇王四ノ虚】の1人。水色の美しい髪に似合わぬほど性格が荒々しい。
「はぁーっ……ようやく帰ってきた……」
エレベーターを出た悠は思わず疲れて、そうため息をついてしまった。
「悠、久しぶりだな。」
「ウルグ、先に帰ってきてたのか。」
「ん、そっちの世界にはきちんとマーキュリーが行ってたかな?」
「はい……ウルグさんとは馬が合いそうになかったですけど……」
「はは……」と苦笑いをしながら魔王がそう答えていた。悠もマーキュリーとは気が合わなそうだが、ウルグとマーキュリーは気が合う、というか似たもの同士だからこそ喧嘩ばかりしていそうである。
「それじゃ、僕はここで帰るね〜。バイバイ、ココロ・シンリー君、朝霧悠君〜。」
「ケッ、一生来んなバ〜カ!」
朝霧悠はそう叫んで憎まれ口を叩いた。ヴィーナスは後ろを向いたまま手を振ると、突然どこかで姿を消した。
「チッ、最後まで意味わからん奴だな……」
【全くだぜ。】
「ぅおおっ!叢雲!起きてたのか!?」
思わず悠はそう叫んでしまった。あの例の世界で意識を取り戻して治療を完了してから、一度も叢雲が話しかけてきたことはなかった。
「叢雲さんって……請求の時以外も話すんですね……」
「私もここまで饒舌なのは初めて見ました!」
【俺はいつも元気だぜ?】
叢雲をあまり見たことがない魔王とココはそんな反応をしていた。あまり自分から話すことは無いが、ここまで饒舌なのはおそらくスペードの時に力を借りたからだろう。
【悠、お前に言わなきゃいけないことがあってな。どっかの部屋に移動してくれるか?】
「ん、いいけど。みんなちょっと報告待っててねー。」
そう言うと悠は近くの便所に入って叢雲の話を聴き始めた。
【落ち着いて聞けよ……あのスペードは本体じゃない。お前も全盛期の頃の記憶があるだろ?全盛期の頃のスペードはあんなもんじゃなかったはずだ。】
「全盛期じゃないって……じゃあ本体と戦った時にお前と合体したら勝てるのか……!?」
叢雲は頭もないので首を振ることはしなかったが、無言だったので何となく察した。
悠は少し前から感じていた。このままではまずいと。悠とウルグとココと魔王。一人一人得意なことと不得意なことがあるのは仕方ないが、戦闘能力に個人差がありすぎた。それに加え、どれだけ強い相手と戦っても全く力が戻る気配がない。
「こういう時はあの人に頼るしかないんだよなぁ……」
【?】
────────────────────────
叢雲に聞かされた情報は皆に伝えないで欲しいとのことだったので、それ以外の情報を共有し合った。
「そうか……八咫鏡が十星に盗られた……」
「いやいや違いますよ!?叢雲ちゃんも本当はあっちのものなんですよ!?」
【おい、ココ。ちゃんはやめろ!俺が自我出し始めたと思ったら……】
「じゃあ……雲ちゃんはどうですか?」
【変わんねぇよやめろぉ!】
そんなこんなで叢雲のあだ名が「雲ちゃん」に決まった所で、悠がある話を切り出した。
「修行するべきだと思う!うん!」
「……悠、お前どうした???スペードに攻撃されて頭でも打ったか???」
「俺は正常だわ!!」
悠には1人、師匠に適任な人間が頭の片隅にいたのだ。
「私ですか?」
驚いてそう言ったのはアタスマさんであった。恐らく100人いたら100人忘れていると思うのでおさらいしておこう。アタスマさんの役職は「パトロールマスター」。
上からの情報を受け取って、警察を送り届ける役職。そのアタスマさんに悠が頼んだ理由は、基礎戦闘能力の高さにある。
上からの情報を受けるほどの圧倒的な信頼に加え、それ相応の力。圧倒的な経験値と力で現在の悠の力は軽く上回っている。
「そう、俺たちの特訓して欲しいんだよ!」
「別に私は良いのですが……他にも適任がいるのでは?」
「いや、俺は叢雲での戦いが主軸だから良いんだけど、俺以外は基本肉弾戦が不向きだから、鍛えて欲しくて……あと、俺の力も取り戻せてないし。」
そう言うと、アタスマさんは渋々了承した。
「では1時間後にトレーニングコーナーにいてください。そこで集合です。」
「お願いします!アタスマさーん!」
1時間後……
トレーニングルームに来た四人は思わず面食らった。トレーニングルームが何故か魔改造されて、大量の鉄砲や刀などの武器が至るところにあったのだ!!
「な……なにこれ……アタスマさん?」
「いらっしゃいませ。こちらはアタスマ式トレーニングルームでございます。」
「なんだぞれ!?!?」
皆が困惑して周りを見つめる中、アタスマさんはかけてあるスーツを自身含む5つ取って、1人ずつに渡した。
「これは防護スーツです。これを着ている限りケガは大抵のことではしないでしょう。」
「これで何するんですか?」
「簡単です。この大量の武器からどれかを取って私に攻撃してください。悠さんは1人でお願いします。他の御三方は一斉に来ていただいて……」
そう言いかけている時に、スーツをいち早く着た悠が切りかかった。しかし、アタスマさんには軽く避けられてしまい、全く攻撃にならなかった。
「叢雲の使用もありか?」
「えぇ、是非。」
そう言うと、悠は叢雲を地面に突き立てて、口を開こうとしたが、寸前で何か思い悩んだのか、一瞬沈黙した。
「……叢雲、あの合体ってなんて言うんだ?」
「隙が出来ていますよっ!」
そう言うとアタスマさんは悠の顔面を蹴り飛ばした。悠はぶっ飛ばされて思わず驚いて面食らっていた。
「ちょっとくらい待ってよ、アタスマさん!」
「戦場ではちょっと待ってなんてありません。」
【ところでなんだが悠、例の技名は……】
瞬間、悠は爆発するように魔力が増幅し、アタスマさんも一歩距離をとった。
「【このワザの名前は……『〆桜』。桜が咲く瞬間を皆は持て囃すが……桜の締め……散る瞬間は誰も知らない。まるで桜が散る瞬間のように一瞬で相手を散らす技……それが『〆桜』。】」
そんな説明をしている間にもアタスマさんは近くの刀を握りしめて悠に襲いかかった。
「また隙が出来ています。」
「【わざとだよ。】」
悠はそう言うと、突進して襲いかかってくるアタスマさんをジャンプで軽く飛び越えて、叢雲を抜こうとした。
だが、アタスマさんは何を思い立ったのか、刀を捨てると、その場に突然座り込んだ。
「悠さん……1度確認をします。」
「【……なんだ。】」
「貴方は強くなるためなら死ねますね?」
瞬間、トレーニングルームの壁はミシミシと音を立て始めた。アタスマさんが魔力を完全解放したのだった……!!
第二十九話 終
この作品が面白いと思ったら是非★やブックマーク、コメントなどお願いします。
また、他の連載作品などもお願いします。




