第二十六話 例えば君が傷ついて
この題名、「Believe」の歌詞の一番初めです。幼稚園か小学校で絶対一回は歌う曲だと思うんですけど、どうでしょう。
30分前……
龍を討伐したウルグ、魔王、マーキュリーの三人だったが、マーキュリーが暴れすぎた影響でレイガ・ボットに追い回されていた。
逃げれば逃げるほど、その先のレイガ・ボットを引きつけるだけであった。レイガ・ボットは一人一人が手のひらから桃紫色のビームを放ってきていた。
『危険人物、発見。追撃開始します。』
「マーキュリー、追ってきているレイガ・ボット、どうにかできないのか?」
「どうにかと言われても無理だ。大した脅威でもない、このまま放置しておこう。」
「それなら……僕がやります!」
魔王はまだ何も成せていない自分に嫌気が刺し、ここで何かを成し遂げなければと必死だった。そのせいかもしれない。
魔王はあまりにも気合いを入れすぎて、思わずそこに巨大なビルを『創造』してしまったのだ。
レイガ・ボットは全員潰れたものの、反動で当然魔王はその場に倒れ込んだ。ウルグは急いで魔王を拾って背負うと、追っ手を警戒してもう一度走り始めた。
「す……すいません……」
「全く……あそこまでする必要はない。」
マーキュリーは呆れてため息をつきながらそう言った。何ともドジな所が短所な魔王であった。
そんな事に気を取られていたのか、それとも“あちらが移動してきた”のか。
ウルグ達は突然紫色の光に包まれた。
「っ……なんだこれ……!」
「た……多分ダーク・シップに吸い込まれてます!ほら、上!」
上空を見上げると魔王の言う通り、ダーク・シップの姿があり、中心のドーナツ形の穴から紫色の光が出てきていた。
段々ウルグ達の身体は浮かんできて、ダーク・シップに持ち上げられていた。
「おい、魔王。この先はどうなってるんだ。」
「えっと……原作だとここではない場所から入ってるんですけど……むか〜しに発売されたゲームでは確かブラック・レイガの玉座に到着します!」
「なら問題ない。すぐにケリをつけるぞ!」
そして現在に至る───
玉座から立ち上がったブラック・レイガの身体の重厚感は、確実に人間ではない“何か”を感じさせた。
『どうした童共、そちらから来ないなら、こちらから行かせてもらう!』
そう言うとブラック・レイガの姿は消えた。いや、目に見えないほどのスピードで移動したのだ。
唯一、マーキュリーのみがブラック・レイガの動きを目で追うことが出来た。ブラックもそれに気がついたのだろう。
ブラックは勢いを止めず、標的を魔王に定めた。
「後ろだ!!シガール・オウマ!!」
マーキュリーがそう叫んだものの、魔王の動きは間に合わなかった。魔法を構えて後ろを振り向くまで約0.7秒。ブラックが獲物を狩るには十分な時間だった。
だが、魔王に突撃するブラックの間にウルグが入り、ブラックの動きを止めた。
『っ……中々動きが良いようだ、貴様名はなんという?』
「ウルグ・ハース。貴様が最後に聞く名だ。」
そう言うとウルグは、『廃品回収』の魔法で用意してあったピストルでブラックの頭に向かって発砲した。
だが、ブラックの身体にぶつかった銃弾はコロコロとそこらに転がってしまっていた。
『何かしたか?』
その瞬間、ブラックはウルグの頭を掴んだ。
『破壊閃光。』
ブラックがそう唱えると、ウルグを掴んでいる右手は突然紫色に光り始めた。だが、そのレーザーが弾ける前に、ブラックの腕は何者かによって攻撃され、レーザーは発動しなかった。
「『惑星解放』。」
ブラックが攻撃を受けた方向を睨むと、そこにはマーキュリーがいた。
マーキュリーの風貌からは禍々しさを感じさせ、素顔を知っているウルグ達でも一歩下がってしまうような「圧」があった。
頭蓋骨の上半分を被ったマーキュリーは、魔力と相まって呼吸すらままならないような禍々しさがあった。
ブラックは先程マーキュリーに受けた攻撃が気になるようで、攻撃を受けた自身の腕を注視していた。
『くはは……珍しい魔法の攻撃だ。今のはなんだ?』
「魔法など使用していない。ただ魔力を飛ばしただけだ。」
『……!?』
思わずブラックは絶句した。慢心していた自身の力を魔力を飛ばした程度で抑えられたからである。
「これが魔法だ……『水星・覚醒』!!」
そう言ってマーキュリーがブラックに手を向けると、手のひらから物凄い水圧の水が噴射された。
水というのは勢いがあれば大体の物は切断できる。ブラックの身体でもこれほどの水圧ならば重症になる。
『レイガ・ボット。』
ブラックがそう呟くと、瞬間レイガ・ボットは攻撃とブラックの間に立ってブラックの身体を守った。
瞬間、その傷口からは段々と水が全身を蝕んでいき、レイガ・ボットの体は完全に崩れていった。
「お前……!!仲間を……!!」
『なんだ?私の行動が「悪」と言いたいのか?』
横で見ていたウルグがそう言うとブラックは素顔が見えない頭をウルグに向けてそう言い放った。
『教えてやろう三流、王たる者は何があっても死んではならんのだ。私が死ねばここにいるレイガ・ボット達の統率は取れなくなる、それが最悪であろう。そう、王とは悪でいないといけないのだ!!』
ウルグは納得した訳ではなかったが、言い返すことは出来なかった。あまりにも理にかなっていた。
「悪いがゴタゴタと話している暇はない。」
『あぁ、早く来い!!』
そう言うとブラックは向かってくるマーキュリーに激突するように向かっていった。
2人の拳がその場でぶつかると、あまりの魔力のぶつかり合いに、近くのレイガ・ボットが吹き飛んでいった。
マーキュリーの拳からは水が溢れ出て、ブラックの腕を包みこもうとした。ブラックは反射的に後ろに下がって水を避けたことで、水は部屋中にばら撒かれ、部屋は水浸しになった。
「まだだ。『神ノ祈リ《アイス・エイジ》』。」
瞬間、ウルグと魔王はその場に動きを止めた。鼻から息を吸えばその空気が体内を刺激する。立っているだけで肌を冷気が刺激して気を失ってしまいそうだった。
「な……なんて寒さ……!」
「シガール・オウマ、ウルグ・ハースと布団でも何にでもくるまっておけ。死ぬぞ。」
『なんだ……この寒さは……』
全身がロボットのように機械で包まれているブラックでさえ、辺りの冷気が隙間から入ってきたことで膝をついていた。
「『神ノ祈リ《アイス・エイジ》』は辺りが水浸しになっているという状況下でのみ使用できる技。辺りの水を一気に蒸発させることで大気を急激に冷やす。その寒さから神自身すら手を擦って寒さをしのごうとする。その様子はまるで祈っているかのよう。そこからこの名前が付けられた。」
『貴様の名前の由来など……知ったことでは無い!!』
そう言って膝をついた状態でブラックは手のひらからレーザーを発射しようとしたが、フラフラの状態では軽くマーキュリーに避けられてしまった。
「自身が死ぬ技の名前くらいきちんと知っておきたいだろう。」
そう言うとマーキュリーはブラックの腹を蹴り飛ばした。ブラックはUFOの壁に激突し、勢いが止まった。
『くはは……面白い……ならば見せてやろう、私の魔法を!!』
「なんだと……貴様の魔法は『破壊閃光』ではないのか!?」
『否、私の魔法の名は……』
───『不疑。』
第二十六話 終
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