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第十五話 『均衡崩壊』参

気づいたらもう十五話まで進んでいた!!!

 悠が意識を失っていた数年間の内に、異世界警察は良くも悪くも……いや、大半悪く変化していた。

 まず、警察内には階級制度が出来上がっていた。それは単純な力だけでなく、権力が大きく関係していた。

 最も頂点に君臨するのが『十星とせい』、通称『上』。そのうちの一人「ゴドラ」、コードネーム『ムーン』はかつての悠の仲間であった。

 『上』の次に、悠などの強大な力を持つ警官、『特別警官』がおり、その次に『異世界警察官』、その下はいわゆる三下で、役職なしとなっている。

 『上』は、異世界警察全体を支配下に収め、完全に牛耳っている状況である。歯向かうものが入れば、直ぐに消す。異世界警察は完全支配されていた。

 それだけではなかった……いや、むしろこっちが本題である。『十星とせい』の内一人、『土星サタン』の正体。写真を見た瞬間に悠は分かった。


「餓者髑髏……!!!」


 そう、正体は人間に化けた餓者髑髏だったのだ。異形な顔に、違和感のある服を着ている。他にも十星には異形のメンバーがいるのでバレないとでも思ったのだろうか。


「……まずは仲間を集めないと意味が無い……!十星を……『上』を……引きずり下ろすぞ!」


 そうして悠は『END』と『上』を滅ぼす為に特別警官として動くようになったのだ。だが、悠とウルグ達が出会うのはこの数百年後……




 そして現在に至る。ウルグはひりつく空気の中、ただ悠の目を睨み続けた。


「今じゃ義務教育の内にも入ってる出来事だぞ……悠、覚悟はあるんだな……!!」

「何それ、俺に聞いてるの?」


 悠はニヤリと笑って自信ありげにそう言った。覚悟とは自分への「自信のなさ」を潰すこと。そもそも悠に「自信のなさ」など存在しない。


「進むぞ。新しい特別警官もいるらしい。」


 ウルグは半ば呆れ、ため息をついて悠に着いて行った。愚問であった。


「ビーストの確認情報、見ました。この世界で確認されたビーストは『塗り壁』。悠さんが昔戦った敵と同じかと思います。」

「ん、でもおかしいな。あの世界は理の異常、『不死』なんて変なのじゃ無かったと思うんだけど。」

「恐らく百鬼夜行みたいなものだろう。」


 『百鬼夜行』。いわゆる妖怪の行進で、朝日が昇ると逃げ帰る。この妖怪達の百鬼夜行では恐らく世界を跨ぐのだろう。なんとも不思議なものだ。


 暗闇の中を進んでいくと、ポワッと炎が浮かび上がってきた。一つの炎は悠の周りを付きまとい、ふわふわと浮かんでいた。


「『陰火』……警戒しろ、妖怪が出るぞ。」


 悠がそう警告すると、ウルグは丸めてある黒い袋を取り出して、『廃品回収』の能力で、事前に用意してあった短刀を取り出した。


「ちっ……武器すらまともに用意出来ていない。」


 ウルグがそう愚痴を吐き捨てると、どこかから「カツ……カツ……」というハイヒールのような音が聞こえてきた。

 コンクリートの歩道を警戒して見渡すが、人影は見当たらない、というより暗すぎて何も見えない。


「『探知』は使えないのか?」

「妖怪の『妖力』と、人間の『魔力』じゃ話が変わってくるから……」


 そう話している途中に、暗闇から一人の女の影が見えてきた。女の妖怪、ある程度予想は付いたが、対策は覚えていなかったので、悠は叢雲を握り直した。


「アタシ……キレイ……??」


 マスクを付けた女、ハッキリ言うと口裂け女はそう聞いてきた。ウルグは目で追えない程のスピードで口裂け女の懐に潜ると、飛び上がって上から黒い袋をかけた。


「『廃品回収』」


 だが、黒い袋は口裂け女を吸収することなく、弾かれてしまった。


「基本的に触れることは無理ってことか……!」

「叢雲以外はねっ!!」


 悠はそう叫びながら、叢雲を抜刀して口裂け女に切りかかった。叢雲は口裂け女の体を斜めに切り裂くと、口裂け女の体はボロボロと崩れていった。すると、その残骸のようなものからは煙が上がっていき、残骸も完全に消えた。


「ヤマタノオロチを切った刀だ。妖怪なんて専門だよ。」

「特攻ってことですか!すごい!」


 ココは目を輝かせてそう言うと、先程口裂け女が消滅した場所に近づいていった。


「さっきの煙は……魂みたいなものなんでしょうか?」

「だろうな。気配が感じられなくなった。これが『妖力』なのかもな。」


 ウルグは口裂け女が消滅した地面を見下ろすと、興味がなさそうな表情をして、どこかへ行ってしまった。


「ちょ……待ってって!」


 悠はそう叫びながらウルグの方向に走っていった。するとウルグは静かに、というハンドサインをして動きを止めた。

 耳をすまして音を聞くと、少し遠いところから、落ち葉のガサガサという音が聞こえてきた。何かがいる。そう警戒して3人でゆっくりと進んでいった。

 瞬間、近くの草むらから突然「うわん!」という奇声を上げて何かが飛び出してきた。その正体が妖怪だということに気がついたものの、驚きで動きが停止してしまった。


「油断するな!!!!!」


 耳を劈く程の大声でウルグはそう叫んだ。妖怪は悠の数センチ程まで近づき、命を狙っていた。間一髪、悠は叢雲で妖怪の首を狙い、吹き飛ばした。


「はぁ……はぁ……危なかった。ありがとう。あの妖怪……なんだっけ……あ、そうだ。「うわん」だ。」

「驚かせた瞬間に命を奪おうとするのか……単純だが、その分簡単に実行できるからな。油断すれば命を奪われる……いや、食べられるぞ。」


 ウルグは真剣な眼差しでそう言い切った。


「そういえば……何も考えてなかった。この世界のビーストって誰……っていうか何なんだ?」

「妖怪のボス……餓者髑髏はいないとは思うから、何なんだろうな。」


 とは言いつつも、先程から三人とも全身で張り裂けるようなオーラを感じていた。妖力、魔力関係なく十分に脅威が伝わるほどの。


第十五話 終

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