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第二十一話 十星

『登場人物』


「朝霧 悠」

 この物語の主人公。世界最強であったが、『世界切断』という事件を経て弱体化してしまった。昔自分にかけた魔法によって数千年という時を生きている。使う武器は『叢雲』で、58364個もの魔法を使用できる。

「ウルグ・ハース」

 悠の相棒。常に冷静で、表情筋を使ったことないのではないか、という噂がたったことがある。

「ココロ・シンリー」

 皆にはココと呼ばれている。異世界警察では珍しい女性の警察官。基本的にピストルを使用して戦う。

「魔王」

 悠やウルグ達と同じ特別警官。『創造破壊』の能力の強さで昇格した特例。気弱な性格。

「END」

 世界最悪のビースト。悠の全盛期と張り合える程の実力があり、『世界切断』当時からの唯一の生き残り。様々な世界を徘徊している。

「悠さーん!」

「ココ、終わったぞー」


 悠は金髪とその取り巻きが倒れている上に座ってそう言った。『食料化フード』の能力で生み出したバーガーを食べながらココの方に向かっていくと、ココは話し始めた。


「一旦は落ち着けそうなので、上に連絡してここのワンクを聞いてみたところ……大体ワンク3だそうです。」

「おー、ココの読みは当たってたわけか。」

「で、本題はここからなんですけど……」

「?」


 ココは相当困った顔でそう言った。ワンク3でも、攻略できないことはないだろう。何かあったのか。

 瞬間、悠は突然何者かに背後から肩をポンッと叩かれた。あまりの異常なオーラに思わず悠は『爆発』を使用してしまった。


「はぁ……はぁ……お前誰だ……!?」

「酷いなぁ、朝霧 悠君。ココロ・シンリー君、報告はまだだったのかい?」


 爆発の煙の中から出てきたのは悠にとっては宿敵……いや、そんな言葉では済まされない人物だった。


「てめぇ……『金星ヴィーナス』……!!!」

「久しいねぇ……あったのは百年前くらいじゃない?」


 明らかに胡散臭い見た目で、真っ白のスーツをぐちゃぐちゃにしたくなる。なんとなくムカつく男だった。

 だが、その全てを上回る魔力量。悠は他の魔力を感知できないほどだった。


「お前……十星の奴らは知ってるのか?」

「僕から報告してあるからねぇ。」

「なら事故死で済ませればいい。」


 そう言うと悠は魔法を解放した。背中から魔力で出来ている羽を作り出し、瞬時に空に浮かび上がった。


「魔力の操作は……妖怪の世界で学んだ!」


 そう言うと悠は叢雲を抜いてヴィーナスに刃先を向けた。


「宝刀か。でもその位置からじゃ……」


 そう言うヴィーナスを無視して悠は叢雲を振りかざした。


「動け叢雲!!」


 瞬間、叢雲はヴィーナスを追撃して動いた。ヴィーナスは驚いたようで、後ろに下がって避けたが、叢雲は止まることなく追撃し続けた。


「困ったね、僕は十星の中でも力はない方なんだけど……」


 そう言うとヴィーナスは右手の手のひらを叢雲に向けた。


「『金星ゴールド』。」


 瞬間、ヴィーナスの手のひらからは大量の金銀財宝が吹き出した。


「金とは欲望、欲望とは金!!僕は十星の『財力星マネー』、僕よりも金を愛した者はいない!」

「金しか拠り所がないなんて可哀想なやつだな。」


 そう言うと、悠は叢雲を握ったまま、金銀財宝の波を掻い潜って、ヴィーナスに近づいていった。


「金しか拠り所がないんじゃない、拠り所のためには金が必要なのさ。」


 そう言うとヴィーナスは突撃してくる悠に対し攻撃をしようとした。だが、悠とヴィーナスの間にココが割って入った。


「ダメです!!ここに来た目的は戦うことじゃないんですよね?」

「ん……そういえばそうだ。」

「何?俺のこのイケメンな顔でも拝みに来たの?」


 そう言って金銀に映る自分の顔に見とれている悠の事を無視してヴィーナスは話し出した。


「この世界、『四天王』クラスがいる可能性があるんだよね。」

「……詳しく聞かせろよ。」


 金銀財宝に目を向け、ヴィーナスの話を聞く気がなかった悠だったが、『四天王』という単語に反応してヴィーナスの方を向いた。

 『四天王』。ENDの部下の内、実力があるとされる幹部。その強さは全盛期悠にも匹敵するという噂が立つほどだった。


「四天王の名前、っていうかコードネームは『スペード』『ハート』『ダイヤ』『クローバー』。ここはスペードがいる可能性がある。」


 実際のところ、ヴィーナスを含む十星は今現在の悠よりは強く、実力は確かである。

 だが、それでも四天王に匹敵するかは微妙である。それほどまでに凶悪かつ実力は計り知れない。


「出会ったらどうするんだ。」

「あくまで今回は視察だからね。出会ったら逃げる。それを忘れないでね。」


 スペードとぶつかる可能性がある。そう考えると悠は思わずワクワクが抑えきれなかった。


「四天王だけは俺が確実に殺す。」


────────────────────────


 一方のウルグと魔王一行の世界にもなんと十星のメンバーがやって来ていた。


「お前……『水星マーキュリー』か?」

「ウルグ・ハース。名前は聞いている。朝霧 悠は居ないのか。」

「俺の質問に答えろ。お前の質問に答えるのはそれからだ。お前は『水星マーキュリー』だな?だとすれば何故来た。」


 マーキュリーは十星には数少ない女だった。十星は警察の装いはしておらず、一人一人が好きな服装をしている。マーキュリーは前髪をまとめて右側に寄せており、目つきが常に悪い。服装はボロボロの上着だけであった。


「……私はマーキュリーで間違いない。ここに来たのは『三種の神器』内1つの発見情報があったからだ。」

「三種の神器……あの悠さんが使ってる叢雲とかの……」

「あぁ、あの憎き朝霧 悠が使用しているもので間違いないさ、シガール・オウマ。」


 微かに怒りを孕ませてマーキュリーはそう言った。『三種の神器』とは、『叢雲(三種の神器に分類される際には草薙剣)』の他、『八尺瓊勾玉やさかにのまがたま』、『八咫鏡やたのかがみ』がある。


「この世界で発見情報が出ている『八咫鏡』は、真実を映しだす鏡。そもそも三種の神器は十星の要保管物なのだ。それを朝霧悠が……」


 マーキュリーはその後もブツブツ愚痴を言っていた。事実、悠がしている事は窃盗に近いので、これに関してはマーキュリーの意見が正しいのだ。


「兎にも角にも、『ダーク・シップ』に向かうぞ。」

「え、マーキュリーさん『Under』知ってるんですか?」

「……」


 マーキュリーは黙って赤面していた。そりゃ十星が漫画を楽しんで読んでいるなんて知られたら恥ずかしいだろう。魔王は気が付かずに「どのキャラクターが好きですか?」なんてオタクトークをしている。あぁ、悠もココも魔王も怖い。


「えぇいっ!黙れ!とにかく向かうぞ!」


 マーキュリーはそう誤魔化してダーク・シップへ向かうことにした。だが、一歩踏み出した途端に右側からケンタウロスが走ってきた。そのケンタウロスを追ってケルベロスが走ってきた。


「バウッバウッ!!!」

「ケルベロスか。悠に見せたら喜びそうだな。」


 そう言ってウルグは黒い袋にケルベロスを捕まえた。『廃品回しゅ』……おっと、動物を廃品なんて言ったら怒られそうである。そんなウルグの様子を見てマーキュリーはUFOを指さして言った。


「呑気にしている暇はない。見ろ。」

「あ……あれは……『ブラック・レイガ』の兵隊……『破壊機械レイガ・ボット』……なんて量……!!」


 ブラック・レイガの部下の兵隊の数は見えるだけでもおよそ数千体居た。兵隊は全てがロボットで、機械で出来た羽でそこら中を巡回している。

 空は赤く染まり、街は暗い雰囲気に包まれている。


「発見されてはマズイ。八咫鏡の気配がするUFOに迎えなくなる。ビルに隠れるぞ。」


 そう言って三人はビルに隠れたのだった。まだまだ波乱は始まったばかりなのだった……


第二十一話 終

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