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第十八話 『山本五郎左衛門』

作中で言ったか分かんないですけど、叢雲関係の三種の神器登場させようとしていたのを今の今まで忘れてました。やばい

 真っ二つになったおとろしは悶えながらチリになった。悠はおとろしのことなど気にせずに叢雲を見つめていた。


「今回の魔力はどれくらいだ?」

【六分の一だ……ケケケ……】


 魔王は驚いて思わず叢雲を見つめてしまった。悠が刀に話しかけると、刀はなんと返答をしたのだ。そして、【六分の一】と言った途端、悠から魔力が消失した。ちょうど六分の一程の魔力が。


「ウルグ!立てるか?」

「あぁ……だが骨が何本かイカれた。」

「ちょっと待てよ……」


 そう言って悠はウルグに近づくと、魔法を唱えた。


「『回復』」


 瞬間、ウルグの体は緑色の光に包まれて、かすり傷程度の怪我はみるみる再生していった。


「骨とかが完治した訳じゃないから、まだ危ないけど、一旦はこれで大丈夫だと思う。」

「あぁ、ありがとな。」

「……とはいえ悠さん。どうするんですか?」


 ココがそう言うと、魔王を含む四人の中で空気がピリついた。魔王ですら先程からビンビンと感じていた。神社の中から、他の妖怪の妖力をかき消すほどの凄まじい妖力を。


「行くしか……ない。」


 そう、恐らくビーストがいるのはこの神社の中。悠は叢雲に手を当てながら慎重に扉を開いた。


〖よくぞ参った……異世界警察……〗


 神社の中央に居たのは、他でもない。最強の妖怪、『山本五郎左衛門さんもとごろうざえもん』だった。腰の刀からは呪われてしまうと思うほどの恐ろしい雰囲気が漂っていた。その禍々しさはまるで落ち武者のようだった。


「お前が……この世界のビーストなんだな?」

〖いかにも。あぁ、刀など握るのは何年ぶりか……!!!〗


 そう言い、山本五郎左衛門は刀を握って立ち上がった。四人の間に凄まじい緊張が走り、全員が魔法の用意をしていた。

 妖力がどんどん強大になっていく。まるで四人は蛇に睨まれた蛙のように萎縮してしまっていた。


「山本……五郎左衛門!」

〖……なんだ。〗

「俺と一対一サシでやれ。」


 悠は山本五郎左衛門に向かってそう言い放った。ウルグ達は叫んで悠を止めたが、悠は問答無用という様子で、全く聞いていなかった。


〖くっくっ……面白い。良かろう、ただし条件がある。貴様が負ければ、四人全員の魂を貰う。私が負ければ、妖怪の魂は消滅する。〗

「……そんなことが可能なのか?」

〖ほう、知らんのか。なら良い情報を教えてやろう。ビーストとは理の異常の()()()()()なのだ。私は今、『不死』という理に先程の条件を上書きしたのだ。〗

「はっ、上等だよ。成仏してもらう。」


 そう言うと、二人は刀を瞬時に抜いて、向き合った。一定の距離をとったまま、刀を向けあい、円を描くようにぐるぐると回っている。

 勝負の決着はほんの十秒ほどであった。


「『紫煙』」


 そう悠は言うと、神社を高速で移動し、目で追えない速度で山本五郎左衛門の周囲を走り回った。煙に包まれた中で、周りを分身したように悠は走り回っていた。

 瞬間、煙から姿を現した悠は山本五郎左衛門に背後から襲いかかったが、山本五郎左衛門は楽に刀で防ぐと、悠を弾き返そうとした。


 瞬間、辺り一帯には緊張が走った。悠からおぞましい程の量の魔力が吹き出したのだ。それは山本五郎左衛門などを軽く超越するほどのオーラであった。

 悠は不気味な笑みを浮かべると、一言だけ言い放った。


「愉快。」


 全盛期の悠を見たものの、時が経ち忘れていた山本五郎左衛門は瞬間、全盛期の悠の恐ろしさを思い出し、恐怖した。

 この量の底知れぬ魔力。理由は叢雲にあった。


 叢雲は魔力を与えれば超能力とも言えるような事も可能になる。だが、実はこの説明はあまり適切ではない。

 「魔力を与えれば超能力が使える」ではなく、「超能力を使うと魔力を吸収される」が正しいのだ。

 つまり、先程の【六分の一】のように魔力の請求が来るまでは、悠は自身の底知れぬ魔力をどれだけ使用しても()()()()()()()のだ。


 悠はココとウルグ、魔王を『テレポート』で離れさせると使用できる魔法全てを山本五郎左衛門に放った。『紅蓮』『氷冷アイス』『硬体ハードボディ』『激銃ミニガン』『極光オーロラ』『闇落ダーク』『超爆発ビッグバン』『風前ふうぜん灯火ともしび』……など、現在使える攻撃魔法137種を悠は同時に山本五郎左衛門に放ったのだった。この時点で約五秒が経っていた。

 神社は跡形もなく消し飛び、森もどんどんと削れていった。地形は原型を無くしていき、ついには近くの川が氾濫を起こした。

 全盛期の悠についたあだ名は『災害』。巻き込まれれば跡形もなく消し飛ぶ、それが常識だった。


 だが、最強の妖怪は一筋縄ではいかなかった。妖力を纏った刀はあらゆる攻撃魔法を弾き返し、山本五郎左衛門に当たることはなかった。

 悠の魔法は途切れることなく今も山本五郎左衛門に襲いかかった。だが、刀は目にも止まらぬスピードで絶え間なく動き続け、攻撃を全て防いでいった。

 そんな時だった。悠は突然がくんっとバランスを崩して、その場に膝と手をついた。


【悪ぃな悠、請求だ。これ以上は待てねぇ。】


 地面に突き刺さった叢雲はそう言うと、悠から残る全ての魔力を吸収した。魔力を失った悠は生命力がかすれ、その場で嘔吐した。山本五郎左衛門の妖力に耐えきれなかったのだ。


〖よくぞ……はぁ……この私にここまで力を使わせた……はぁ……だが貴様の敗因はただ1つ……〗


 そう言うと、倒れる悠の心臓部に刀の先を当て、山本五郎左衛門は言い放った。


〖自分の力を慢心しすぎていたのだ。〗


 瞬間、山本五郎左衛門は刀を悠の心臓に突き立てた。だが、悠の体に刀が刺さることはなかった。

 山本五郎左衛門は目を見開いてその状況を理解するのに必死だった。刀は悠の体に刺さることなく、()()()()()()()のだ。悠は倒れたまま、顔だけを上げてがらがらの声で言った。


「『硬体ハードボディ』は……自分の体をダイヤモンドのように硬くする術だ……俺の魔法が全て通用しない時のことも考えてた……」


 すると、悠は何が起こっても死なないその顔でニヤリと笑った。


「どこが……慢心してるって?」


 瞬間、叢雲はひとりでに()()()()()()()()()()


【これも含めた請求だぜ!】


 そう言うと、叢雲は刃先を山本五郎左衛門に向け、物凄い勢いで最強の妖怪の魂の核を貫いた。刀がその空間ごと切り裂く「ズバァッ」という音が山本五郎左衛門の耳をつんざいた。


 叢雲のいやらしい【ケケケ……】という笑い声がまっさらになった辺り一帯に響き渡った。


第十八話 終

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