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第二十七話 攻撃準備

『登場人物』


「朝霧 悠」

 この物語の主人公。世界最強であったが、『世界切断』という事件を経て弱体化してしまった。昔自分にかけた魔法によって数千年という時を生きている。使う武器は『叢雲』で、58364個もの魔法を使用できる。

「ウルグ・ハース」

 悠の相棒。常に冷静で、表情筋を使ったことないのではないか、という噂がたったことがある。

「ココロ・シンリー」

 皆にはココと呼ばれている。異世界警察では珍しい女性の警察官。基本的にピストルを使用して戦う。

「魔王」

 悠やウルグ達と同じ特別警官。『創造破壊』の能力の強さで昇格した特例。気弱な性格。

「END」

 世界最悪のビースト。悠の全盛期と張り合える程の実力があり、『世界切断』当時からの唯一の生き残り。様々な世界を徘徊している。

「スペード」

 四天王の1人。魔力操作を得意とする。見た目は子供。

【───!!───う!!───悠!!】

「う……ここは……」


 何者かによって呼び起こされた悠が辺りを見回すと、そこは刀が何本か地面……いや、地面と言うのかすら分からないが、数本刺さっている刀以外に何もない空間だった。

 

【起きたか、悠。】

「お前は……誰だ?」


 どこか耳馴染みある声だったが、誰か思い出せなかった。辺り一帯に広がる霧の奥から声が聞こえてくる。その姿も影だけは見ることができるが、どれだけ霧を進もうとも出会うことはできない。


【俺の名前なんて聞かなくても分かるだろ。ケケケ……】


 その笑い方を聞いて、一瞬悠は“あいつ”が頭に過ぎったが、それは有り得ない、なのに反射的に聞いてしまった。


「お前……叢雲か?」

【ケケケ……そうだ。この姿で会うことは出来ねぇが、会話は出来る。】

「なら、ここはどこなんだ?霧で何にも見えないぞ。」


 悠がそう言うと、叢雲はまた【ケケケ】と小馬鹿にするように笑って言った。


【ここは俺とお前が唯一繋がれる空間だ。ヴィーナスだろうと、スペードだろうと例外なく入ることはできない。】

「そんなBLEACHみたいな……」

【ぅおぉい!言うな!クソ……謎多きキャラみたいな感じなのにツッコんじゃったぜ……!】


 そんな事をブツブツと呟いていたものの、悠は何も理解出来ていなかった。


「そもそもなんでこんな所来たんだよ?」

【そりゃお前が瀕死状態だからだよ、悠。お前スペードに殺されかけたんじゃねぇか。】

「あ……そうだ、こんな事してられない!早くあいつを倒さないと……」

【落ち着け悠、ここは時間が経たねぇ。ゆっくり話せる。】


 とはいえ悠は何となく落ち着かず、その場に座って貧乏ゆすりをしていた。


【お前が仮に戻ったとしても時間稼ぎにすらならねぇ。だから、俺が力を“貸してやる”。山本五郎左衛門の時みてぇにな。】

「確かにそうすれば倒せなくもないけど……魔力が足りないんだろ?」

【あぁ、山本五郎左衛門の時に使い果たした。だから、お前の魔力に俺の魔力を追加する。そうするとどうなると思う?】


 そう、前回の技は叢雲の魔力だけを使用した大技。今回は叢雲と悠の魔力を混ぜるということだ。つまり……


「合体……!」

【ケケケ……!話がはえぇ、そうなりゃ手段は一つ。】


 そう言った途端、煙の中から叢雲の腕がニョキッと生えてきた。そして手のひらを差し伸べると、悠は迷わずその差し伸べられた魔力を受け取った。


────────────────────────


【さぁ、ヴィーナス、次は君の番だ!】

「……っ!?もうやめるんだ!朝霧悠君!」


 思わずスペードを無視してヴィーナスはそう叫んでしまった。スペードの後ろでは、先程心臓を貫かれたはずの悠が立ち上がっていた。


【往生際が悪いな。早くくたばりなよ!!】


 そう言ってスペードは悠に突撃していった。だが、悠は少ししゃがんで、叢雲の柄を握ると、向かってくるスペードに向かって一瞬で引き抜いた。

 途端、叢雲に切り裂かれたスペードは体が真っ二つになって、スペードの後ろの森が真っ二つに切断された。

 その瞬間、全員が気がついた。悠の雰囲気が違う……いや、雰囲気どころの話ではない。悠の頭髪の左半分だけが黒く染まり、左目は白黒が反転していた。


「【早くくたばるのはどっちだろうなぁ、スペード。】」

【お前……まさか……】


 今にも死にそうなスペードは悠の姿を目視すると、なにかに気がついたかのように言いかけたが、言い切る前に頭を刺されて完全に息絶えた。


「【ヴィーナス、お前の腕だ。】」


 そう言って悠はヴィーナスに向かって腕を投げた。腕があれば新しく生やすよりも楽に治療できる。


「そういえば、今の悠君どこかで見たことある気が……」


 ヴィーナスがそう言っていた最中に、悠は「フッ……」とその場に倒れた。力の消耗が激しすぎたのだ。


ワンク 『3』

理の異常 『年齢固定』

ビースト 【スペード(仮)】

 市民の保護完了。ビースト討伐完了。


────────────────────────


【あーあ、せっかく良い玩具おもちゃだったのに……】

【行儀が悪いからじゃ、カッカッカ!!】

【行儀が悪いと言う割に貴方の笑い方も下品ですわ、【ダイヤ】。】

【おいおい、騒がしいぞ三下!】


 ここは【四天王】及び『END』の住む世界。外部からの干渉は不可能。完全な閉鎖空間である。

 先程悠が倒したのは、【スペード】の遊び道具の“クローン”。スペードが魔力操作によって新しく生み出した生命のような物である。

 隣で大口を開け【カッカッカ】と笑っているのは【ダイヤ】。武士のような風貌で、スペードと対比しているかのように年寄りだった。

 敬語で話しているのは【ハート】。顔にはおかめの面を被っていて、どこか華麗な雰囲気を感じさせる装いだった。

 そして口調が荒く誰よりも声が大きいのは【クローバー】。水色の髪の美しさに似合わぬ程の荒々しい男だった。


【三下とは、貴方に言ってもらえるとは光栄極まりない【クローバー】。それとも無知が露呈しているだけかしら?コココ……】

【あぁ?雑魚どもがほざいてんじゃねぇ。】

【やめなよ、四天王の名が汚れるよ……いや、君たちと同じ立場な時点で汚れきってるか。】


 スペードはニヤニヤしながらそう言うと、全員の睨む目線がスペードに集中した。だが、その間もスペードは気にしないかのように、魔力操作をして遊んでいる。


【スペード、何度言ったら分かる。【四天王】ではない、【獄牌覇王四ノ虚ごくはいはおうよんのうろ】だと言っているじゃろう。】

【えぇ〜?長い!あと厨二病っぽい!】

【おいおいクソガキ、END様が決めた名前だぞ。四天王なんて安直なモンより良いだろうが。】

「好きにしろ。組織名など何でもいい。」


 全員が声の方向に目を向けた。スペードの背後からした声の正体は紛れもなくEND自身であった。


【E……END様!!】

【END様いつからいたの?魔力読み取れなかった。】

「居るべくしてここに居た。それ以上でもそれ以下でもない。」


 そう言うと、ENDは近くの椅子に腰掛けた。


「スペード、遊びすぎは辞めろ。朝霧悠はお前のものでは無い。」

【はぁ〜い。】

【スペード、相手はEND様よ。それとも殺されたいのかしら?】

「全員静粛に。」


 ENDがそう口を開いた瞬間、四天王こと【獄牌覇王四ノ虚】達全員の背筋に氷が当てられたかのように、肝が冷えた。

 魔力を放出した訳でも、魔法を使用した訳でもない。生物としての本能が、ENDに恐怖しているのだ。


「スペードはビーストについての研究を引き続き行ってくれ。クローバーは城内と城外の警備を。ダイヤは武器の製造を。」

わたくしは何を?】


 ハートがそう聞くと、ENDは滅多に見せない不敵な笑みを浮かべて言った。


「攻撃準備だ……!」


第二十七話 終

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