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第十九話 本望

〖かはぁっ……!!〗


 叢雲は山本五郎左衛門の心臓を突き刺した。山本五郎左衛門は前かがみの体勢のまま、血ではなく煙の魂を吐き出した。

 全てが流れ出る前に山本五郎左衛門は口を抑え、魂が出ていくのを止めた。その山本五郎左衛門に悠は近づいて話しかけた。


「流石だよ、最強の妖怪……今出せる俺の限界を出して……はぁ……ようやく勝てた……」


 ほとんどチートと言えるようなことまでして、悠は勝利した。山本五郎左衛門は敵の前で倒れるのは御免ごめんなのか、わざわざ地面に、折れた自身の刀を刺し、そこによそりかかって座った。悠も相当体力を消耗していたので、向き合ってその場に座った。


「魔法全部防がれた時は……流石に終わったと思ったね……はぁ……とにかく次の一手をどうするかだけを考えてた……山本五郎左衛門……お前は強すぎるんだよ……」


 半分呆れたように悠が笑ってそう言うと、山本五郎左衛門は口から出ていく魂のことなど気にしないように、抑える手をとって口を開いた。


〖くっはっはっ……貴様に認めてもらって死ねるなら……本望……〗


 そう言うと、山本五郎左衛門は叢雲を抜いた。すると、その傷口からも魂が溢れ出た。どんどん山本五郎左衛門の肉体はチリになっていき、最後には笑みを浮かべて消えた。


「はぁ……こいつ……まじで……強すぎ……」


 そう言って悠はその場に倒れてしまった。段々意識が遠のく中、遠くから走ってくるウルグとココ、魔王の姿を見て悠の意識は途切れた。




「うぅ……妖怪怖い……」


 山本五郎左衛門がいた世界から抜け出すことに成功して、数ヶ月が経った今、悠はことある事にそう呟くようになった。


「何が怖いんだ。お前、そんなの信じるタイプじゃないだろ。」

「違うんだよウルグ!山本五郎左衛門が亡霊で出てきたら……」

「妖怪が妖怪になるかアホ。」


 ウルグはそうツッコんで、トレーニングコーナーへ向かった。


「ちょっと待って!俺も行く!」


 そう言って悠は叢雲を持って着いていった。トレーニングコーナーでは今、魔王が特訓している最中なのだ。


「あいつも妖怪の世界の時からは成長したよな〜。あれ、あそこの世界結局ワンク何だったんだっけ?」

「餓者髑髏が居る想定だったから、ワンク5だったらしいが、山本五郎左衛門しかいないと分かったらワンク4に下がったらしい。」

「はぁ!?ふざけんなよ!まじで『上』、どうにかしてんな!」


 大声でそんな愚痴を吐いていると、ウルグに「声がでかい」と止められた。そもそもの声量もでかいし、内容も内容だったので周りからとても悪目立ちしていた。異世界警官がめちゃくちゃ悠の事を引いていた。


「ねぇ、トレーニングコーナーの前にトイレ行こ!」

「全く……早く行くぞ。」


 トイレに行って悠は大便を済まし、手を洗うと、鏡を見て呟いていた。


「やっぱ変な感覚するな……山本五郎左衛門あいつに限界まで攻撃したからかな。」

「だから、その手に巻いてるハチマキだと言っているだろう。妖力が溢れ出てる。」

「だって山本五郎左衛門が落としてったやつなんでしょ?ていうか、持って帰ってきたのはウルグじゃん!」

「いやそれは鑑定するためにだな……まぁいい。」


 手も洗い終わり、トレーニングコーナーに着いたので入ると、ココも特訓をしていた。


「ん、ココ、トレーニングコーナーいたのか。」

「はい!アタスマさんから司令を聞いたので!」


 妖怪の世界を抜け出してから数ヶ月間にビーストを討伐した世界の数は弱いものから強いもの全て含めて、およそ『57個』。殆どはワンク1〜2であったが、このスピードはあまりにも異常だった。数ヶ月の間にこれまでに危険世界が現れるわけが無い。


「ワンクはおよそ『2』らしいんですが……このスピード感、完全にワンクが高い世界が出てくる前兆だと思うんです。だから、ワンク3、4、5くらいの世界かもって思って。」

「確かに。じゃあみんな特訓進めないとだね。」


 その後、悠は魔王と手合わせをして、3勝1敗に終わった。手合わせは緊張しないので臆病な性格が発動しないので強いらしい。



 全員が万全な状態で、アタスマさんの説明を聞き、世界に向かおうとすると、衝撃的な情報を伝えられた。


「実は上から聞いた新しい情報なんですが……報告であったワンク2の世界は一つだけじゃないそうです。2つあるそうで……放置も出来ないので、2人ずつに分かれて貰えますか?」


 そう聞いた瞬間、ウルグは頭をフルに回転させた。一番心配な魔王を誰と組ませるかということだ。

 悠と2人にしたら、恐らく精神がズタボロになるまでボコボコに言われて戦闘どころではないだろう。

 かといってココと2人にしても、気まずいだろうし、ココはたまにぶっ飛んだことを言い出すことがあるので、魔王が耐えられなくなる。


「俺は魔王と行く。」

「えー、ウルグさん可哀想ですねー。」


 こういう所である。ココは怖い。あ、魔王泣いた。魔王泣いたってどんなパワーワードやねん。



 結局、「悠&ココ」ペアと「魔王&ウルグ」ペアに分けられることになった。


「じゃあ、俺たちが先に行ってくるぞ。」

「行ってまいります!」


 そう言ってココと悠はエレベーターに乗り、向かった。


「着きましたね。」

「うわっ、凄!」


 目の前に広がる景色はきちんと発展した街であった。だが、前にあった出来事を忘れる程悠は馬鹿ではなかった。


「チャン・チーの時と同じパターンですね……」

「ビーストが潜んでるのか……それとも、『要判断世界』なのか……」


 だが、2人はだんだんと違和感を持ち始めた。なんだかやけに街に活気がある。いや、別に悪いことでは無いのだが、先程から見る先全ての人物が若者ばかりなのだ。


「あれ……もしかしてこの世界の理の異常……『年齢』ってこと……?」

「言われてみれば声も若々しいような……」


 そう、つまりこの世界では年齢が高校生くらいに固定されるのだ!!


「なら……」

「?」




 数時間後、悠とココは何故か高校に居た。


「……いや何で!?!?」

「違うんですよ!私、青春時代っていうか、若い時ずっと異世界警察署で育ってきて……ていうか私、親に捨てられて異世界警察ここに来たから……だから私、奪われた分を取り戻しに来たんです!」

「お、おお……めっちゃ重い話でコメントしずらい。」


 そんな訳で、2人は何故か高校生活を楽しむことになったのだった!!!何で!?


第十九話 終

2組の同時進行って難しいかもですけど、ちょっと頑張ってみます。ちなみに、悠とココをペアにしたのは高校生活だから男女の方がいいかなって思ったからです。

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